訪問看護ステーションの過剰リハ批判、中医協診療側 ⽀払側は24時間体制を重点評価し訪問回数など適正化

キャリアブレインマネジメント 2019年07⽉17⽇

 次回診療報酬改定に向けた議論の第1ラウンド最終回として厚⽣労働省は、17⽇の中央社会保険医療協議会総会に「介護・障害者福祉サービス等と医療の連携の在り⽅について」の論点を提⽰した。その中で診療側委員は、訪問看護ステーションにより過剰なリハビリテーションが⾏われていると批判し、対応が必要だとした。また、⽀払側は24時間体制の訪問看護ステーションを重点的に評価する⼀⽅、前回改定で対応した訪問回数問題など適正化も進めるべきだとした。
 厚労省は、「地域包括ケアシステムの構築に向けた介護サービスとの連携について」のテーマの中で訪問看護の利⽤状況を資料で提出し、▽ステーション数は徐々に増加しており、看護職員数の多いステーションが増加傾向▽職種別の従事者数のうち理学療法⼠が占める割合が増加―などとした。
 質疑で最初に発⾔した⽇本医師会常任理事の松本吉郎委員は、訪問看護について、訪問看護師の⾼齢化が問題となっている中で、夜勤もあって給与の⾼い病棟勤務を希望する傾向があるとして、「訪問看護への給与⾯のインセンティブが必要」であることを第1に挙げた。
 ⼀⽅で、「株式会社の訪問看護ステーションにより、過剰にリハビリテーションが提供されている可能性があり、危惧される」と指摘した。
 続いて、⽇本医師会副会⻑の今村聡委員が、厚労省資料では2012年から訪問看護ステーションの従事者数が⼤きな増加をしているが、そこに理学療法⼠の増加が関係しているのではないかとして、そうした状況が判断できる資料の提出を求めた。
 また、従業員の80%以上が理学療法⼠という訪問看護ステーションがあることに「びっくりした」と発⾔。ステーションの規模と理学療法⼠の割合との関係についても資料提出を求めた。
 さらに、訪問看護ステーションは24時間体制を取っていることが望まれる中で、▽理学療法⼠が8割以上のところは、みている患者に偏りがあるのではないか▽規模が⼤きければ利益率も⾼いと思われる▽経営的な観点が強く出て理学療法⼠を多数雇⽤しているのではないか―などの疑念も⽰し、そうした観点も含めたステーションの経営状況に関する資料も求めた。
 全⽇本病院協会会⻑の猪⼝雄⼆委員も「現場を⾒ていて思うことがある」とし、▽介護保険の訪問看護ステーションからのリハビリに対象者などの規定が全くないため、特に営利法⼈ではリハビリのためのステーションが増えて、PTやOTが医療機関から流れて⾏っている▽4⽉に経過措置が終了して医療機関の通所リハがほとんどできなくなったが、介護保険の通所リハやデイケアはそれほど増えずに、訪問看護ステーションからのリハビリを増やしている―と指摘。
 そうした状況を数値として把握して「何らかの⼿を打つべき」と主張した。特に、「訪問リハは通所できない⼈を中⼼にすべき」との考えを⽰した。
 ⼀⽅、⽀払側で健康保険組合連合会理事の幸野庄司委員は、訪問看護の医療費はまだ数千億円で医療費全体の中ではわずかだが、最近10年間で4倍に増⼤し、14年度以降は10%台後半の伸びを続けていることから、「いずれ医療費全体に影響を与えるようになる」との⾒⽅を⽰した上で、前回改定で対応した⽉100回に達するような不適切な訪問回数について引き続き問題意識を持っていることを⽰した。
 特に、訪問回数の営利法⼈と医療法⼈との違いについての資料提出を求めた。
 また、訪問するのが看護師か理学療法⼠かについて医師の指⽰がないのはおかしいなどと指摘した。
 訪問看護ステーションの評価の在り⽅としては、「重点化と適正化が⼤切」とし、24時間体制を重点的に評価し、単に訪問看護だけをやっているところは適正化していくべきだとした。
 こうした批判に対して、⽇本看護協会常任理事の吉川久美⼦専⾨委員は、訪問看護の在り⽅としては医師の指⽰に基づいて訪問看護計画書を作成しているなど適切に実施しているとし、訪問回数も前回の改定を受けて改善が図られていると説明した。
 ⼀⽅で、看護職員需給分科会の将来試算で、訪問看護分野では25年に現在の2倍以上の12万⼈が必要と⾒込まれており、国としての計画的な対応が必要になると主張した。
 訪問看護ステーションにより過剰なリハビリテーションが⾏われているとの批判には、触れなかった。
 厚労省は、第2ラウンドの議論の中で求められた資料についても対応していくことになる。
(資料:7.17中医協総会資料)

