訪看ステーションの看護師とPTに「相互理解を」PT協会、日本訪問看護財団とセミナー初共催

キャリアブレイン 2020年02月21日
 日本理学療法士協会と日本訪問看護財団は15日、「訪問看護ステーションにおける看護師と理学療法士のより良い連携」と題したセミナーを開催した。両団体の共催としては初の試み。それぞれの役員が、相互の「専門性に対する理解」を軸とした連携の在り方について講演し、制度の変遷や国際的な取り組みについて経営的な視点を交えながら紹介した。また在宅の現場からも、看護師と理学療法士の双方から、両者の連携を通じたアセスメントや調整などを経て、在宅療養者の希望を実現した事例などが報告された。
 セミナーには、訪問看護に関心を持つ看護師・准看護師と理学療法士・作業療法士ら111人が参加。いずれも定員を超えて応募があった。
 日本理学療法士協会の森本榮常務理事はセミナーの冒頭のあいさつで、2019年現在で1万1,000事業所を超える訪問看護ステーションのうち、理学療法士などのリハビリ専門職が働く事業所は、およそ54%に上ることを説明した。こうした状況から、訪問看護ステーションについて「協会として重要な雇用先として評価している」との認識を示した上で、「連携を重視して質の高い業務をしてもらうことが一番の望み。理学療法士も淘汰の時代に来ている」と述べた。
 また、18年度の介護報酬改定では、訪問看護ステーションから理学療法士が看護職員の代わりに訪問して実施するサービスについて、利用者へ説明して同意を得ることが必要になっている。森本常務理事はこうした流れを受けて「理学療法士が何をしているのか、どれだけ他職種に見せているか」と参加者に問い掛けた。
 この点に関しては、協会としても理学療法士の問題解決能力を可視化・共有して現場の問題解決能力を向上させる取り組みを進めているところだという。例えば、理学療法士が歩行訓練を実施する際には、筋肉や脳神経などの人体や疾患に関する知識を基に、利用者が生活する地域特性や家屋の状況、さらには歩行能力が歩行能力以外のADLにどのように結び付くかが検討された上で判断がされている。こうした、目には見えにくい専門性がどのように発揮されているかについて、ロジックの体系的な整理を進めていることを紹介した。

■訪問看護事業所におけるリハ専門職の活用について両団体が見解
 日本訪問看護財団の佐藤美穂子常務理事は基調講演で、訪問看護に関する制度の変遷やその前身となる看護師などの活動について紹介。日本看護協会が1990年にまとめた報告書の内容から、訪問看護の定義を「対象者が在宅で主体性を持って健康の自己管理と必要な資源を自ら活用し、生活の質を高めることができるようになること」(QOLの向上)と「安らかな終末を過ごすことができるように支援すること」(QODの向上)を目的とし、そのために具体的な看護の提供や指導をして、健康や療養生活上の相談にも応じ、必要な資源の導入・調整をするものなどと説明した。
 その上で、訪問看護の現場における理学療法士との連携の意義について、高齢者を対象とした予防の重要性を例に挙げて指摘した。具体的には、「人は死ぬまで立てることを前提としたケア」を実現するために、▽日常生活の自立を促すケア▽介護予防▽尊厳の維持▽地域とのつながりの維持-などの各領域で「理学療法士などの専門性を共有し、協働していくことが重要」と述べた。
 一方で、理学療法士などのリハビリ専門職が80%以上を占めている訪問看護ステーションが17年時点で0.4%存在するなど、「理学療法士(など)のサービスを入れるために、看護師が3カ月に1度の観察を目的に訪問して、看護をやらせてもらえないステーション」が存在していることについて、否定的な考えを示した。中央社会保険医療協議会における20年度診療報酬改定を巡る議論で取り上げられたことにも言及し、結果として、理学療法士等による訪問看護について、週4日目以降の評価が見直されたことにも触れながら「いびつな発展の仕方というのはまずいのでは」と述べた。
 日本理学療法士協会を代表して基調講演した松井一人理事は、介護に直結する老年症候群が現れたり、複数の慢性疾患を持ったりしている在宅高齢者のような「多領域の課題を有する利用者が増えていく中で、多職種の連携は非常に重要」と述べ、訪問看護ステーションで働くリハビリ専門職の認知度向上が必要だと訴えた。
 これと併せて、訪問リハビリテーションを実施する医療機関が存在しない市区町村は全国に42.2%(734市区町村)あるなどとする同協会の調査結果を紹介。オランダの「ビュートゾルフ」に代表される海外の訪問看護サービスにおいても、看護師と理学療法士の連携が積極的に進められていることなどにも触れながら、訪問看護ステーションを通してリハビリテーション専門職によるサービスを地域に届ける必要性について理解を求めた。
 さらに松井理事は、訪問看護ステーションの強みを「医療機関に帰属しないことによるメリット」と表現した。これは、地域のかかりつけ医が共同で訪問看護ステーションを活用することで、病院ではなく地域完結型の医療が可能になるというもの。多様な専門職やサービス事業所との柔軟な連携を通じて、地域が抱える医療周辺ニーズを包括的にカバーしていく姿を将来像として示した。

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