介護セクハラ 現場の悲鳴…労使で対策へ

読売新聞 018年9月23日

介護現場のハラスメント対策などを話し合う労使会合が開かれた(22日、神戸市中央区で)=枡田直也撮影
 介護の現場で、職員が利用者やその家族から性的な嫌がらせや暴言などのハラスメントを受ける被害が深刻化している。関係者からは、「労働環境が改善されなければ、ますます人手不足に拍車がかかる」との声が上がる。厚生労働省も初の実態調査の実施を決めるなど、対策に乗り出した。(社会保障部 小沼聖実、大阪生活教育部 辻阪光平)

人手不足 要因に/体調不良訴えも
 ■危機感
 「今回は、ハラスメント防止に特化して話し合いを進めたい」
 神戸市内で22日、介護職員ら約8万人が加入する業界最大規模の労働組合「日本介護クラフトユニオン」(久保芳信会長)と、介護施設の代表者らによる労使協議が開かれた。久保会長の冒頭のあいさつには、強い危機感がにじんだ。
 会合では、労使が一体となって、セクハラ・パワハラ行為をする利用者らへの適切な対応を学ぶ教育システムの構築や、被害を受けた職員へのメンタルケアなどの対策に取り組むことで合意。年度内をめどに、全国の約60法人と、こうした対応を盛り込んだ労使協定の締結を目指す。
 久保会長は、「介護の人材不足を生む要因でもあり、早急にマニュアルや研修体制の整備を進め、改善を図りたい」と語る。

 ■女性9割近く
 同ユニオンが組合員を対象に行ったアンケート調査によると、介護職ら2411人のうち74%が、訪問介護サービスなどで、ハラスメントを受けた経験があると回答した。全体の約7割がパワハラを、約3割がセクハラを経験していた。
 都内の訪問介護事業所に勤める女性(62)は、体が不自由な70歳代の男性利用者を入浴介助中、陰部を洗うよう強要されたことが忘れられない。男性は手が使えたため、自分で洗うよう断ったが、聞き入れず、やむなくタオルで洗ったところ、「手を使え」「もっときれいにしろ」と言い出した。
 女性は、「対応の仕方でかわせることもあるが、言われた言葉はずっと心に残る。入浴介助のたびに、嫌な気持ちがよみがえった」と振り返る。同僚の中には、胃の痛みや「利用者が夢に出て寝られない」など、体調不良を訴えるヘルパーもいたという。
 介護現場でのハラスメントについて、関西医科大の三木明子教授(精神看護学)は、「サービス提供時に密室で1対1になることが多く、ハラスメントが起こりやすい環境」と指摘する。入浴や移動の介助などで、身体的な接触がある場面が少なくないが、厚労省などによると、訪問介護に携わる職員は9割近くを女性が占めている。

 ■「お手伝いさん」
 利用者側に、介護保険についての知識が乏しいことも一因だ。介護保険で利用できるサービスの範囲は限られており、介護職は、利用者との契約で決まったサービスしか行えない。
 ところが、介護職を「何でもやってくれるお手伝いさん」のように勘違いする利用者や家族もいまだにいるという。「(サービス範囲外の)ペットのえさの購入や庭木の水やりを要求し、断るとどなる」といったケースが報告されている。
 ただ、契約解除は介助が必要な利用者の暮らしに直結するため、事業者の対応も難しい。
 正当な理由なしにサービス提供を拒むことはできないと、省令でも定められている。関係者からは、ハラスメント行為を「(サービス提供拒否の)正当な理由」として、明確化するよう求める声が強まっている。

厚労省、初の実態調査…一部では防止策着手
 国も対策に乗り出した。厚生労働省は今年度、訪問介護などでのハラスメントの初の実態調査を行う。年度内に事業者向けの対策マニュアルも策定する考えだ。
 一部の事業者や自治体は、すでに対策に着手している。
 2人1組で介護にあたることは、有効なハラスメント防止策とされるが、費用負担が増えるのを嫌い、利用者が同意しないことも多い。兵庫県は今年から、複数人で訪問した場合の費用補助を始めた。1回の訪問につき一定額を、県、市町、事業所が3分の1ずつ負担して補助する仕組みだ。看護師が対応するハラスメントの相談窓口も設けている。
 介護大手のSOMPOケア(東京)には、ハラスメント対応などの専門部署があり、介護職や医師、法務の専門家らがチームで対応にあたっている。問題が起きると、現地で女性スタッフが話を聞き、状況に応じた解決策を講じる。
 事業所の管理者には、「なるべく断らずにサービスを提供するのが社会貢献だ」という考えも根強いというが、担当する飯田博之・業務支援部長は「スタッフの労務環境を守るのは管理者の義務」と話す。
 ただ、ぎりぎりの人数で業務を行う小規模な事業所では、対策をとる余裕がないことも多い。城西国際大の篠崎良勝准教授(介護労働学)は、「事業所の管理者には、相談があっても『受け流せなければダメ』と考える人もまだ存在する。管理者への教育が重要で、相談窓口の設置など、国や自治体も取り組む必要がある」と指摘している。

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