新型コロナ、緊迫の介護現場 感染警戒、どうする支援欠かせない人

朝日新聞 2020年3月9日

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、名古屋市が広範囲のデイサービス事業所に2週間の休業要請――。要介護高齢者の暮らしを直撃するニュースは、各地の介護関係者に衝撃を与えた。感染警戒を強めるが、マスク不足も深刻化。もし介護サービスが途切れたら、利用者はどうなるのか。現場の緊張は高まる。
 名古屋市は6日、高齢者に感染が拡大するのを防ぐため、市内の二つの区のすべての高齢者デイサービス事業者(126カ所)に対して休業を要請した。期間は原則7日から2週間。利用者約5800人とその家族の生活に影響を及ぼす事態となった。

 ■電車避け車通勤
 他の地域では、大半の事業所は運営を続けつつ、感染予防に神経をとがらせる。埼玉県で小規模多機能ホームなどを運営する医療法人財団は、職員の感染を防ぐため、通勤を電車から車に切り替えるよう要請。担当者は「職員に負担をかけるが、できる限りのことをするしかない」。要介護度の軽い人向けのデイサービスは2日から休止。それ以外の人にも利用を控えてもらうなどして、1日の人数を通常の7、8割程度に絞り、密集を避けているという。
 デイサービス「すまいるほーむ」(静岡県沼津市)は、事態が落ち着くまで、ボランティア受け入れを休止。学校が休校になった今月、小学校低学年の子を育てる女性職員から「子どもと一緒に出勤してもよいか」と相談があったが、休んでもらうことにした。管理者の六車(むぐるま)由実さんは「普段なら『子連れ出勤』大歓迎だが、今回は安易に『いいよ』とは言えない」と苦しい胸中を明かす。
 厚生労働省は2月下旬の通知で、「発熱で(デイサービスなどの)利用を断った利用者については、必要に応じ、訪問介護などの提供を検討する」という方針を示した。

 ■具体的な指針を
 デイサービスや訪問介護を手がける「暮らしネット・えん」(埼玉県新座市)の小島美里さんが最も懸念するのは、発熱がみられるなど感染がありうる利用者への訪問だ。「『老老介護』や『独居』の人が多く、やはり行かざるを得ない」。ヘルパーはどのように対処すればよいか、もっと具体的な指針を厚労省が示すべきだと訴える。
 SOMPOケア(本社・東京都)は利用者に対し、ホームヘルパー訪問前の検温を依頼。37・5度以上あれば、かかりつけ医に診てもらうように伝える。利用者が発熱していても、ヘルパーは原則として訪問する。

 ■もし途切れたら
 訪問介護事業を実施するNPOわかば(東京都世田谷区)の辻本きく夫理事長は、今後スタッフに1人でも感染者が出たときの対処に危機感を抱く。「職員がみな自宅待機になれば、訪問介護が途切れる。別な事業所に引き受けてもらうほかないが、どこも人手不足で難しいと思う。考えると恐ろしい」
 一人暮らしで認知症の高齢者は、サービスが止まったら生活が立ち行かなくなる――。介護関係者に共通する危機意識だ。
 東京都内のあるデイサービス事業所は、21人の利用登録者のうち14人が独居、そのうち11人は支援できる家族が身近にいない。運営者によると、その大半は認知症か軽度認知障害(MCI)という。「食事や水分をきちんととれるのか。休止すれば大変なことになる。休業期間中、自分たちが手分けして14人を訪問し、お弁当を届けるなどの支援をするしかないのではないか」

 ■マスク不足、交換できず 手作りでしのぐ
 「マスクが入手できずに困っています。つい多めに買い込んでしまった方、どうか近くのヘルパーやデイの事業所にお譲りください!」
 訪問介護事業などを運営するNPO法人グレースケア機構(東京都三鷹市)の柳本文貴代表は今月1日、自身のツイッターでこう呼びかけた。柳本さんは「入手できなければ、あと1週間程度しかもたない」と危機感を募らせる。
 マスクや消毒液を節約するため、感染防止策が不十分なまま訪問を続けざるをえない。そんな苦悩を明かすのは、関東地方で24時間対応の訪問介護・看護を担う事業者だ。本来なら利用者宅ごとにマスクを交換すべきだが、1日つけっぱなしという。
 利用者宅に着いたら換気や手洗いなどできる限りの対策をしている。ただ訪問前の検温を頼んでも、認知症の人は自分でうまく測れず、不調を訴えることができない場合もある。「現場は感染不安が常につきまとっています」
 厚労省は訪問介護について、利用者が発熱した場合、サービスの必要性を再検討し、必要と判断したら感染防止策を徹底した上でサービスを継続するよう通知している。「現場任せはひどい。安心してヘルパーが訪問できるように物品を供給してほしい」
 神奈川県鎌倉市で「ワーキングデイわかば」など2カ所のデイサービスを運営する稲田秀樹さんも、「不織布のマスクは、あと1週間ももたない」と危機感を隠さない。
 「わかば」では2月下旬から、高齢者らの作業の一環でガーゼマスクを手作りしてきた。今月1日に独自に感染症対策をまとめたが、不織布マスクが入手できるまで、この手作りガーゼマスクを、きちんと消毒しながら使うことに決めた。マスクがない利用者家族にも配るという。
 介護職員らの労働組合「日本介護クラフトユニオン」が6日公表した緊急アンケート(1437事業所が回答)によると、マスクの在庫が「すでにない」のは、全体の19%、訪問介護事業所では28%に上った。国は布マスクを一括購入して介護施設などに配る方針を示しているが、事態は切迫している。

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