通所・短期入所、小多機・看多機、訪問介護員と看護師等の同行訪問で、介護報酬の臨時特例を明確化—厚労省
新型コロナウイルス感染症対応で通所系・短期入所系サービスについて介護報酬の臨時特例が設けられたが、感染対策を行う全事業所が対象となり、また「利用者の同意」が大前提となる―。
小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護における【訪問体制強化加算】は、新型コロナウイルス感染症の影響で訪問回数が減少した場合でも、継続算定可能である―。
新型コロナウイルス感染症に対応するために、訪問介護員が、看護師等の専門職の協力を得て、同行訪問を行った場合には、訪問介護費について通常の2倍の報酬を算定できる―。
厚生労働省は6月15日に事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて(第13報)」を示し、こうした点を明らかにしました(厚労省のサイトはこちら)。
目次
1 通所・短期入所の新型コロナ対応の報酬特例、「利用者の同意」が大前提
2 小多機・看多機、新型コロナで訪問回数が減少しても【訪問体制強化加算】の継続算定可能
3 新型コロナ対応で訪問介護員と看護師等が同行訪問した場合、2倍の訪問介護費を算定可
通所・短期入所の新型コロナ対応の報酬特例、「利用者の同意」が大前提
新型コロナウイルス感染症にかかる緊急事態宣言は全都道府県で解除されていますが、東京都などでは依然として毎日2桁の新規感染者が発生しており、第2波・第3波への備え(感染拡大防止、医療提供体制確保など)が重要なことに変わりはありません。
介護事業所・施設では、「スタッフが新型コロナウイルスに感染し、あるいは濃厚接触者と判断され出勤ができず、人員配置基準を満たすことが難しくなる。介護報酬はどうなるのか」「訪問サービスにおいて、新型コロナウイルス感染を防止するために必要最低限のサービス提供とした場合、介護報酬で定められた時間を満たせなくなってしまうが、介護報酬はどうなるのか」「介護サービス提供にあたり、多職種が会議等を行うことが求められているが、新型コロナウイルス感染防止のために会議開催は控えたい。どのように考えればよいか」などの様々な疑問が生じています。
厚生労働省は順次、臨時措置・特例措置を設けて、こうした点に対応してきています(関連記事はこちらとこちら)。今般の臨時措置では、まず通所系サービス・短期入所サービスにおける臨時特例措置に関する介護現場の疑問に答えています。
「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて(第12報)」では、利用者からの事前同意が得られた場合には「新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応を適切に評価する観点から、6月サービス提供分より『サービス提供回数に応じて、一部のサービスについて上位の報酬区分算定を可能できる』」という臨時特例が設定されました。
この臨時特例について、まず▼都道府県等から要請を受けて休業した事業所▼利用者・職員に感染者が発生した事業所▼その他の利用者数の制限や営業時間の短縮等の臨時的な営業を行っている事業所―のみならず、「感染防止対策を徹底してサービスを提供している全ての通所系・短期入所系サービス事業所が対象である」ことが明確にされました。
ところで、この臨時特例は、利用者視点に立てば「自身が実際に受けたサービスよりも、高い利用料(一部負担)を支払う」(本来は受けていないサービスの利用料を支払う)ことを意味します。このため、「利用者からの事前の同意」を得ることが必須となります(同意なく、本来受けていないサービスの利用料(一部負担)を徴収することは認められない)。この点について厚労省は次のような考えを明らかにしました。
▽「サービス提供前に説明を行った上で同意を得る」ことが望ましいが、サービス提供前に同意を得ていない場合でも「給付費請求前までに同意を得る」ことができれば、臨時特例を適用してよい(例えば、6月8日・29日にサービス提供を行った場合に、同月の初回サービス提供日である「6月8日以前」に同意を得る必要まではない)
▽利用者の同意取得は「臨時特例で一部高い介護報酬の算定を行う事業所」「ケアマネ事業所(居宅介護支援事業所)」のいずれが行ってもよい
