画像診断機器を無料開放。金儲け主義の病院とは手を組まない-医療法人弘仁会板倉病院院長の梶原崇弘氏、地域連携室主任の増谷征史氏に聞く◆Vol.2

2019年7月23日 (火)配信m3.com地域版
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 船橋市南部地域の基幹病院として機能している医療法人弘仁会 板倉病院では、医療従事者・ケアマネージャーとの勉強会や地域医療連携システムなど、さまざまな地域連携への取り組みを行っている。その取り組みについて、医療法人弘仁会板倉病院院長の梶原崇弘氏と、同院在宅支援部主任・地域連携室主任の増谷征史氏に話を聞いた。(2019年5月13日インタビュー、計2回連載の2回目)

左:医療法人弘仁会 板倉病院 院長 梶原崇弘氏、右:同院 在宅支援部/地域連携室主任の増谷征史氏
──2017年に開設した画像検査センターを連携先クリニックなどに無料で開放しているとのことですが、その仕組みについて教えてください。

梶原 まず、現在の若手医師は大学時代、そして研修医時代とCTやMRIを当り前のように活用して診察を行ってきており、聴診器のように不可欠のものと考えています。また、医療情報が豊富に入手できる今日、患者が画像検査を当り前のように希望するケースも少なくないでしょう。

 当院は2017年に画像検査センターを開設すると同時に、地域医療連携サービス「カルナコネクト」を導入しました。このシステムは当院と近隣のクリニックをクラウド上でつなぎ、24時間365日、オンライン上で画像診断機器の空き状況の確認と検査予約ができます。クリニック側は、当院からIDとパスワードを受け取るだけで、特別なシステムを導入する必要はありません。

 そして検査結果については、誤診や医療訴訟のリスクを軽減するために、放射線診断専門医の読影レポートをつけて、検査翌日までにオンライン上で送信しています。

──読影レポートまでつけて、無料ということですか。

梶原 そうです、読影レポートまでつけて無料です。例えば、新規開院されたクリニック、あるいは親御さんのクリニックを継がれた場合などでも、設備としてはレントゲンしかない場合がほとんどでしょう。でも、医師にとってはレントゲンだけでは、正しい診断ができるのか怖さもあると思います。そんなとき、当院の設備を使っていただければ安心して診断にあたることができるのではないかと考えました。


医療法人弘仁会 板倉病院 院長 医学博士 梶原崇弘氏
──地域のクリニックの医師のためということですね。その他に無料開放された意図はありますか。

梶原 当院でも、CTやMRIが稼働していない時間は当然ありますし、機器が止まっている時間は無駄な時間になります。そこで、地域のクリニックに使っていただくことで、無駄な時間をなくしたいと考えました。

 クリニックの医師は、自分のパソコンからCTやMRIの検査の予約ができます。近所なら「ちょっと板倉病院に行ってCTを撮ってきて」ですむわけです。そして、自院にいながら検査結果を画像だけでなく読影レポートつきで見ることができますから、医師の方はあたかも自院のインフラのように当院のCTやMRIを使うことができるのです。

 当院としては、CTやMRIの稼働率が上がるというメリットがあります。それに、検査などで当院に親しんでもらえれば、入院の際は自然と当院を選択してくれると思います。

増谷 現在、当院のシステムを利用されているクリニックは近隣を中心に20カ所程度です。中には仕組みを知って多少遠くても連携させてほしいといわれる医師もいます。

梶原 これは在宅診療の連携でも同じですが、当院は心無いクリニックには手を貸したくないと考えています。ですので、必ず面接をさせていただき、連携させていただくかを判断しています。また、連携後も、患者の評判が悪い、あるいは金もうけ主義などとわかった際には、連携を止めています。患者さんの評判が良くない場合、当院の評判にも係わってきますので、そこは厳しく対応しています。

医療法人弘仁会 板倉病院  在宅支援部主任・地域連携室主任 増谷征史氏
──地域の医療連携として、今後はどのような取り組みを進めるのですか。

梶原 地域のクリニックとの連携に加えて、薬薬連携、病院の薬局と地域の薬局との連携を強化していきたいと考えて、取り組みを始めようとしています。

 また、2019年は「地域が病院をつくり、病院が地域をつくる」をミッションに掲げて活動しています。多少、病院の域は超えますが、市民向けの勉強会などはずっと開催していて、よくいらっしゃる方がいる一方で、無関心層は来ません。その層にいかに伝えていけるかを考えています。今後、病院で開催する子供食堂や、地域の方に興味を持ってもらえる活動を進めていきます。まずは地元の皆さんに自分たちの病院という意識を持っていただければ、クレーマーなどにも地域の自浄作用が働くかもしれませんし、初めて病院に行く不安や心配も軽減されると思います。そのためには、病気になって意識する場所ではなく、日頃から地域に開放し、馴染まれた場所になる努力が必要です。楽しい病院・元気な病院といわれるようになればいいですね。

増谷 地域連携室としては、在院日数を短くして行けるような取り組みをさらに続けて行こうと考えています。ケアマネージャーや各施設の方と、顔が見える関係を超えた、人柄が見える関係を作ることで、患者さんを支援しやすい環境を作り、この地域に住む患者さん、当院を利用してくださる患者さんの幸せにつなげていきたいですね。

梶原 船橋市南部医療圏の医療、介護の質をあげて、当院を中心とした連携をより強化していきたいですね。クリニックと連携した屋根のない総合病院を地域に展開することで患者さんの安心を確保することで、あそこで医療を受けたいというかたちが作れればいいと考えています。

◆梶原 崇弘(かじわら・たかひろ)氏
2000年、日本大学医学部卒業。日本外科学会専門医。国立がん研究センター中央病院での勤務を経て、2012年、板倉病院院長に就任。

◆増谷 征史(ますたに・まさし)氏
在宅支援部主任、地域連携室主任。社会福祉主事。

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