在宅患者ら電源確保に奔走 全国に18万人、支援模索 「電力再考」

共同通信  2019年8月27日

 昨年9月の北海道地震で起きた全域停電は解消の見通しが立たず、人工呼吸器などの医療機器を在宅で使用する患者や家族は電源確保に奔走した。国は在宅医療を推進しており、2017年の患者は全国で1日当たり推計18万100人とされ、過去最多を更新。災害時に患者をどう支えるか、模索が始まっている。
 激しい揺れの後、暗闇に響くアラーム音が人工呼吸器の電源が内部バッテリーに切り替わったことを知らせていた。使える時間は3時間。進行性の脊髄性筋萎縮症で24時間人工呼吸器を使用する札幌市白石区の佐藤(さとう)きみよさん(56)の命懸けの戦いが始まった。
 「呼吸が止まってしまう」。旅行時に使うための予備バッテリーは3台あったが、最後にいつ充電したかは覚えていない。車のインバーターから充電しようにも、ガソリンは半分以下しか残っていなかった。
 かかりつけの医師に「病院を当たって」と言われ、過去に入院した病院に問い合わせると「今入院している患者の電源確保で精いっぱい」と受け入れを拒否された。「自分の命は自分で守らないと」。介助者と行き着いた先は非常用電源を備えた近くの区役所。ようやく電源を確保できたが、加湿器を長時間使えなかった影響で乾燥した気管から出血した。
 充電後は自宅に戻り、窓から垂らして車のインバーターに接続した延長コードに機器をつなげ、眠れない夜を過ごした。「ガソリンの残量が気がかりだった。冬だったらどうなっていたのか。災害時に電源をどこで確保できるのか、情報を開示してほしい」と訴える。
 避難所となった札幌市内の小中学校や区の体育館はほぼ全てが停電。避難所で使える発電機は計16台しかない上、活用されることはなかった。市は今年8月、避難所の基本計画を改定、発電機約300台を準備し、全ての基幹避難所に配備する予定だ。在宅医療を受ける患者を対象に発電機や蓄電池などの購入も補助する。
 「地域住民に在宅患者の存在が認知されていないことを思い知らされた」と話すのは市内を中心に約190人の患者に訪問診療を行う医療法人稲生会(とうせいかい)の土畠智幸(どばた・ともゆき)理事長。
 停電の復旧は地区ごとに大きな差があった。「停電が解消した近所の住民や発電機を持っている家庭など、病院や避難所に行かなくても身近な場所で電源を確保できるような共助が機能する地域のあり方を考える必要がある」と指摘した。

 ※在宅医療
 通院が困難な要介護の高齢者や難病患者などを対象に在宅のまま行われる医療。医師が定期的に訪問する「訪問診療」、病状が急変した際など不定期の「往診」などがある。長期入院が医療費増大の要因となる中、国は在宅医療を推進する方針を掲げる。訪問診療を受ける患者の大半は75歳以上の高齢者だが、小児や成人の数も増加傾向にある。

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