嚥下障害、広がる配慮

読売新聞 2019年1月17日
「とろみ」ボタンが付いた自動販売機(東京都小金井市で)「カムリエ」のケーキはカラフルで見た目にも楽しい(東京都文京区で)
◇とろみつける自販機◎舌でつぶせるスイーツ 加齢や病気などで食べ物をのみ込む「嚥下えんげ」の機能が低下した人向けに、食べ物や飲み物に工夫を施す動きが広がっている。飲料にとろみをつけられる自動販売機や、のみ込みやすいスイーツを提供する店舗なども登場している。 東京都小金井市の「日本歯科大学口腔こうくうリハビリテーション多摩クリニック」ロビーに昨年10月設置された自動販売機には、新機能が搭載されている。コーヒーやお茶などカップ入りの飲料に、「とろみ」を加える機能だ。お金を入れて飲み物を選ぶ前に「とろみボタン」を押すだけでよい。とろみの具合も、嚥下障害の度合いに応じて「濃い」「中間」「薄い」の3段階から選べる。通常と価格は同じで、提供時間もほぼ変わらない。 とろみをつけたお茶を飲んでみた東京都世田谷区の女性(72)は「最近はむせやすくなったり、飲み物をこぼしやすくなったりしていたが、とろみがついていると飲みやすい」と話した。 この自販機は、カップ式自販機を全国に約4万5000台設置するアペックス(東京都)と、飲料などにとろみをつける「とろみ材」を病院などに提供するニュートリー(三重県四日市市)が共同開発した。アペックスによると、自販機内部で飲料ととろみ材を機械でかくはんするため、「人の手でとろみ材を加えて調整するより、とろみ具合を一定に保てる」という。 嚥下機能が低下した高齢者やその家族らは、外出時にとろみ材を持ち歩くことが多い。また、介護施設などでは、飲食物が誤って気管に入る「誤嚥」を防ぐため、手作業でとろみをつけている。こうした負担軽減にも役立つとして、アペックスは同クリニックを手始めに、2021年までに全国の病院や高齢者施設に約2万台の設置を目指す。 日本歯科大教授で同クリニック院長の菊谷武さんは「誤嚥を防止するうえで、とろみをつけるのは最も効果的。こうした自販機が広がれば、嚥下機能が低下した人も、外出先などで好きな飲み物を我慢することなく飲めるようになる」と期待する。 菊谷さんによると、「65歳以上の高齢者は、要介護認定を受けている人の5割、健常な人の2割程度に嚥下機能の低下がみられる」という。一方、内閣府が14年に高齢者を対象に行った調査では、48%が日常の楽しみとして「食事、飲食」を挙げた。誤嚥防止と飲食の楽しみとの両立が、大きな課題となっている。◇ こうした点を踏まえ、のみ込みやすさに配慮したスイーツなども登場している。 「カムリエ」(東京都)が提供するケーキは、製法を工夫したスポンジを使用。一般的なスポンジは食べると崩れてむせやすいのに対し、口の中でまとまりやすく舌でつぶせる。店頭販売に加え、インターネット通販も行っている。歯科材料などを扱う「ジーシー」(同)がプロデュースし、嚥下機能が低下した人向けの食事の調理法を学ぶ講座も開いている。店長の志水香代さんは「家族みんなで同じケーキを食べることができてうれしい、といった声をいただいています」と話す。 京都府の医師や栄養士らでつくる「京滋摂食・嚥下を考える会」も、食の楽しみを広げる取り組みを行っている。賛同した和菓子店を中心に、適度な軟らかさとまとまりやすさを持ち、舌でつぶせるように仕上げた水ようかんやさくら餅、みたらし団子など6種類を開発。昨年から介護施設などに提供している。府内の酒蔵「北川本家」と協力し、とろみをつけた日本酒の試作も進めている。 日本歯科大教授の菊谷さんは「食事を楽しめる環境が整えば、外出をする機会なども増え、生活の質の向上につながる」と話している。

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