訪問看護STからのリハビリ、大幅増に「厳しい目」 次回改定で「重点化」と「適正化」を求める声も

M3.com レポート 2019年7月17日 (水)配信橋本佳子(m3.com編集長)

 中央社会保険医療協議会総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)は7月17日、「介護・障害福祉サービス等と医療との連携の在り方」について議論、訪問看護ステーションからの理学療法士等による訪問リハビリテーションが急増していることに厳しい目が向けられた(資料は、厚生労働省のホームページ)。
 日本医師会副会長の今村聡氏は、1事業所当たりの理学療法士等の割合が「80%以上」と高い訪問看護ステーションでは、24時間対応体制加算を算定している事業所が31.6%にとどまることから、こうしたステーションが担当する患者層には偏りがあるのではないかと指摘し、「健全なステーションの在り方なのか」と問題提起した。
 全日本病院協会会長の猪口雄二氏は、「最近、リハビリをやるための営利法人による訪問看護ステーションが増えている」と指摘した上で、「『訪問リハビリは、通所リハビリができない人を対象とする』などといった規定が無いために野放し状態になっている」と危惧した。
 支払側からも、健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏は、「今後の改定では、訪問看護ステーションの重点化と適正化が必要」と述べ、24時間対応体制のところは重点化、それ以外は適正化をしていくべきだとしたほか、医師の訪問看護指示書に訪問職種や頻度など、具体的な指示まで書き込むことを提案。
 全国健康保険協会理事の吉森俊和氏も、訪問看護ステーションの重点化と適正化の必要性を指摘。さらに「在宅医療においては、ICTの利活用が重要」と述べ、この点についても議論を求めた。
 その他、2018年度診療報酬改定で新設された介護医療院についても議論になった。2019年3月末日時点での介護医療院開設数は、150施設、1万28床。幸野氏は、「出だしが鈍いのではないか」と指摘した。
 中医協では、2020年度改定に向けて、この3月からテーマ別、患者の年代別という切り口を念頭に、「第一ラウンド」の議論を重ねてきた(『2020年度診療報酬改定へ年代別テーマで議論、中医協』を参照)。17日の議論で一巡。次回の中医協総会で、意見の整理を行う予定。経団連社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理の宮近清文氏は、「ポリファーマシーについては議論したが、調剤報酬については必ずしも十分な議論が行われていない」と指摘し、検討を求めた。

「理学療法士等が従事数の80%以上」というステーションも
 今村氏は、2012年頃から訪問看護の従事者数が増加、特に理学療法士等が増加している理由について尋ね、中でも従事者数の80%以上を理学療法士等が占める訪問看護ステーションについて、規模や経営母体と関係があるのかを質問した。さらに80%以上を理学療法士等が占める場合、24時間対応をするステーションの割合が下がることから、「患者層には偏りがあるのではないか。健全なステーションの在り方かどうか、危惧がある」と指摘した。「ステーションの経営は、規模が大きいほど利益率が高くなる可能性があるものの、経営的な観点が強くなるばかりに、理学療法士等が多くなるということにはなっていないか」。
 猪口氏も、「最近、リハビリをやるための営利法人による訪問看護ステーションが増えている。ステーションからのリハビリが、どのような人を対象に訪問すべきかという規定がないことが問題」と指摘した。さらに、医療保険の経過措置が終わり、この4月から要介護等の高齢者に対する医療保険の維持期・生活期リハビリテーション料が算定できなくなったが、介護保険の通所リハビリが増えていないことから、「結果的にステーションからの訪問が増えているのではないか」との見方を示した。

「訪問看護の医療費、毎年10%増」
 幸野氏は、「前回改定で、入院から在宅へ、ということで、訪問看護ステーションについても見直しがされた。(訪問看護に係る)医療費が占める割合は数%だが、伸び率が非常に高い。2006年度から4倍になっている(2006年度は479億円、2016年度は1742億円)。メディアスによると、2014年辺りから毎年10%伸びており、いずれ医療費全体に影響を与えることになってくるだろう」と述べた。
 その上で、「訪問看護が果たして適切に行われているのか。訪問看護ステーションによって訪問回数に格段の差がある。医師の指示に基づいて実施し、その結果を医師に報告することになっているが、医師の指示書には、誰がどのくらいの頻度で訪問するのかなどは指示していない。ステーションが独自に決めるやり方に問題があるのではないか」と述べ、今後は医師の指示書で具体的に指示すべきだと提案した。「今後の改定では、ステーションの重点化と適正化は必要」とも述べ、24時間体制のところは重点化、それ以外は適正化をしていくべきだとした。
 厚労省保険局医療課長の森光敬子氏は、今村氏らが求めた追加データについては今後用意すると回答。さらに訪問看護指示書については、「『こうした訪問看護をしてください』と書かれている。また訪問看護計画書を主治医と患者に示して開始している。またいつ何をやったかは医師に報告しており、不適切な訪問看護のチェック機能はあると思っている」と説明した。
 日本看護協会常任理事の吉川久美子氏は、専門委員の立場から、「医師の訪問看護指示書を基に、看護師が利用者宅に行き、アセスメントをして、計画を立てている。主治医に連絡・相談して、個々の利用者に合わせて訪問看護を提供している。2018年度改定でも一部の運用に課題があるとのことで、見直しが行われた。制度上でも改善されてきている」と説明。24時間対応を可能とするには、ある程度の大規模化が必要であるし、「大規模化の実現に向けた議論が必要」などと要望した。

介護医療院、6県はゼロ
 47都道府県中、介護医療院がゼロなのは、岩手、宮城、新潟、滋賀、和歌山、宮崎の6県だ。宮近氏は、その理由について、「何か特別な事情はあるのか」と質問。
 今村氏は、介護医療院のサービス費は介護保険の負担となることから、行政に転換を相談しても、転換しにくいとの声を聞くと説明。
 幸野氏は、療養病床から介護医療院への転換に当たって、「移行定着支援加算」などのインセンティブが付いているのにもかかわらず、「出だしが鈍いのではないか。想定通りなのか、思ったより行かなかったのか」と質問した。これに対し、森光課長は、「順調に伸びてきていると思う。詳細はこれから調べるが、転換意向を持っているところは結構あると聞いている」などと回答し、詳細については2018年度改定の検証調査などで分析するとした。

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