18年度同時改定の総点検(2)地域包括ケア病棟が担う「在宅⽣活への復帰⽀援」

キャリアブレインマネジメント 2018年05⽉22⽇

 地域包括ケア病棟協会の仲井培雄会⻑は、2018年度診療報酬改定を通じ、地域包括ケア病棟では、より在宅復帰を意識した運営が進むと⾒ている。次回改定以降は、病床稼働率を⾼めることに多くのエネルギーを費やすのではなく、病院が在宅・⽣活復帰⽀援を充実させることが重要であり、将来的には⽇常的な⽣活⽀援評価の改善率をアウトカム評価の基軸に据え、それに応じたインセンティブを設定すれば、地域包括ケアシステムの本旨である「住み慣れた地域で⾃分らしい暮らしを⼈⽣の最後まで」に近づけるはずと訴える。
 18年度は診療、介護、障害福祉サービス等報酬のトリプル改定で、「惑星直列」などとも形容されるが、仲井会⻑は「QOL(Quality of Life)とQOD(Quality of Death)を⾼める」ことが基軸になっていると感じるという。
 具体的には、介護保険の⾃⽴⽀援や保険者に対する健康増進へのインセンティブ、⾼度・先進医療の保険収載などで、健康寿命を延伸しQOLを向上させる。QODについては「⼈⽣の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等を活⽤して向上させる⽅向だ。そして、看取りの指針策定や、QOLを意識した医療従事者の負担軽減、地域共⽣型社会実現等への評価が設けられた。
 仲井会⻑は、「地域包括ケアシステムの構築に際し、地域住⺠のQOLを⾼めようというメッセージであり、それは⼈⽣の最終段階をどのように迎えるかを考える、つまりQODの向上と表裏⼀体だ」と話す。

■介護医療院との組み合わせは「⼩さな地域包括ケアシステム」
 今回の改定で、地域包括ケア病棟に求められる機能も変化している。
 地域包括ケア病棟を持つ病院は今年2⽉末時点で2137病院、推計で6万8200床に上る。仲井会⻑は今回の改定で、規模の⼩さな病院における地域包括ケア病棟の病床数はさらに増加するとみている。
 200床未満や療養病床が中⼼の病院では、これまで地域包括ケア病棟の届け出のハードルは⾼かった。特に▽在宅療養⽀援病院▽在宅療養後⽅⽀援病院として年3件以上の受け⼊れ実績▽⼆次救急医療施設▽救急告⽰病院-のいずれかの要件を満たす必要があるという要件がネックだったが、今回は要件に敷地内訪問看護ステーションの開設が追加されたことで、届け出が増える可能性がある。
 今回の改定では、地域包括ケア病棟⼊院料・⼊院医療管理料は基本的な評価部分と在宅医療の提供等の診療実績についての評価部分とを組み合わせた体系となった。特に、同⼊院料・管理料1と3の実績部分には、⾃宅等から⼊棟した患者割合や⾃宅等からの緊急患者の受け⼊れ(いわゆるサブアキュート)、在宅医療の提供、看取りに対する指針の策定が盛り込まれ、⾼い点数が付いた=表1=。さらに、「在宅医療等の提供」では、敷地内の訪問看護ステーションで医療保険の訪問看護の算定回数が3カ⽉で500回以上の基準等を含む、4項⽬の内から2つ以上の要件を満たす必要がある。
 地域包括ケア病棟はこれまで、院内ポストアキュート連携を中⼼に展開するケースが多かったが、在宅からの急性増悪の受け⼊れや、医療と介護の連携を通じ、患者の在宅・⽣活復帰を⽀えていくことがより求められる。

表1 地域包括ケア病棟⼊院料・⼊院医療管理料1-4の内容 クリックで拡⼤
厚⽣労働省「平成30年度診療報酬改定説明会」資料より

 介護保険では、介護医療院が新設された。介護医療院から地域包括ケア病棟に⼊院する場合、在宅患者⽀援療養病床初期加算を算定することができる。また、地域包括ケア病棟から介護医療院に転院する場合、在宅復帰率の分⼦としてカウントできる。
 仲井会⻑は病院内に併設されているか否かを問わず介護医療院ではこのような算定ができるので、両者は相性が良いとし、「⼩さな地域包括ケアシステムのようなものではないか」と話す。

