COVID-19、中国の治療戦略はこうなっている 抗ウイルス薬にステロイド、回復血漿、漢方――何をどう使っているのか

m3.com編集部2020年2月21日 (金)配信

 国内での感染が日々拡大している新型コロナウイルスだが、同ウイルス感染症(COVID-19)の治療法はいまだ確立していない。流行先行国であり、この2カ月間決死の戦いを展開してきた中国では、どのような戦略を講じてきたのか。中国国家衛生健康委員会総局が2月18日に発出した診療指針試行最新版(新型冠状病毒肺炎診療方案 試行第六版)では、前版までにあった「抗ウイルス薬による薬物療法は確立されていない」の文言が消え、治療への手応えが感じられる内容に変化した。臨床像と治療に関する項の概要を紹介する。

この情報は中国国民健康委員会総局の公開情報を機械翻訳の上で、m3.com編集部にて翻訳・編集・監修したものです。流行先行国での治療内容を参照することが目的であり、一部に国内未承認薬や適応外の使用方法が含まれますが、使用または利用を推奨するものではありません。誤訳があった場合は随時修正します。

COVID-19の臨床像
 現在の疫学調査によると、COVID-19 の潜伏期間は1~14日、大抵は3~7日である。主な症状は、発熱、乾性咳嗽、倦怠感であり、鼻閉感、鼻汁、咽頭痛、下痢が認められることもある。重症化する場合は、発症から1週間後に呼吸困難および/または低酸素血症を呈することが多い。重症化すると急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、ショック、代謝性アシドーシスおよび凝固障害、多臓器不全を呈し治療に難渋する。最重症患者では明らかな発熱がない場合があり、注意を要する。

 軽症患者の熱は低く、軽度の疲労感のみで、肺炎は認められない。

 現在の症例情報からは、COVID-19に感染しても多くの場合は予後良好であり、重症となる患者は少数と判断できる。高齢者および基礎疾患のある者が感染した場合は予後不良となり得る。小児は感染しても比較的軽症で済む。

血液生化学検査所見
 発症の初期段階では、末梢血中白血球数の正常~減少、およびリンパ球数の減少が認められる。一部の患者では、肝酵素、乳酸脱水素酵素(LDH)、筋酵素およびミオグロビンの増加が見られる。一部重症患者ではトロポニンが上昇する可能性がある。C反応性タンパク(CRP)および赤血球沈降速度は上昇するが、プロカルシトニンは正常である。重症例ではD-ダイマーが増加し、末梢血リンパ球は進行性に減少する。重症~最重症患者では炎症因子の上昇がしばしば見られる。

胸部画像所見
 初期段階には、複数の小さな斑状陰影と間質性変化を肺野に認める。その後、両肺にすりガラス浸潤影が発生する。重症では肺陰影の癒合が見られるが、胸水の発生はまれである。

臨床分類
【軽症】
臨床症状は軽度であり、画像検査で肺炎の所見は見られない。
【中等症】
発熱、気道症状およびその他の症状により、画像検査で肺炎と診断できる。
【重症】
次のいずれかを満たす。
RR>30回/分の呼吸困難
安静時SpO2が93%未満
P/F比(動脈血酸素分圧=PaO2)/酸素濃度=FiO2)が300mmHg未満
【最重症】
次のいずれかを満たす。
呼吸不全があり、人工換気を要する
ショック
臓器障害を合併し、ICUでの管理および治療を要する
COVID-19の治療
1 治療環境の決定
 効果的な隔離および保護条件を備えた指定病院で治療する。疑い症例についても、隔離の上、指定の部屋で治療を行う必要がある。最重症患者は早急にICU管理を開始する。

2 治療一般
 ベッド上安静とし、支持療法を強化する。十分なカロリーを補充し、水分と電解質バランスに注意しながら、バイタルサインと酸素飽和度をモニターする。状況に応じて、血液検査、尿検査、CRP、生化学的指標(肝酵素、心筋酵素、腎機能など)、凝固機能、動脈血ガス分析、胸部画像検査を行う。鼻カニューレ、酸素マスク、経鼻高流量酸素療法などの酸素療法を適宜行う。

