2021年度介護報酬改定内容を了承、訪問看護では基本報酬の引き上げや、看護体制強化加算の見直しなど—社保審・介護給付費分科会(1)

Gemmed 2021.1.18.

 1月18日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会で、2021年度の介護報酬改定に向けた「単位数」等の見直し案(告示改正案)が了承されました。
 近く改正案についてパブリックコメントを1か月ほどかけて募集し、その後に交付・通知等発出がなされ、詳細が明らかになります。
 2021年度介護報酬改定の概要(介護給付費分科会 210118)
 改正内容は膨大なため、何回かに分けて見ていきます。本稿では「訪問看護」に焦点を合わせます(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。

目次
 1 介護現場の状況を踏まえて、基本報酬を引き上げ
 2 看護体制強化加算、要件と単位数とがリンクする体系に見直し
 3 退院当日の訪問看護、「主治医が必要性を認めた場合」も実施可能に
 4 理学療法士等による訪問看護の単数を引き下げ、要支援者への3回以上訪問では半減

介護現場の状況を踏まえて、基本報酬を引き上げ
 今回改定については、昨年(2020年)12月17日の田村憲久厚生労働大臣・麻生太郎財務大臣らの折衝によって、「介護職員の人材確保・処遇改善にも配慮しつつ、物価動向による物件費への影響など介護事業者の経営を巡る状況等を踏まえて、全体でプラス0.70%の報酬改定を行う」こととなりました。この「0.70%」のうち「0.05%分」については、新型コロナウイルス感染症に対応するためのコスト増を考慮して、2021年度前半(2021年4-9月)に特例的な評価を行うこととされました。

来年度(2021年度)介護報酬改定のイメージ(Gem Med編集部で作成)
 こうした方針に沿って、次のように基本報酬が引き上げられます。さらに、2021年度前半には、ここに「0.1%の基本報酬上乗せ」が行われます。なお、後述するようにリハビリ専門職による訪問看護については報酬の引き下げが行われています。

●指定訪問看護ステーションの場合
【訪問看護】(要介護者)
▽20分未満:(現行)312単位 → (改定後)313単位
▽30分未満:(現行)469単位 → (改定後)470単位
▽30分以上1時間未満:(現行)819単位 → (改定後)821単位
▽1時間以上1時間30分未満:(現行)1122単位 → (改定後)1125単位
▽理学療法士、作業療法士または言語聴覚士の場合:(現行)297単位 → (改定後)293単位(1日3回以上の場合には10%減算)

【介護予防訪問看護】(要支援者)
▽20分未満:(現行)301単位 → (改定後)302単位
▽30分未満:(現行)449単位 → (改定後)450単位
▽30分以上1時間未満:(現行)790単位 → (改定後)792単位
▽1時間以上1時間30分未満:(現行)1084単位 → (改定後)1087単位
▽理学療法士、作業療法士または言語聴覚士の場合:(現行)287単位 → (改定後)283単位(1日3回以上の場合には50%減算)

○病院または診療所の場合
【訪問看護】(要介護者)
▽20分未満:(現行)264単位 → (改定後)265単位
▽30分未満:(現行)397単位 → (改定後)398単位
▽30分以上1時間未満:(現行)571単位 → (改定後)573単位
▽1時間以上1時間30分未満:(現行)839単位 → (改定後)842単位

【介護予防訪問看護】(要支援者)
▽20分未満:(現行)254単位 → (改定後)255単位
▽30分未満:(現行)380単位 → (改定後)381単位
▽30分以上1時間未満:(現行)550単位 → (改定後)552単位
▽1時間以上1時間30分未満:(現行)810単位 → (改定後)812単位

〇定期巡回・随時対応訪問 介護看護事業所と連携する場合(1か月につき)
(現行)2945単位 → (改定後)2954単位

看護体制強化加算、要件と単位数とがリンクする体系に見直し
 訪問看護については、介護給付費分科会において、一部に「スタッフのほとんどが理学療法士等のリハビリ専門職である訪問看護ステーション」(中には「訪問リハビリステーション」を名乗る事業所まである)が存在し、訪問看護に求められる重度者対応・医療的ケア・夜間や24時間の対応をほとんど行わず、「軽度者(主に要支援者)に対して日中にリハビリを提供している」点が問題視されました。当初は「人員配置基準に看護師6割要件を求めてはどうか」との方向で議論が進みましたが、「看護師確保ができない事業所では介護保険指定を受けられなくなり、結果的に利用者が不利益を被ることになってしまう」ことから、【看護体制強化加算】の要件に「看護師6割要件」を設ける方向に転換されました。
 あわせて【看護体制強化加算】については、実績要件(とりわけ「【特別管理加算】(在宅のがん患者や気管切開患者、重度の褥瘡患者などへの対応を行うステーションを評価する加算)の算定割合30%を6か月継続しなければならない」との要件)が厳しすぎるとの指摘を踏まえて、次のような見直しが行われます。

