【長崎】認知症の妻を老老介護の末 83歳夫、無理心中か

長崎新聞 2018/9/9

長崎 長年連れ添った夫婦 悲しい最後
 長年連れ添った夫婦が、悲しい最期を迎えた。8月20日夜。長崎市三川町の住宅で83歳の夫と82歳の妻の遺体が発見された。関係者によると、妻には認知症があり、夫が一人で介護していたとみられる。
 「連絡が取れない」。県外の息子から浦上署に電話相談があったのが同日夜。警察官が自宅を訪ねると、妻は布団の上であおむけで亡くなっていた。首にコードで絞められたような痕があった。夫は別の部屋で首をつって息絶えていた。
 現場には夫がつづったとみられる走り書きが残されていた。こんな趣旨の言葉が記されていた。「あとのことは頼んだ」。県警は無理心中の可能性が高いとみている。
 近隣住民らによると、妻に認知症の症状が出始めたのは約2年前。早朝に窓を開けて叫んだり、肌着のまま外出したり…。妻の言動は明らかに奇異だった。ある住民はその頃、見掛けた夫の様子を覚えている。「両手に買い物袋を提げ、とぼとぼと歩いていた」
 妻は今春から市内の認知症専門のデイサービスに通っていた。ところが、7月中旬に突然、夫から施設に「やめます」と連絡があった。夫は職員にこう言ったという。「妻の状態が落ち着き、2人でやっていける。2人で名所を巡ったり、お参りしたりするので」
 それは症状が一進一退する中、つかの間の「回復」だったのか。夫婦の平穏はしかし、長くは続かなかった。施設関係者は自問自答している。「介護は当事者にしか分からない苦労がある。旦那さんは本当に頑張っていた。事業者として、もっと手助けできる方法はなかったか…」
 急速に高齢化が進む日本で社会問題化する「老老介護」。遺体で見つかった夫婦の周辺をたどりながら、課題と対策を考える。
 亡くなった高齢夫婦には県外に2人の息子がいた。付近住民によると、認知症を発症する前、妻は、仕事で活躍する子どもたちのことをうれしそうに周囲に話していたという。
 
 ■悔やむ住民ら
 妻はデイサービスの職員にこう漏らしたことがあった。「子どもたちに迷惑は掛けられない。子どもたちにも人生がある」。一方、住民の一人は妻がこう口走ったのを聞いた。「子どもも孫もいらん」
 頼りたい。でも、迷惑は掛けたくない-。そのはざまで揺れ動き、苦しんでいたのか。
 約40年の付き合いがある住民によると、妻は元々、社交的な性格で、夫は逆に寡黙だった。別の住民は「(夫が)少しでも相談してくれれば…」と悔やむ。しかし、手を差し伸べる難しさを口にする住民も。「家庭の問題に積極的に入っていくのはどうか。個人情報の壁もある」
 ■認知症6.4万人
 県によると、県内の認知症高齢者は約6万4千人(2015年)。25年にはさらに2万人近く増えると推計され、支援体制の強化が急務だ。長崎市は各地域包括支援センターには認知症専門の職員を配置。ただ「患者やその家族の相談・支援体制は充実してきているが、その情報が当事者にどこまで届いているのかは分からない」と担当者。
 すべての患者を行政機関が把握するのも難しい。認知症を隠したがる家族は少なくないからだ。担当者は「近所で気掛かりな人がいたら情報提供してほしい。おせっかいなぐらいでも、住民のつぶやきが貴重な情報」と呼び掛ける。
 ■弱音を吐く場
 事件の夫婦同様、高齢男性による一人介護の形も増えてきている。「認知症の人と家族の会県支部」は「男性は女性に比べ、きっちり介護しようとする人が多い傾向。だから、心に余裕がないと先が見えない不安に押しつぶされてしまう」と指摘する。
 同支部の佐世保地区会は約8年前から男性限定の集会を定期的に開いている。同地区会世話人の松尾文子さん(71)は「仕事に生きていた男性は退職後、社会からプツッと切れてしまう。集会に参加することで『一人じゃない』と実感できる」と話し、男性介護者が悩みや愚痴をこぼせる場の必要性を強調する。
 「ただ」と松尾さんは続けた。「集会でも地域の中でも、『誰かに介護の弱音を吐くことは決して恥ずかしいことじゃない』と思わせるような社会づくりが必要だと思います」
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 長崎市の夫婦が、変わり果てた姿で発見されてから2週間。自宅の表札はすでに取り外され、庭には赤い鼻緒の雪駄(せつた)と青いサンダルが置かれたままだった。

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