訪問歯科医は「食べていい」と言ったが、病院は「禁止」…胃ろうになって亡くなった男性

読売新聞 2019/9/12

五島朋幸 食べること 生きること~歯医者と地域と食支援
 浅川良治さん(92、仮名)は食事中むせ込んでいました。娘さんが在宅主治医に相談したところ、歯科医に診てもらうよう指示がありました。ケアマネジャーを通して、うちの診療室に訪問の依頼がありました。
 浅川さんは7年前に脳梗塞を発症。目立ったまひなどはないようでしたが、脳梗塞発症後から食事中のむせが出ており、最近少しひどくなったとのことでした。1回の食事中に2、3回むせますが、食事はほぼ完食されていたと言います。

口から食べていいと言ったが……
 僕は話を聞いた後、普段食べているものを娘さんに出してもらい、食べている様子を観察しました。ゴクッと割と大きな音をさせながら食べていました。何口か食べた後、のどに何かたまっていたのか軽いせき払いをしました。娘さんは「こうなっちゃうんです」と言いました。
 一通り食べた後、ご本人と娘さんに、こう言いました。 
 「食べたものがのどにたまってしまっています。おそらく脳梗塞の後遺症でしょう。ただ、飲み込みに障害が出ると、食べものが一時的にのどにたまることはよくあります。程度問題で、浅川さんは咳払いで吐き出す力があるし、ちゃんと飲み込めているので問題はありません。このまま口から食べて大丈夫です。今後、何かあれば連絡してください」

病院の検査の結果、胃ろうになった
 僕が浅川さんと会ったのはこの1回です。実は後日談があります。娘さんは僕の説明に納得がいかなかったらしく、病院に検査入院をさせたそうです。そこで、食べ物や飲み物を飲んでいる様子をエックス線の動画で撮影する検査をしました。その結果、食べ物や飲み物が一部のどにたまっていることがわかり、ほどなく飲食禁止となり、胃ろうになったそうです。
 訪問歯科医は、「食べていいよ」と言い、病院では、検査の結果口から食べることを禁止したわけです。エックス線を使わない僕の判断は間違っていたのでしょうか。
 僕は20年以上訪問歯科をしていますが、この間に検査機器はどんどん進歩してきました。最近は訪問歯科でも、内視鏡をのどの中に入れて、飲み込みの機能を検査するようになってきています。客観的な検査の重みが増してきているようです。正確な検査ができるようになるのは、進歩なのですが、医療者として大切なのはその結果をどう考えるかだと思います。

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