 使用できる抗ウイルス薬は以下の通り:
 吸入インターフェロンα(成人で500万U相当量、注射用水2 mLを1日2回追加)=国内未承認。ロピナビル/リトナビル(200 mg/50 mgを1回2錠、1日2回、10日以内)。リバビリン(インターフェロンあるいはロピナビル/リトナビルとの併用を推奨、500 mg/時、1日当たり2~3回の静脈内注入、10日以内)。リン酸クロロキン(500 mg、1日2回、10日以内)=国内未承認。アルビドール(200 mg、1日3回、10日以内)=国内未承認。
 ロピナビル/リトナビルの副作用として下痢、嘔気・嘔吐、肝障害に注意する。薬物相互作用にも注意を払う。
 これらの薬剤については現在臨床試験が進行中(※編集部注:中国国内)であり、臨床応用においてさらなる評価を行う。3つ以上の抗ウイルス薬の同時使用は推奨されない。重篤な副作用が発生した場合は、関連薬の使用を中止する。
 抗菌薬治療では、複数の広域抗菌薬の盲目的または不適切な使用を避ける。

3 重症、最重症患者の治療
 治療の原則は対症療法である。合併症の予防、基礎疾患の治療、二次感染の予防、必要に応じて臓器機能の補助を行う。

【呼吸器補助】

酸素療法:重症患者には鼻カニューレまたはマスクで酸素を投与し、呼吸困難や酸素状態を経時的に評価する。
高流量経鼻酸素療法または非侵襲的人工換気:標準的な酸素療法で呼吸困難感や低酸素血症を改善できない場合に検討する。短時間(1~2時間)で改善しない、あるいはさらに悪化する場合は、気管挿管および侵襲的人工換気を適時実施する。
侵襲的人工換気:1回換気量(4~8 mL/kg)および低吸気圧(プラトー圧<30 cmH2O)を低く設定した換気を行い、人工呼吸器関連の肺損傷軽減に努める。鎮静剤および筋弛緩薬を適宜使用する。
サルベージ療法:重度のARDS患者には肺拡張を行う(1日12時間以上)。換気不良の場合、体外式膜型人工肺(ECMO)の導入を早急に検討する。
【循環補助】
 輸液で微小循環を改善する。循環作動薬を用い、必要に応じて血行動態をモニターする。

【その他の治療】
 酸素飽和度の進行性の悪化や急速な画像所見の増悪、および炎症反応の急激な上昇が見られる場合、必要に応じてグルココルチコイドを短期間(3~5日)使用できるが、メチルプレドニゾロン換算で1~2 mg/kg/日相当量を超えないものとする。グルココルチコステロイドの大量使用は、免疫抑制作用によりコロナウイルスの除去を遅延させる可能性があることに注意する。

 輸血は100 mlL/回、1日2回まで行える。腸内バランスの維持と二次感染予防のための整腸剤も使用可能である。回復患者の血漿を用いた血漿投与療法も使用可能である(※国内未承認)。重症患者で炎症反応が高い場合には透析も検討する。

 感染患者は不安感や恐怖感を抱いており、心理カウンセリングを強化する必要もある。

4 漢方治療
 「新型冠状病毒肺炎診療方案(試行第六版))」では漢方治療の記述が前版の倍以上に拡充された。詳細は上記原著を参照。

5 退院の基準とその後
 3日以上解熱状態が続き、呼吸器症状および胸部画像上の改善が認められること、1日以上の間隔を空けて2回連続採取した呼吸器検体でPCR陰性を確認することが退院の条件となる。退院後は、患者の居住地域にある主要医療機関と指定医療機関で診療記録を共有し、適宜行政や地域医療機関に情報を送る。
 退院後の患者は免疫機能が低下しており、他の感染症に罹患するリスクがあるため、退院後14日間は健康状態に注意するよう指導する。マスクを着け、換気の良い部屋で、家族との接触を減らし、食事は別とし、手指衛生を心がけ、外出を避けるなどの条件付きで過ごしてもらう。
 退院後2週目および4週目にはフォローアップ受診を推奨する。

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