医療・介護連携システム、依然「FAXで十分」の声も ICT活用で千葉県柏市の事例

キャリアブレイン 2019年07月24日
多職種連携におけるICTの活用について柏市の取り組みを紹介する浅野専門監
 千葉県柏市では、東京大とカナミックネットワーク(東京都渋谷区)により開発された、ICTを活用した在宅医療と介護の情報連携システムを運営している。ネットワークに参加する事業所は年々増え、2018年度で382事業所に上る。参加者からは患者・介護サービス利用者に関する有用な情報が得られたという反応がある一方で、「電話やFAXで十分連携できている」ことからシステム利用に消極的な専門職も相当数いるという。
 クラウド上で職種・事業者を超えて患者の情報をリアルタイムで共有する同市の「カシワニネット」は、12年度から13年度までは東京大学が運用主体として同市で多職種による試行WGを設置し、システム構築を進めてきた。この試行期間を経て、14年度からは柏市が実施主体となり、本格運用を開始している。
 ID登録者数は年々増加を続け、18年度時点で382事業所の1513人。職種別では介護支援専門員(ケアマネジャー)が296人、看護師が258人、介護職217人、薬剤師116人などの順で多く、医師は62人だったという(19年3月時点)。17-19日に開催された国際モダンホスピタルショウ内のパネルディスカッションで、同市の保健福祉部地域医療推進課の浅野美穂子専門監が発表した。
 浅野専門監は、システムを利用した専門職から「デイサービスでの様子を知れて、薬の選択やコントロールに役立てた」(医師)、「病状による生活上の注意点が確認できた」(ケアマネジャー)などの意見があったことを紹介した。一方で、同市が実施したアンケートで「使いづらい理由」を問うと、上位には「書き込む時間が取れない」「パソコンが苦手」「電話やFAXで十分対応できる」などの意見があった。柏市では、「まず、ICTの活用に慣れてもらうことが重要」との判断から、同じ職種間での情報共有ができる機能の活用を職能団体に呼び掛けている。このほかの課題として「一番気になっているのが『どう業務に生かせばよいか分からない』という意見が一定数あったこと」だという。市では、ターミナル期の患者や、褥瘡のある患者など具体的な利用場面を関連職種に対して伝えることで、ネットワークへの参加を働き掛けている。

■連携の評価には、「行政担当者と技術者の議論必要」
 柏市の場合は、東京大とカナミックネットワークとの研究事業の一環としてスタートし、システムが導入された経緯があるが、ほかの自治体や業界団体などが主導となってシステムを運用する場合と共通して、持続可能性が課題になってくる。パネルディスカッションの参加者からも費用について質問があり、浅野専門監は「ベンダーや費用によって、導入側が把握できる情報に差があると聞く。目的意識に応じてシステムやベンダーを選ぶ必要があるのではないか」と応じた。また柏市の場合は14年度から市の事業に移行したが、「ランニングコストは、市の予算から捻出している。多職種連携の事業評価をするためには、蓄積したデータをどのように分析していくか、市からの細かい要望に対して行政担当者とICT技術者が議論することが必要」とコメントした。
 パネルディスカッションでは医療情報システム開発センターの山田恒夫審議役がファシリテーターを務め、保健・医療・介護における自治体でのICTの活用先進事例として柏市のほか広島県呉市によるデータヘルスの取り組みや、川崎市の感染症情報発信システムについて報告された。

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