■病棟と訪問を兼務する看護師などを養成したい
 仲井会⻑はこれからの急性期病院は、⾼度急性期を担う地域の拠点病院か、地域包括ケア病棟を軸にしたさまざまなタイプの病院のいずれかになると推測している。その中で、地域包括ケア病棟は各病院の特⾊に合わせ、多様な機能を担っていくという。
 理事⻑を務める芳珠記念病院(⽯川県能美市、320床)は急性期を重視しつつ、地域包括ケア病棟や慢性期病棟を有する「多機能型」である。60床ある介護療養病棟は今後介護医療院に転換し、休床している30床の医療療養病棟の返上も検討しており、将来的に病床は230床にする予定だ。今後も82床ある地域包括ケア病棟と、ハイケアユニット(15床)や急性期⼀般⼊院料1(71床)を軸にしていく。病院全体の機能や、周辺地域で急性期機能が⾜りないことを⾒ても、急性期機能は最重要であり、引き続き運営していく考えだ。
 仲井会⻑はこのような多機能型の急性期病院は、地域包括ケアシステムを重視し、在宅を含めて⽣活⽀援型の医療を⽀える機能が重要だという。患者も病院と地域を⾏き来することが増えるので、医療・介護従事者もその動きに合わせる必要がある。そこで、患者を⽣活者の視点でとらえ、病院と地域を⼀体と考えて、切れ⽬ない医療・介護を提供する「パーソン・フロー・マネジメント」の概念を提唱している。
図「パーソン・フロー・マネジメント」の概念図
仲井⽒提供資料より

 芳珠記念病院では、⼊院する際に、訪問看護師やケアマネジャーなどから⾃宅での患者情報を伝えてもらい、在宅復帰後のゴールを設定している。⼀⽅、病院でのアセスメントを訪問看護師に伝えなければ、患者が地域に戻った後の⽀援をうまく受けられない。そこで、看護師が病棟、外来、訪問を兼務し、MSWなどと協⼒すれば、⾃宅などに帰っても状態を安定させやすいし、⼊院してからも適切に対応できる。仲井会⻑は「このような看護師を『ハイブリッドナース』と呼んでおり、各病棟や外来に2、3⼈いれば、病院も⼤きく変わるはず」と話す。
 仲井会⻑は、多職種と協働し、病院と地域をつなぐというのが、今回改定のメッセージであり、障害者や⼊退院⽀援の際の⽣活困窮者への対応もさらに求められるなど、地域共⽣型社会の実現に向けた施策が打たれているという。
 仲井会⻑が理事⻑を務める社会福祉法⼈では、この春から芳珠記念病院の近隣に「共⽣型福祉施設G-Hills」をオープンした。保育・病児保育、学童保育、障害児保育、デイサービス、訪問介護、地域包括⽀援センター、カフェ、配⾷サービスを⼀個所に集め、⾼齢者に限らず、病気や障害のある⼦供なども参加できる場だ。病院の常勤⼩児科医師は、発達障害を含む児童の精神疾患が専⾨だ。
 仲井会⻑は、「⼈⼝減少地域でも、こういう場所があれば⼈が集まりやすくなるし、⽣活⽀援を要する⼈たちも社会参加がしやすい。地域共⽣型社会に向けて取り組んでいる病院も少しずつ増えている」と訴える。

■在宅⽣活への復帰⽀援が経営基盤になるように
 仲井会⻑は、病院が地域で⽣活⽀援を進めていくには、診療報酬や介護報酬の評価体系を根本から変えていく必要があると指摘する。
 現在、地域包括ケア病棟⼊院料・⼊院医療管理料は60⽇まで算定可能だが、⼀⽣懸命在宅・⽣活復帰⽀援を提供して30⽇で退院させるより、⽀援をあまりせずに60⽇近くまで⼊院させた⽅が、利益が出やすい仕組みになっていると指摘する。

地域包括ケア病棟にアウトカム評価なぜ必要?
 仲井会⻑は、このような状況を変えるにはアウトカム評価の徹底が必要とし、その場合の評価指標は、疾病の治癒に加えて、⽇常的な⽣活評価の改善率が必要になるという。
 地域の多職種が⽇常的に本⼈の⽣活⽀援の程度を評価しつつ、患者が⼊院し、退院して地域に戻ってきた時には、⽣活⽀援の程度をもう⼀度評価する。そして、⼊院前、⼊院中、在宅復帰時の改善率が良ければ、病院の評価を⾼める仕組みにする。指標も、ADLだけでなく、ポリファーマシーや栄養状態、認知症の程度など、複合的な視点で評価するが、そこには今後さらに進化するAI(⼈⼯知能)が活⽤できると考えている。
 仲井会⻑は、このような仕組みは、病院の在宅・⽣活復帰⽀援を後押しするだけでなく、病床稼働率を最優先せざるを得ない病院経営の在り⽅も変えていくと考えている。
 病院と在宅の関係者が「在宅⽣活への復帰⽀援・継続」という共通の⽬標を追いつつ、患者の状態を維持・改善するほど、報酬も上がるような仕組みにしていけば、病院も新たな経営形態へシフトできるかもしれない。 
 仲井会⻑は「夢のように聞こえるかもしれないが、⼈⼝が減り、患者も減っていく中で病院稼働率に頼った経営は限界に来ているはず」と話す。
 冒頭でQOLとQODの向上について触れたように、仲井会⻑⾃⾝、家で死にたいといい、地域の中で看取れる体制をつくっていきたいという。地⽅から先に⼈⼝が減っていく中、病院の機能、職員が活躍する場所、患者⽀援の⽅法など、あらゆる⾯での検証が求められているのかもしれない。
 ⻑期的な視野に⽴てば、地域包括ケア病棟の機能こそが今後さらに求められることになるだろう。

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