介護施設で働く勤続10年以上の看護職員、2019年度に処遇改善すべき―日看協

MedWatch 2018年5月10日

 訪問看護提供体制の充実を図るため、来年度(2019年度)予算で(1)訪問看護推進総合計画の策定(2)介護施設等で働く看護職の処遇改善(3)介護施設や在宅領域に従事する看護師向けのリスクマネジメント研修の充実―などを実施すべきである。2019年度には介護職員について「月8万円程度」の処遇改善が行われるが、介護施設で働く勤続10年以上の看護職員についても処遇改善をすべきである―。
 日本看護協会は4月27日、厚生労働省老健局の濱谷浩樹局長に宛てて、こういった要望を行いました(日看協のサイトはこちら)。

2025年には15万人の訪問看護従事者が必要だが、2016年度は5万人に届かない状況
 2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者となるため、今後、医療・介護ニーズが急速に増加していきます。こうしたニーズに適切に対応するために、病院・病床の機能分化・連携の強化、地域包括ケアシステムの構築が重要課題に据えられています。
 後者の地域包括ケアシステムは、医療・介護ニーズが高くなっても、可能な限り住み慣れた地域での生活を続けられるように、▼住まい▼医療▼介護▼予防▼生活支援―を、地域の実情に応じて総合的・一体的に提供する仕組みで、中でも「在宅医療」と「在宅介護」の連携が非常に重要な要素となります。この点、訪問看護は、医療保険からも介護保険からも給付される、地域包括ケアシステムの「要」となるサービスであり、さらなる訪問看護提供体制の拡充が期待されています。

こうした状況を踏まえて日看協は、次の3点を来年度(2019年度)予算で実施するよう厚労省に求めています。
(1)訪問看護提供体制の推進(訪問看護推進総合計画の策定)
(2)介護施設等で働く看護職員の処遇改善
(3)介護施設・在宅領域における利用者の安全・尊厳を守るための体制整備

 まず(1)では、地域の訪問看護提供体制のさらなる整備を後押しするために「訪問看護推進総合計画」を策定すべきと要望しました。2025年には「15万人程度の訪問看護に従事する看護職員が必要」と考えられていますが、日本訪問看護財団などの試算によれば供給数は常勤換算で6万5000人強にとどまる見込みです。試算は2004年に行われたもので、やや古い感もありますが、2016年12月時点で訪問看護に従事する看護師は全体の3%弱の4万6977人に過ぎず、「必要数に比べて、供給数が不足している」状況は否定できません(関連記事はこちら)。また、依然として「従業者数5人未満の小規模な訪問看護ステーション」は半数近くあり、規模の拡大には、やはり訪問看護に従事する看護職員の拡充が求められます(関連記事はこちら)。
2025年には15万人の訪問看護従事者が必要となるが、日本訪問看護財団などの試算では供給数は6万5333人にとどまるとされている
 都道府県等が作成する医療計画や介護保険事業(支援)計画の中でも、地域の訪問看護ステーションの整備目標などが記載されますが(関連記事はこちら)、日看協は国で「訪問看護推進総合計画」を策定し、▼訪問看護に従事する看護職員の倍増に向けた目標値の設定と、具体策▼訪問看護ステーションの大規模化に向けた支援の拡充や、再編・統合の検討―などを行うよう強く要望しています。
 また(2)は、看護職員の処遇改善によって「介護施設等で働く看護職員の確保」を求めるものです。介護職員については、介護報酬の【介護職員処遇改善加算】によって、賃金増等が行われていますが、看護職員は加算の対象になっていません。こうした点も影響してか、介護施設等で働く看護職員の離職率(2014年度、特別養護老人ホームで21.5%)は、病院の看護職員(2014年度、10.8%)に比べて2倍となっており、介護職員の離職率(2014年度、特別養護老人ホームで15.4%)よりも高い状況です。
 介護施設で働く看護師の給与水準は、病院の看護師に比べて低く(向かって右のグラフ)、これも影響してか離職率が高い(向かって左の表)
 2019年度には、介護職員について「月8万円程度のさらなる処遇改善」を行うことが決まっており、日看協では「介護施設等で働く、勤続10年以上の看護職員」についても処遇う改善等を行うよう求めています(関連記事はこちら)。
 さらに(3)では、▼介護施設・在宅領域における医療安全管理体制・医療事故の実態を把握し、再発防止につなげる仕組みの検討▼介護施設・在宅領域に従事する看護職員へのリスクマネジメント研修の充実―を行うよう求めています。

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