在宅から⾒た18年度同時改定(2)在宅患者訪問診療料で3つの⼤幅改正

キャリアブレインマネジメント 2018年05⽉18⽇

【医療法⼈あい友会 あい太⽥クリニック 舘野晃⼀郎】
 今回はまず、在宅の診療報酬の構造に触れます。基本となるのが「在宅患者訪問診療料」(以下、診療料)であり、「在宅時医学総合管理料」(在医総管)もしくは「施設⼊居時等医学総合管理料」(施設総管)になります。そして、介護報酬の「居宅療養管理指導費」がセットといえます=図1=。
 診療料は定期的な訪問診療で、外来だと定期通院に当たります。これを⾏った場合に基準を満たせば、⾃宅の患者には在医総管、サービス付き⾼齢者向け住宅(サ⾼住)や有料⽼⼈ホームなどの施設⼊所中の患者には、施設総管が⽉1回算定できます。このほかにも往診料がありますが、これは患者または家族からの求めに応じて訪問診療を⾏った場合に算定するもので、在医総管や施設総管の算定要件には含まれません。こちらは突発的な救急外来のイメージです。
 また、介護報酬では「居宅療養管理指導費」が算定できます。医師が訪問した場合に患者または家族に療養上の指導を⾏い、ケアマネジャーなどに情報提供することが要件となります。
図1 在宅の診療報酬の基本的な構造

 今回の改定では、基本的な点数の⾒直しが⾏われました。
 まず診療料では3つの⼤きな改正点がありました。1つは、複数の医療機関で算定ができるようになりました。これまでは1⼈の患者に対して1つの保険医療機関の保険医(いわゆる主治医)のみ算定可能でしたが、今回はその主治医から紹介を受けた場合には、他の医療機関の医師が訪問診療を⾏っても算定が可能になりました。
 要件に「その診療科の医師でなければ困難な診療」「既に診療した傷病やその関連疾患とは明らかに異なる傷病に対する診療」とあるように、専⾨医への紹介をイメージしています。例えば、⾼齢者に多い治療困難な褥瘡や排尿トラブルなどの専⾨性の⾼い治療や処置が必要な場合、病院に紹介しなくても、⽪膚科や泌尿器科の専⾨医に訪問診療を依頼しやすくなりました。これで在宅での治療の幅が広がることになります。
 2つ⽬は在宅患者訪問診療料(II)が新設され、有料⽼⼈ホーム等に併設される保険医療機関が、その施設に⼊居する患者に訪問診療を⾏った場合の点数が⼤幅に引き下げられました=図2=。介護保険でも施設への集中的な訪問サービスの減算が厳格化されるなど、施設併設事業所に対して厳しい内容となっています。
図2 在宅患者訪問診療料の点数の幅
 3つ⽬はターミナルケア関連の報酬について、厚⽣労働省が公表した「⼈⽣の最終段階における医療決定のプロセスに関するガイドライン」等を踏まえた対応が要件になりました。在宅で死亡した場合には、在宅ターミナルケア加算などが算定できます。患者の意思を尊重し、医療機関が適切な情報を提供して話し合いを⾏い、患者本⼈による決定を基本として進めることが重要とされました。さまざまな場⾯が想定されますが、医療機関でも基本的な治療⽅針を⾒直しておくとよいと思います。
 次に在医総管と施設総管ですが、訪問回数が「⽉1回」と「⽉2回以上」で異なります。今回改定では、⽉2回以上訪問した場合の点数が在医総管と施設総管でそれぞれ100点引き下げられました。その代わりに「包括的⽀援加算」として、要介護2以上、認知症⾼齢者の⽇常⽣活⾃⽴度でランクIIb以上などの要件を満たしている患者には150点(⽉1回)の加算が付きました。
 管理料は在宅療養⽀援診療所の「ランク」によって異なりますが、その要件の1つである看取り実績について緩和されました。従来、過去1年間に在宅における看取り実績を4件以上有していることが必要でしたが、今回は連携医療機関で7⽇以内の⼊院を経て死亡した患者に対し、直近6カ⽉以内に訪問診療を実施していた場合にも看取りの実績に含めてよいとされました。看取り実績が機能強化型在宅療養⽀援診療所への“ランクアップ”のネックになっていた医療機関にとっては、朗報といえます。
 また、末期の悪性腫瘍患者については、ケアマネジャーに対し、適時情報提供することが明記されました。これは介護報酬改定で「ターミナルケアマネジメント加算」(400単位/⽉)が新設され、ケアマネジャーの対応を評価したことにもひも付いています。介護保険ではプランを変更する際に、原則としてサービス担当者会議を開催しなければなりませんが、末期の悪性腫瘍患者は著しい状態変化を伴うため、主治医と頻回に情報交換することで、担当者会議を省略してプランを変更することが可能となりました。
 最後に居宅療養管理指導費ですが、これは介護保険の評価です。例えば、医師が訪問診療を⾏った場合には、診療報酬で訪問診療に関する点数を算定しつつ、同時に介護保険でも居宅療養管理指導費を算定することができます※。
 今回は医療保険と介護保険との整合性の観点から、在宅患者訪問診療料の算定要件と同様に、訪問した建物内で当該訪問⽉に診療した⼈数(単⼀建物居住者の⼈数に応じ、1⼈、2-9⼈、10⼈以上と3段階に分けた)によって評価するなどの⾒直しがありました=表=。

 ※居宅介護⽀援事業者に、居宅サービス計画に必要な情報を提供したり、利⽤者や家族などに居宅サービスを利⽤する上での留意点や介護の⽅法などについて指導・助⾔を⾏ったりすることを評価する

表 「居宅療養管理指導費」訪問⼈数等に応じた評価

 居宅療養管理指導費は、医師以外にも⻭科医師、薬剤師、管理栄養⼠、⻭科衛⽣⼠が訪問して指導、助⾔をした際にも算定できます。その中でも注⽬したいのは管理栄養⼠です。栄養改善の取り組み推進は介護保険でも重点項⽬の1つで、今回改定でも幾つか項⽬が新設されています。在宅分野でも管理栄養⼠の役割がますます重要になってくると思います。
 今回改定では、国としては在宅のすそ野を広げていきたいことに間違いないでしょう。⼀⽅で、在医総管と施設総管が引き下げられ、包括的⽀援加算が設けられたように、患者の重症度に応じてめりはりを付けています。今後もこの傾向は進むと考えられます。例えば、軽症患者については、⽉1回の訪問に収めるといった⽅向性も⽰すかもしれません。
 在宅に進出したい医療機関は多いと思います。地域での⾃院の⽴ち位置なども踏まえ、戦略を⽴ててみてはいかがでしょうか。

舘野晃⼀郎(たての・こういちろう)
 1996年同志社⼤⽂学部社会福祉学専攻卒業後、損害保険会社に勤務。その後、介護⽼⼈保健施設の⽀援相談員を経て、善衆会病院(前橋市)に勤務。地域医療連携室⻑などを務める。2016年から在宅療養⽀援診療所「あい太⽥クリニック」で事務部⻑を務める。社会福祉⼠、介護⽀援専⾨員。

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