▽(介護予防)訪問看護の提供にあたる従業者の総数に占める看護職員の割合が6割以上であることとする(2年間の経過措置を設け、2023年4月1日から施行される)
▽「算定日が属する月の前6か月間において、利用者総数のうち、【特別管理加算】を算定した利用者の占める割合」要件について、現在の「100分の30以上」から「100分の20以上」に緩和する

 要件の一部緩和が行われること、また介護予防訪問看護では【ターミナルケア加算】要件(算定月前6か月間において、【ターミナルケア加算】算定者が1人または5人以上であること)が課せられてない点を踏まえて、次のように加算単位数の引き下げが行われます。「要件が緩くなるにつれて加算単位数が小さくなる」、分かりやすい体系になったと言えるでしょう。

【看護体制強化加算(I)】
(現行)600単位/月 → (改定後)550単位/月
◆要件
▽訪問看護スタッフの6割以上が看護職員(新設)
▽算定月前6か月間における【緊急時訪問看護加算】(利用者・家族から電話で看護に関する意見を求められた場合の体制確保を評価)の算定割合が50%以上(変更なし)
▽算定月前6か月間における【特別管理加算】の算定割合が20%以上(緩和)
▽算定月前12か月間における【ターミナルケア加算】の算定利用者が5人以上(変更なし)

【看護体制強化加算(II)】
(現行)300単位/月 → (改定後)200単位/月
◆要件
▽訪問看護スタッフの6割以上が看護職員(新設)
▽算定月前6か月間における【緊急時訪問看護加算】(利用者・家族から電話で看護に関する意見を求められた場合の体制確保を評価)の算定割合が50%以上(変更なし)
▽算定月前6か月間における【特別管理加算】の算定割合が20%以上(緩和)
▽算定月前12か月間における【ターミナルケア加算】の算定利用者が1人以上(変更なし)

【介護予防訪問看護の場合の看護体制強化化加算】
(現行)300単位/月 → (改定後)100単位/月
◆要件
▽訪問看護スタッフの6割以上が看護職員(新設)
▽算定月前6か月間における【緊急時訪問看護加算】(利用者・家族から電話で看護に関する意見を求められた場合の体制確保を評価)の算定割合が50%以上(変更なし)
▽算定月前6か月間における【特別管理加算】の算定割合が20%以上(緩和)

 なお、2023年3月末日時点で【看護体制強化加算】を算定している事業所で、「急な看護職員の退職等により看護職員6割以上要件を満たせなくなった」場合には、指定権者(都道府県知事など)に定期的に「採用計画」を提出することで、「採用がなされるまでの間は同要件の適用を猶予する」規定も設けられています。
 要件の詳細などは、2月中旬発出予定の解釈通知やQ&Aなどを待つ必要があります。

退院当日の訪問看護、「主治医が必要性を認めた場合」も実施可能に
 また2021年度改定では、主治医が必要性を認めた場合には、「退院当日の訪問看護」が実施可能となります(介護報酬請求が可能となる)。
 現在、次の状態にある利用者に限っては、退院・退所当日にも介護保険の訪問看護提供が可能です。
▼「在宅悪性腫瘍等患者指導管理」もしくは「在宅気管切開患者指導管理」を受けている状態、また「気管カニューレ」もしくは「留置カテーテル」を使用している状態
▼「在宅自己腹膜灌流指導管理」「在宅血液透析指導管理」「在宅酸素療法指導管理」「在宅中心静脈栄養法指導管理」「在宅成分栄養経管栄養法指導管理」「在宅自己導尿指導管理」「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理」「在宅自己疼痛管理指導管理」「在宅肺高血圧症患者指導管理」のいずれかを受けている状態
▼「人工肛門」または「人工膀胱」を設置している状態
▼真皮を超える褥瘡の状態
▼点滴注射を週3日以上行う必要があると認められた状態(在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者)

