【神奈川】火葬待ち「遺体ホテル」、横浜に9階建てビルも
読売新聞 2018年10月15日
個室の面会室に置かれた遺体安置装置(2日、横浜市のラステル新横浜で)=浜口真実撮影
面会室では常時、弔問を受け付けている(2日、横浜市のラステル新横浜で)
高齢化に伴い、年間130万人以上が亡くなる「多死社会」を迎える中、東京や神奈川などの都市部を中心に、火葬前の遺体を預かる「遺体安置ビジネス」が広がっている。火葬場が不足し、火葬までの待機時間が長期化していることが背景にある。
「マンションの住民や、葬儀をしない人たちの需要が増えてきている」。横浜市のJR新横浜駅近くで、火葬前の遺体を一時的に預かる「遺体ホテル」を運営する葬祭場「ラステル新横浜」の担当者はそう説明する。
オフィス街にある地上9階建てのビルは、27体の遺体を収容可能。常時、面会を受け付けており、弔問客が来ると、喪主に代わってもてなす。面会室には、室温を5度以下に保った安置室から機械でひつぎが運ばれてくる仕組みだ。冷却装置入りのひつぎを備え付けた個室の面会室もある。
費用は「1泊」当たり1万2000~2万2000円。「ラステル」は人生の最後に泊まる「ラストホテル」という意味で、担当者は「高齢化社会で需要は今後さらに伸びる」と見込む。同社は、横浜市西区でも遺体ホテルを運営している。
国立社会保障・人口問題研究所によると、2016年の死者数は130万7748人。将来の推計では、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる25年には150万人を突破する。40年には約166万6000人に達する見込みだ。
その一方で、火葬場は老朽化などによる統廃合で減少傾向が続いており、厚生労働省の集計では、16年度の全国の火葬場数は4181か所で、1996年度の8481か所から半減している。横浜市は市営の火葬場は4か所のみで、火葬待ちは平均で4日程度。冬季は亡くなる人が多く、「1週間程度待つこともある」(市の担当者)という。
葬儀場で告別式などを行わない場合、火葬までの待機中は自宅に遺体を安置することになるが、ひつぎをエレベーターなどに運び込めないマンション世帯が増えているほか、弔問客への応対を負担に感じる喪主も多い。遺体ホテルは横浜市のほか、川崎市や東京都江東区、三鷹市、大阪市、福岡市などにもある。
遺体ホテルの増加に伴い、関連サービスに乗り出す企業もある。介護タクシー事業や高齢者らの家事代行などを手がける千葉県習志野市の「京葉寝台搬送サービスセンター」は、約4年前から遺体の搬送サービスも始めた。病院や高齢者施設で亡くなった人を、遺体ホテルや葬祭会社に搬送する。
15年に設立された東京都日野市の「クーロン」では、ドライアイスを使わずに氷点下を保てる遺体専用の保冷装置を開発。長期間、きれいな状態で遺体を保存でき、遺体ホテルでも利用されている。
火葬場の運営会社などでつくる一般社団法人「火葬研」(東京)の武田至代表理事は「人口が集中する都市部では、火葬の順番待ちが深刻になっている。火葬場を新たに作るのは、土地の確保や周辺住民の感情という観点から考えると難しい。遺体ホテルなどの遺体安置ビジネスのニーズは、今後もなくならないだろう」と指摘している。
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