【鳥取】医療費払えず受診遅れ 県内で昨年3人亡くなる

朝日新聞 2019年9月14日

 経済的な理由により医療機関での受診が遅れ死亡した人が、昨年1年間で県内で3人(3事例)いたことが分かった。県内の病院などでつくる鳥取県民主医療機関連合会(県民医連)が発表した。「保険料を払えない」「医療費の自己負担ができない」などの理由で、早期の段階で医療機関にかかることができず、病気が悪化してしまう人がいる。
 調査は全日本民主医療機関連合会が、加盟する全国の病院・診療所636カ所を対象に実施。保険料の滞納などで無保険あるいは、医療機関の窓口でいったんは医療費を全額払うことになる「資格証明書」や通常の保険証より有効期間が短い「短期保険証」しか持っていなかったり、正規の保険証を持っていても経済的理由で受診を控えたりした結果、死亡に至った事例を集計した。
 県内の亡くなった3人はいずれも60代の男性で、3人とも国民健康保険(国保)の短期保険証を所持していた。
 このうちの1人の男性は、仕事中に倒れ病院へ運ばれたが、その翌日に急性心筋梗塞(こうそく)で亡くなった。長年、正社員として務めていたというが、妻と死別後は体調不良のためアルバイトで生計を立てていた。月収約8万円の中、子どもの学資ローンの負債などもあり、保険料を滞納。短期保険証も期限切れの状態だった。倒れる数日前から胸部に違和感を感じていたというが、医療機関への受診はしていなかった。
 県民医連によると、受診抑制から手遅れとなり死亡に至るケースは増加傾向にあるという。2017年には6人(6事例)を確認しており、これは全国でも東京に次いで2番目に多かった。
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 こうした手遅れ死亡事例が、国保加入者に比較的多く見られることから県民医連は今年2月、県社会保障推進協議会と共同で、県民医連の加盟病院などの国保加入患者や鳥取市内の公営住宅入居者など約2500人を対象にアンケートを実施。250人から回答を得た。
 国保料の負担感について「高いと感じる」と答えた人は半数を超える141人(56・4%)おり、お金を理由に体調不良をきたしても受診を控えた経験がある人は52人(21%)、治療を中断させたことがある人は20人(8%)いた。
 鳥取民主商工会の調べによると、鳥取市在住の40歳未満の夫婦と子ども2人の4人世帯で年収300万円の場合、国保では年間で28万7600円と、年収の10%近い保険料がかかる。一方、同様の世帯条件でも、中小企業の会社員らが加入する被用者保険「協会けんぽ」なら、15万6千円と年収の5%程度の負担で済むという。
 県民医連の木下直子事務局次長は、国保料の負担が手遅れ死亡事例の一つの要因になっている可能性を指摘。「社会的に作られた悔しい死。健康格差の拡大を食い止めるためにも国民健康保険制度を改めて見直す必要がある」と訴える。

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