 しかし、訪問看護現場からは「これらの状態以外にも退院当日・退所当日に状態が十分に回復しておらず、訪問看護が必要な利用者もいる」「退院当日の訪問看護が適わないために、退院が先送りになっている可能性もある」との声が寄せられました。また、介護報酬の算定ができないにもかかわらず、退院等当日の訪問看護が実施されているケース(ステーションの持ち出し、あるいは全額利用者負担となっている)もあります。
 状況を踏まえて、「主治の医師が必要と認めた利用者に訪問看護費を算定できる」ことが通知の中で明確にされます。また、【短期入所療養介護サービス】の終了日(退所・退院日)も同様の取り扱いとなります。詳細は、やはり解釈通知等を待つ必要があります。
 このほか「中山間地域等において、【特例居宅介護サービス費】等の対象地域と【特別地域加算】の対象地域について、自治体からの申請を踏まえて、それぞれ分けて指定を行う」といった見直しも行われます。中山間地域等で介護人材確保がとりわけ困難な状況を踏まえたもので、訪問看護以外にも、訪問介護や通所介護など多くのサービスがこの見直しの対象となります。
 また【サービス提供体制強化加算】について要件の見直しが行われ、▼(イ)勤続7年以上の者が30%以上:1回当たり6単位▼(ロ)勤続3年以上の者が30%以上:1回当たり3単位—とメリハリのついた単位数設定となります。ベテランスタッフによる、「より質の高いサービス提供」を目指すもので、サービス提供体制強化加算については他のサービスについても見直しが行われます。

理学療法士等による訪問看護の単数を引き下げ、要支援者への3回以上訪問では半減
 また上述のとおり「理学療法士等による訪問看護」については、基本報酬の引き下げが行われます。その背景も、上述のとおり一部の訪問看護ステーションが、事実上の「訪問リハビリステーション」となり、重度者対応を行わず(軽度者をメインターゲットに据える)、24時間対応を行ってない(日中のみのサービス提供に特化)という状況を踏まえたものです。

【理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による訪問看護】(1回につき)
(現行)297単位 → (改定後)293単位

【理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による介護予防訪問看護】(1回につき)
(現行)287単位 → (改定後)283単位

【1日に2回を超えて(つまり3回以上)、介護予防訪問看護を行った場合の評価】
(現行)1回につき100分の90(10%減算) → (改定後)1回につき100分の50(50%減算)

また、「利用開始日の属する月から12か月超の利用者に介護予防訪問看護を行った場合」には、新たに「1回につき5単位の減算」規定が設けられます。長期間、要支援者に対する「理学療法士等による訪問看護」を是正する狙いがあると言えます。
 さらに、▼「理学療法士等が行う訪問看護」では、実施した内容を訪問看護報告書に添付することを求める▼「理学療法士等が行う訪問看護」の対象について、訪問リハビリテーションと同様に「通所リハビリテーションのみでは家屋内におけるADLの自立が困難である場合」を追加する—との要件追加も行われます。
 こうした見直しは、「理学療法士等による訪問看護」を否定するものではありません。医師が「この利用者には看護とともに、リハビリが必要である」と判断して訪問看護指示を行った場合には、理学療法士等による訪問看護は認められています。
 しかし、上述のとおり「一部の、事実上の訪問リハビリステーション」の問題行動ゆえに、訪問看護の一環としてなされている「理学療法士等による訪問看護」にまで悪影響が出てしまっており、非常に由々しき問題です。一部の事業者が制度の趣旨に反する行動をとれば、事業者全体が、いわば「割を食う」こととなります。業界による「自浄作用」にも期待が集まります。
 なお、(介護予防)訪問リハビリの基本報酬が、現行の292単位から307単位に引き上げられており、訪問看護よりも14から24単位高くなっています。この背景には、事実上の「訪問リハビリステーション」を行うよりも、「訪問リハビリテーション」を実施する方向へ誘導するものと思われます。
 この点、介護給付費分科会では「医療機関や介護老人保健施設からの訪問リハビリテーション以外にも、正面から『訪問リハビリステーション』設置を認めるべき」との指摘が複数出ています。利用者を忘れた「専門職種間の領域の奪い合い」はそろそろやめ、「訪問リハビリステーション」を設置することの是非を正面から考える時期に来ていると言えるでしょう。

 

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