7.17 中医協総会―訪問看護ステーションに関する質疑抜粋

松本 訪問看護、訪問介護は、職員の⾼齢化が⾮常に問題になっている。病棟勤務は夜勤があり給与も⾼く、古⼿世代も病棟勤務を希望することが多くなっている。訪問看護・訪問介護への給与⾯へのインセンティブが必要になっている。
 地域に病院や診療所、⽼健施設があるにもかかわらず、株式会社の訪問看護ステーションにより、過剰にリハビリが提供されている可能性が危惧される。
 前回改定では、在宅で療養しながら⽣活する⼩児への⽀援を充実させるための対応策を⾏った。⼩児の訪問看護利⽤者は近年、増加傾向が著しいことから、前回改定での対応が⼗分に成果が出ているのかどうか、実態に応じた評価となっているのかどうかを確認するとともに、必要な対応については次回改定でも検討していくべきと考える。

今村
 37-38P。平成24年から急に訪問看護ステーションの従事者数が増えている。当然必要な仕組みでもっと増えてもらいたいが、あることをきっかけに増えているように⾒える。
 この時に何があったのか確認したい。
 それで、理学療法⼠が⾮常に増えてきている。特に、びっくりしたのは、80%以上理学療法⼠が所属しているステーションがある。ステーションの規模と理学療法⼠の割合に何か関係があるか。それから、経営⺟体が何か違いがあるか。
 訪問看護ステーションはできれば24時間対応を取ってもらいたいが、理学療法⼠が8割以上いるようなところは、みている患者に偏りがあるのではないかと思う。そういう患者を選んで、理学療法⼠だけがいる。それが健全な望ましいステーションの在り⽅かどうか危惧がある。
 可能なら、ステーションの収⽀、経営状況、規模が⼤きければ当然、利益率が⾼くなると思われるが、そうした経営的な観点が⾮常に強く出ていて、理学療法⼠がどんどん雇⽤されていって、そのステーションにたくさんいるというようなことが起こっているのかどうかを教えてほしい。

幸野
 前回改定で、⼊院から在宅へということで、訪問看護も⾒直しをされたが、訪問看護の医療費は全体の数パーセント、数千億円でしかないが、伸び率が⾮常に⾼い。平成18年度から10年間で4倍に伸びてる。MEDIASによると、平成26年あたりから毎年10%台後半の伸び率。今後も伸び率が⾼く、いずれ、医療費全体に影響を与えるような数値になってくるのではないかと思う。
 果たして適切に⾏われているか。2年前にも議論したが、施設によって訪問回数に格段の差がある。多いところは⽉に100回というような数字もあったかと覚えている。訪問看護は医師の指⽰書に基づいて⾏って、その状況を医師に報告するということだが、訪問回数、週に何回など、この患者には⽉1回くらいとか、指⽰書に誰が⾏くか、看護師かPTかの指⽰がなされていない中で、回数などの内容がステーションによって決められている。

森光医療課⻑
 指⽰書には、回数などは書かれていない。
幸野
 訪問看護する患者の状態はさまざまだと思う。医師の指⽰書で、この患者にはどれくらいの頻度で⾒るとか、これは必ず看護師が⾏く、あるいは理学療法⼠が⾏くという指⽰を与えて、今後、訪問看護していくべきと思う。それを訪問看護ステーションが独⾃で決めるという在り⽅に問題があるのではないか。

森光医療課⻑
 訪問看護指⽰書に具体的な回数などはないが、こういう訪問看護をしてくださいという内容は書かれている。また、いつ、どのようにしたかという報告書も医師に出されている。不適切な形でやるという場合には、そうしたチェック機能もあると思っている。

