【高知】高知県内で歯科衛生士が不足 口腔ケアニーズ高まり「争奪戦」

高知新聞  2018年5月14日

待遇改善、奨学金…志願者増へ対策
 高知県内で働く歯科衛生士の不足が続いている。口腔(こうくう)ケアのニーズが高まる一方で、志願者が減少。引き抜きなど“争奪戦”も起きているという。危機感を抱く関係者はようやく、待遇改善などの対策に乗り出した。
 「歯科衛生士は募集かけても集まらん。厳しいよ」
 県中部にある歯科医院の院長(39)は開業を決めた当時、歯科医師仲間にそう助言された。実際、ハローワークに求人を出したが、応募は「ゼロ」。
 県内で唯一、歯科衛生士を養成する高知学園短期大学(高知市旭天神町)に紹介を頼み、開業までに何とか常勤2人を確保できた。「運が良かった方」と振り返る。
 県歯科医師会によると、こうした状況は2011年ごろから続いているという。
 昨年、県内の歯科診療所362施設に行った調査では、1施設当たりの歯科衛生士は常勤が1・79人、非常勤、パートが0・87人。4割が「不足している」と答えた。
 実際には歯科衛生士を予定通り雇えないままの開業や、他の診療所からの引き抜きといった事例が聞かれる。「来てくれるなら、40代でも50代でも」と焦る院長も。病院や介護施設でも雇用が進み、“争奪戦”はますます激しくなっている。

 ■寿退社
 県内で働く歯科衛生士数は、実は年々増加している。厚生労働省の統計によると、08年は860人で16年は1023人。この間、歯科診療所数も357施設から370施設に増えたが、歯科衛生士数の伸びを上回るほどではない。
 「むしろ、治療から予防へと歯科の役割が大きく変化したことが影響している」。県歯科医師会の野村和男会長は、そう分析する。
 これまでの歯科は「歯が痛くなったら受診する」という治療メインの考え方。歯科衛生士の仕事は診療補助が主だった。
 現在は虫歯ができないよう、定期的にメンテナンスを行う「予防歯科」の考えが主流となり、歯科衛生士の役割が拡大。診療補助に加え、口腔ケアを担う“主役”となった。
 さらに、在宅医療が進み、在宅歯科の充実も求められるようになった。診療所以外でも歯垢(しこう)や歯石の除去、歯磨き指導を十分に行い、歯と口の健康を守るには、経験を積んだ歯科衛生士がもっともっと必要、というわけだ。
 だが、少人数の診療所では「以前は寿退社が当たり前だった」と野村会長。新卒の歯科衛生士を結婚までの数年で入れ替えてきた結果、20代中盤から30代中盤の中堅クラスが不足。復職も難しくなっている。
 給与も低く抑えられてきた。他県の歯科衛生士や他の医療職に比べると、「初任給で数万円の開きがある」(野村会長)。高知学園短大では教育課程を2年制から3年制に移行した頃から、歯科衛生専攻の志願者が減少。09年度に定員を10人減の40人に変更しても、定員に満たない状況が続く。
 大野由香教授は「3年間の学費と就職後の待遇を考えると、保護者も『同じ国家資格を取るなら、他の職種がいい』と考える」。「歯科衛生士が担う口腔ケアの重要性がようやく認識され始めたのに…」と歯がゆい思いを口にする。

 ■2~3年が勝負
  こうした中、県歯科医師会は昨春、各診療所が目安とする歯科衛生士の初任給を、前年の額から一気に5千円アップ。産休、育休の取り組みも進めるよう呼び掛けた。
 野村会長は「診療所の経営は苦しくなるが、待遇を改善しないと、少子化でなり手がいなくなる。この2~3年が勝負」と話す。
 県は本年度、人口の少ない郡部の歯科衛生士を増やすため、郡部で働く意思のある学生向けの奨学金を創設。県歯科医師会と高知学園短大は中高生向けの仕事体験など、魅力を伝える活動にも力を入れる。
 4月。同短大では歯科衛生専攻の2年生が実習を行っていた。ピンクの粉末をペースト状に練り、2人一組で歯型を取り合う。「あー、失敗。もう一回」。真剣な表情だ。
 祖父の病気をきっかけに歯科に関心を持った学生(19)は、診療所実習で歯科衛生士の姿を見て、思いを新たにした。
 「患者さんと仲が良く、治療とは関係のない話もしていて、予防歯科には信頼関係が大事だと感じた。私も何でも相談してもらえる衛生士になりたい」
 口腔ケアは食べる楽しみを支え、全身の健康を守る。若者が長く働ける環境をどうつくるか。模索は続く。

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