▽臨時特例を適応しても区分支給限度額(1か月に一部負担のみで利用可能な介護サービス量の上限)は変わらないことから、利用者への説明にあたっては「臨時特例で一部高い介護報酬の算定を行う事業所とケアマネ事業所とが連携し、他サービスの給付状況を確認しておく」ことが必要である
▽必ずしも「書面(署名捺印)による同意」を得る必要はないが、▼説明者の氏名▼説明内容▼説明・同意を得た日時▼同意した者の氏名―について記録を残しておくことが必要である
▽臨時特例を適用する場合には、ケアプラン(居宅サービス計画)に係るサービス内容やサービスコード等の記載見直しが必要となるが、これらはサービス提供後に行ってもよい
さらに、今回、次のような点も明らかにされました。
▽臨時特例を適用した場合でも、事業所規模による区分を決定するための1か月当たりの平均利用延人員数を算定するにあたっては「実際に提供したサービス時間の報酬区分」に基づく(臨時特例の適用後の区分ではない)
▽特例の終了時期は、現時点では未定(当面、一部サービスについて上位区分の報酬算定が可能)であり、訴求事項は通常と同じく「2年」である
小多機・看多機、新型コロナで訪問回数が減少しても【訪問体制強化加算】の継続算定可能
ところで、(看護)小規模多機能型居宅介護においては、訪問サービスを提供する常勤の従業者(訪問看護サービスを除く)を2名以上配置し、訪問サービスの提供回数が1か月当たり延べ200回を超える事業所で【訪問体制強化加算】(1か月につき1000単位)を算定可能となります(看多機では2018年度改定で新設)。(看護)小規模多機能型居宅介護は「通い」「訪問」「泊り」の3サービスを一体的に行う介護保険サービスで、地域包括ケアシステムの中で非常に重要な役割を果たしており、さらに訪問サービスを強化することで「在宅限界を高める」ことを目指すものです。
この点、新型コロナウイルス感染症により、利用者サイドから「感染防止のために訪問サービスを控えてほしい」との要望が出され、上記の要件(延べ訪問回数が1か月当たり200回以上)を満たせないケースが出てきます。今般の事務連絡では次のような考えが示されました。
▽新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前から【訪問体制強化加算】を算定していた事業所では、訪問延べ回数要件を満たせなくなった場合でも「引き続き加算を算定する」ことを可能とする(臨時特例)
▽新たに【訪問体制強化加算】を算定する事業所では、通常どおり訪問延べ回数要件(1か月当たり200回以上)を満たさなければならない(臨時特例による加算取得は認められない)
新型コロナ対応で訪問介護員と看護師等が同行訪問した場合、2倍の訪問介護費を算定可
また、1人の利用者に対し、同時に2人の訪問介護員等が訪問介護を行う場合には2倍の単位数(所定単位数の100分の200相当)を算定できます。例えばとても大柄な利用者に対し入浴介助等の重介護を行う場合や、歩行困難な利用者がエレベーターのない建物の2階以上に居住し、外出の介助を行う場合、利用者に暴力行為等がある場合などです。
ところで、訪問介護事業所が看護師等(▼保健師▼看護師▼准看護師(訪問介護員等ではない者を含む)―の専門職の協力を得て、同行訪問を行うことは、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために非常に有用です。
このため厚労省は、利用者・その家族等から事前の同意を得た場合には、訪問介護員と看護師等の専門職による同行訪問について「2人の訪問介護員等による訪問を行った場合と同様に、100分の200に相当する訪問介護費の単位数を算定できる」ことを明確にしました。
この場合、訪問介護事業所が介護報酬(訪問介護費)を算定し、看護師等の専門職に係る人件費や交通費は、訪問介護事業所が得た介護報酬を活用して支払うことになります(金額は訪問看護事業所と看護師等の合議)
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週1回1時間から働ける柔軟で明るい職場で、子育てママや社会人学生も在籍。
すぐに考えていないけれど、少しでも御関心があれば、とりあえず雑談させて下さいませ。