高齢者が受けた虐待 過去最多 専門家「抱え込まずに相談を」
NHK 2019年3月26日
高齢者が一緒に暮らす家族などから虐待を受けた件数は、昨年度全国で1万7000件余りに上り、過去最多を更新しました。厚生労働省は全国の自治体を通じて高齢者への虐待の件数を毎年、まとめています。 それによりますと、昨年度、高齢者が一緒に暮らす家族や施設の職員から虐待を受けた件数は1万7588件に上りました。これは前の年度より752件多く、平成19年度に調査を始めて以来、過去最多を更新しました。 このうち家族などからの虐待は1万7078件で、内容について複数回答で聞いたところ、
▽「身体的虐待」が全体の66%と最も多く、▽次いで暴言などの「心理的虐待」が39%、▽オムツをかえないなどの「介護放棄」が20%、▽年金を使い込むなどの「経済的虐待」が18%などとなっています。虐待の結果、死亡した高齢者も28人に上りました。
なぜ虐待が起きたか要因については、▽介護疲れ・ストレスが最も多く24%、▽次いで介護の担い手の障害・病気が21%などとなっています。
また、誰が虐待を行ったかは息子が最も多く4割、次いで夫が2割と、男性が加害者になるケースが目立っています。一方、介護施設で職員から虐待を受けた件数は510件となり、要因については、
▽介護する側の知識や技術の問題が60%、▽ストレスや感情のコントロールの問題が26%などとなっています。
厚生労働省は、特に男性が介護を担う場合は、不慣れな家事などでストレスを感じて虐待に至ってしまうケースがあるため、介護サービスの適切な利用を促す対策を進めるとしています。
男性の介護は増加傾向 高齢者の家族を介護する男性は、増加傾向にあります。 厚生労働省の「国民生活基礎調査」によりますと、同居する高齢者を主に介護している人のうち、男性の割合は平成13年には24%だったのに対し最新の平成28年の調査では34%に増加し、15年間で10ポイント高くなりました。 また、こうした主な介護者に悩みやストレスがあるか尋ねたところ、平成28年には男性は62%、女性は72%があると答えています。 厚生労働省は介護している人の中には悩みを周囲に打ち明けられずにストレスを抱え込み、虐待に至ってしまうケースもあるとみています。
介護担う男性の支援が課題 同居する家族から高齢者が虐待を受けるケースが相次ぐ中、介護を担う男性をどう支えるかが課題となっています。在宅介護の支援などを行う東京 小平市の地域包括支援センターによりますと、虐待が疑われるケースの相談は年々増える傾向にあり、最近では年間100件以上寄せられるということです。 そのうち、ここ数年、目立ってきたのが夫や息子などの男性が家族の介護をする中で暴力や暴言、それに介護放棄などをしてしまうケースだといいます。 虐待の理由を尋ねると、「認知症の妻が言うことを聞かず、ついかっとなってたたいてしまう」とか「慣れない家事や介護に追われ、ストレスがたまって放置してしまった」などと説明する人が多く、ほとんどの場合、誰にも相談できずにストレスを抱え込んだ結果、虐待に発展したとみられるということです。 小平市地域包括支援センター小川ホームの小林美穂センター長は「男性は介護を始めると、仕事と同じように一生懸命にやる人が多いが、認知症などで実際には思うようにいかないことが多い。女性と比べて地域とのつながりを作るのが苦手なので、ストレスがたまっても愚痴を言う相手もおらず、ストレスを発散できずにため込んでしまいがちだ」と指摘しています。 一方で、介護に悩みを抱える男性に対しては、デイサービスの利用を促すなど負担が軽くなるように支援することで虐待のリスクを減らすことができるということで、小林センター長は「介護を担う男性に、困ったら気軽に相談してもらえるように啓発していくとともに、地域の民生委員とも連携して介護に悩む男性を見つけ出し、虐待に発展する前に支えていかなければならない」と話しています。
抱え込まず専門家に相談を 家族に対して虐待をしてしまう人の中には介護サービスを利用していなかったり、介護の負担を誰にも相談できなかったりして孤立しているケースも少なくありません。 厚生労働省によりますと家族から虐待を受けた高齢者のうち、およそ半数は加害者である子どもや配偶者などと2人暮らしだったということです。 各地域には介護の専門家に相談できる「地域包括支援センター」があり、厚生労働省によりますと去年4月の時点で全国で5000か所余りに上っています。 「地域包括支援センター」では、高齢者に対して必要な介護サービスを提供するだけでなく、介護をしている家族の支援も行っていて、1人で抱え込まずまずは専門家に相談をすることが重要です。
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