朝日社説:医療的ケア児 支える社会へ知恵を
朝日新聞 2018年10月28日
鼻から胃に入れたチューブを使って栄養をとる、たんを機械で吸い取る、人工呼吸器をつけている――。そうした医療的ケアを日常的に受けて暮らす、「医療的ケア児」と呼ばれる子どもたちとその家族を、社会の一員としてどう支えていくことができるのか。
医療が進歩し、体が小さい、あるいは重い病気でも赤ちゃんの命を救える時代に、増えている子どもたちだ。寝たきりや車いすの子もいれば、走り回る子もいる。自宅で過ごせるが、命に直結するケアが欠かせない。
医療的ケア児の存在は2年前、初めて児童福祉法に記され、支援体制を整えるのは自治体の努力義務とされた。
しかし現実は、法改正のめざすところからはほど遠い。
厚生労働省の研究班によると、0~19歳の医療的ケア児は2016年に推計で約1万8千人。文部科学省の17年度の調査では、公立の特別支援学校で8218人、公立の小中学校で858人が学ぶ。ただ、どういうケアを必要とする子どもがどこに何人いるのか、正確につかめているとは言いがたい。
国や自治体はまず、病院や医師などとも連携して、親や子どものニーズがどこにあるかを、一つずつつかみたい。
親たちが直面する悩みは様々で深刻だ。短時間でも子どもを預けられる場所は不足し、多くはほぼ24時間、家族がつきっきりだ。歩けて元気そうでも医療的ケアが必要だということを理由に、希望する保育園や学校に通えない子どもは少なくない。
東京都世田谷区は、保健師などからの報告に基づき、4月現在で18歳未満の医療的ケア児が156人いると確認した。今年は一般の区立保育園1園に看護師を2人置き、親が付き添わなくてもケアできるようにして1人を受け入れた。今後5園に増やす方針で、それぞれの子に応じたマニュアルづくりなど、小中学校でも対応できるよう準備を進めている。
埼玉県東松山市では、相談があれば、看護師がいる保育園で受け入れできるかどうか、親の意見を聞きながら、市の担当者や医師、保健師などが協議するしくみを採り入れている。
文科省は、学校への看護師の配置を増やせるよう、補助金を手厚くしていく方針だ。
いまある社会保障制度では十分に届かない支援の手を、何とか差し伸べようという試みだ。看護師不足や予算といった課題もあるが、まず何ができてどんな選択肢を示せるのか、知恵を出し合いたい。
仲間募集中
週1回1時間から働ける柔軟で明るい職場で、子育てママや社会人学生も在籍。
すぐに考えていないけれど、少しでも御関心があれば、とりあえず雑談させて下さいませ。