幸野
 次回以降に、事業所によって、訪問回数などに偏りがあるのかないのか、特に営利法⼈と医療法⼈の差とか、を出してほしい。今後の診療報酬改定では、重点化と適正化が⼤切だと思っている。24時間体制を取っているところなどは重点化すべきだし、ただ単に訪問看護だけをやっているところは適正化していく。そうした改定を検討していくべき。

森光医療課⻑
 訪問看護ステーションは始める前に訪問看護計画書を作って患者に提⽰し、主治医にも⾒せて了解を得ている。データは整理して提供したい。

吉森
 在宅医療の担い⼿としての質の⾼い訪問看護の確保は今後、より⼀層⼤きな期待と課題だ。課題はあり、重点化、適正化について次回改定に向けて議論していく必要がある。
 ⾼齢化の問題もある。そこで、ICTの活⽤も重要と考えられる。オンライン診療、オンライン服薬指導なども組み合わせることで、患者の希望をかなえつつ、在宅医療を提供する医療側にとっても負担の少ない仕組みを取っていくことが重要な論点と考える。その意味で、在宅医療を推進する上での視点としてICTを活⽤することについて事務局はどう考えているか。

森光医療課⻑
 前回改定でも、在宅でもオンラインの診療等をすることを活⽤して新しく評価することとした。在宅の資源が⾜りない地域ではそういう⽅向はあると考える。

吉川
 訪問看護が適切に⾏われているかとの質問があった。医師の指⽰書を基に訪問看護師が実際に利⽤者宅に伺い、患者をみてアセスメントをして計画を⽴てて訪問看護をしている。必ず主治医とは連絡し、状況に応じては相談もしている。利⽤者の状況に合わせて看護を提供している。
 回数は、平成30年度改定で確かに問題が指摘され、⼀部の運⽤に課題があるということで、⾒直しが⾏われた。そのため、看護師が定期的に訪問を⾏って、計画の実施状況を実際に⾒て評価するということになって、そうした問題は改善されてきている。
 訪問看護の提供体制。徐々に職員数の多い訪問看護ステーションが増加してきているのは喜ばしいこと。しかし、5⼈未満がまだ全体の6割以上を占めている。医療ニーズの⾼い利⽤者に24時間対応を可能とするには、ある程度の体制が求められるため、⼤規模化の実現に向けて、診療報酬、制度設計を含めて議論が必要。
 病院からの訪問看護も進める必要がある。平成30年度改定で新設された35ページの「機能強化型訪問看護管理療養費3」は⾮常に有効な取り組みの⼀つ。退院直後の頻回な訪問が必要な患者や状態が不安定な⽅にとって⾮常に⼼強いシステムとなっている。病院医療と在宅医療の相互理解、連携の強化も期待される。
 前回、7⽉10⽇の中医協で議論された医療機関等の看護師による同⾏訪問も含めて、今後も医療機関がステーションと連携しながら在宅医療、訪問看護に取り組んでいけるような⽀援を検討していくべき。
 看護職員需給分科会の粗い試算で、2025年に必要となる訪問看護分野の看護職員数が現在の倍以上、12万⼈と⽰されている。中医協ではないかもしれないが、⾮常に短期間で体制の⼤幅な充実をどのように実現していくのか。国として総合的な計画を策定し、進めていただきたい。

猪⼝
 訪問看護ステーションのリハビリテーションについて、現場から⾒ていて思うことがある。まずは、介護保険の訪問看護ステーションからのリハビリ。これにどのような対象を訪問すべきかの規定が全くない。そのため、最近、営利法⼈といっていいか分からないが、もう訪問看護ステーションではなく、何とかリハビリテーションとか、リハをやるための訪問看護ステーションがどんどん増えている。PTやOTが医療機関からだいぶそちらに流れていて、かなり⼈⼿不⾜が起きてしまっている。
 この4⽉に経過措置が終わって、医療機関の通院のリハビリテーションがもうほとんどできなくなっている。その分、介護保険の通所リハ、デイケアが増えているかというと、そこまで増えてない。結果としては、これが訪問看護ステーションからのリハビリを増やしてしまっている。
 この辺のところを数値化して、何らかの⼿を打たないと絶対まずいだろうと思う。特に訪問リハは、当然、通所ができない⼈が中⼼になるべきと思うが、そういう規定が全くないために野放し状態になっていることを⾮常に危惧している。

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