2040年に⽣き残る介護経営⼊⾨(4)中・⻑期的な⼈材確保のために事業所ができること

キャリアブレインマネジメント 2018年09⽉26⽇

【⼀般社団法⼈リエゾン地域福祉研究所 代表理事 丸⼭法⼦】
 いまや都⼼部だけではなく地⽅のコンビニでも、よく働く外国⼈名のスタッフさんに出会います。介護業界以外ではすでに外国⼈が活躍していて、市役所の窓⼝に数カ国語の案内があるのはもはや当たり前。また、常勤か⾮常勤かではなく時短勤務や派遣職員、育児や介護のためにパート勤務をするスタッフなど、年齢層も幅広くなりました。ご存知の通り、「働き⽅改⾰」を受けて雇⽤環境は⼤変な勢いで変化していますので、介護経営も福利厚⽣含めた待遇改善をスピードアップする必要がありますね。
 新卒採⽤はできていますか? 介護福祉⼠養成⼤学や専⾨学校では、経営が成り⽴たないからと、年々学部を閉じつつあります。⼦どもの数が減っているので、当然、⼊学者数は減少するとは思いますが、介護分野への進学に親や教員が⼤反対するからか、その加速度は増しているように感じます。

■介護という専⾨技術は分解・分業へ
 ⾼齢社会を迎えた約20年前は、「福祉の資格があれば将来⾷いっぱぐれなし!」と養成校に学⽣が押し寄せました。介護施設も激増し、有資格者を現場にどんどん送り出した福祉バブルはやがて沈静化。有資格者の採⽤以上に要介護者が増加して、⼈⼿不⾜解消のための政策も始まりました。失業者の職業訓練では介護の資格取得に魅⼒的な補助⾦が付き、中⾼年⼥性のパート勤務が進んでいます。そこへリストラ組の中⾼年男性が加わり、社会経験豊富で頼りになる存在として⼒を発揮しています。やがて派遣や、家庭との両⽴ができるからと⼦育て中ママも働き⼿として増加し、さらには定年後のシニア層や外国⼈労働者の⼒も借りて、といった道程を歩み始めています。「養成施設」以外から資格を取得した⼈は増加の⼀途をたどっていて=グラフ=、介護⼈材確保のターゲットが急速に幅広になった今、採⽤戦略も単純ではいられません。
 
グラフ 介護福祉⼠の登録者数の推移(クリックで拡⼤)
厚⽣労働省資料(⼈数は各年度9⽉末の登録者数)
 
 今後は、移乗や移動といった⼒仕事は介護ロボットへ、コミュニケーションや安否確認はAIへ、軽作業や補助業務などのいわゆるお世話の仕事はパート職員へ、そのつなぎになる期待のマンパワーが外国⼈労働者となれば、介護という専⾨技術は分解・分業されていく運命です。とすると、介護福祉⼠の役割は、⼀番コアとなる⽀援業務と管理業務に集約されます。
 指⽰・命令の統括として、⽀援計画に沿ってロボットやAIに指⽰を送り、シニア職員からヒアリングしたデータを分析して⽇常の変化をくみ取り、本⼈と家族へ納得のいく説明をしながら⽀援計画に反映させることとなります。もちろん介護ロボットやAIなどの操作も熟知しなければいけません。かなりハイレベルです。

■職員のキャリアアップを事業所が⽀援
 昨今の福祉系⼤学⽣の就労に対する考え⽅も変化しています。もはや本業、常勤としての介護職ではなく、いったん他業種を経験した後、⼈⽣経験として介護の仕事に携わり、やがてまた他業種へ移⾏するライフビジョンを描き始めたと聞きます。介護という世界が⼈⽣を豊かにさせるという考えは理解できます。結婚や育児、親の介護など、働き⽅の転換が必要なタイミングに資格があるとスムーズに介護現場に⼊れる上、他業種の知識や経験が介護業界でも即戦⼒として⽣かせます。その後、再び他業種へ⽻ばたくのも、「⻑い⼈⽣、ちょっと寄り道的なダブルレールがあっても良いのではないか」「たとえ給料が少なくても、社会勉強や⼈⽣の豊かさを味わえるのであれば良い経験ではないか」といった考えです。
 今後、介護現場では、働く⽬的・勤務時間・業務範囲・休み⽅・報酬・性別・年代・経歴・国籍などが異なる、さまざまな⼈が⼀緒に働くようになります。そして、利⽤者も⾼齢者だけではなく、障害者・⼦ども・看取り患者などへ広がり、施設のある敷地内には、⼦ども⾷堂・サロン・住宅・コンビニ・図書館・カフェなど、介護保険を超えた多くの⽣活カテゴリーが境⽬なく集まります。介護事業所はまるで⼩さな町へと多様性を備えていきます。
 これをマネジメントするのは誰でしょうか。1つはオペレーションを管理できる事務職の⼈材です。もう1つは、介護福祉⼠や社会福祉⼠という有資格者であり、現場をマネジメントする能⼒や、教えたり伝えたりができるコミュニケーション能⼒を持つ専⾨職です。実⼒ある介護福祉⼠は、やがて保険外サービスで⼤活躍し、⼤きな収⼊源になるのではないでしょうか。今、養成校卒よりも、働きながら資格を取得する⼈が増えています。
 キャリアアップを促し、資格と実⼒を⾝に付けてもらうことは事業所が⽀援できることです。
 2040年に向けた地域共⽣型サービスや、保険外サービスを視野に⼊れた経営計画ができたなら、同時にそれを担う⼈材計画も策定してください。介護は⼈件費が⼤きくかさむ業界です。年齢の分散を考慮し、中・⻑期的に⼯夫をし、⼈財という体⼒を付けていきましょう。

丸⼭法⼦(まるやま・のりこ)
 ⼀般社団法⼈リエゾン地域福祉研究所・代表理事。⺠間企業勤務を経て、広島県内の社会福祉協議会へ転⾝。基幹型在宅介護⽀援センター相談員と福祉の町づくりに関わる。2011年に退職して⼀般社団法⼈リエゾン地域福祉研究所を設⽴。各⾃治体の地域包括ケア運営⽀援、医療や福祉に関する管理者研修や法⼈運営⽀援、地域貢献事業コンサルティングなどを⾏う。厚⽣労働省⽼健局事業の委員などを兼務。

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