外国人看護師候補、再チャレンジを支援 福岡県と医師会

朝日新聞 2018年10月15日 経済連携協定(EPA)の仕組みで日本で看護師として働こうとしたが、国家試験に合格できず帰国する外国人が後を絶たない。福岡県と県医師会は、全国でも珍しい再チャレンジ支援を行っている。講師を母国にまで派遣する手厚さで、支援対象者の合格率は平均を大きく上回っている。

外国人の活躍の場、介護現場にも 常勤の半数占める例も
 インドネシアからきた男性は4月から、北九州市の戸畑共立病院で看護師として働く。外科系病棟の入院患者を受け持ち、他の職員と、患者の状態の申し送りもする。専門用語でやりとりし、メモも日本語だ。
 ルディ・ファルロジさん。EPAの仕組みを使って2009年に来日したが、日本の看護師国家試験で3年連続不合格。いったん帰国したが、5度目の挑戦で合格を果たした。
 再挑戦を支えたのは、福岡県と県医師会の事業「再チャレンジ支援」だった。16年度から始まった事業は、EPAを活用した看護師試験受験に失敗した外国人を対象に、県医師会が試験対策に精通した講師を国内外に派遣する仕組みだ。インドネシアで行う集中講義の場合、週5日のペースで約4カ月間、試験対策を無料で行う。
 准看護師の資格を持ち、県内で働きながら看護師をめざす人には、県医師会の看護学校2カ所を「教室」に研修を実施する。
 ファルロジさんは、インドネシアで学習支援を受けて、17年2月はじめに再来日。約2週間の合宿で試験対策を受けてから、同月下旬の准看護師試験に合格した。4年滞在資格を得て、戸畑共立病院で働きながら試験に向けた研修を受けた。今年3月に、看護師国家試験に合格。ファルロジさんは「インドネシアで合格に向けたカリキュラムを立ててもらったことで学習に取り組みやすく、すごく助かった」と話す。自身と同じ支援事業を活用するインドネシア人の女性2人も、9月末から同じ病院で働き始めた。
 事業は、県医師会傘下の小倉医師会理事で、アジアの医療の発展をめざす一般社団法人「メディカル・プラットフォーム・エイシア(MedPA)」の理事を務める原田嘉和医師が発案した。母国で活躍していた看護師が、日本で十分に能力を磨かないまま帰国している現状を知り、もったいないと思ったからだった。
 実験的に12年度、大学の看護学科の教員経験があり、英語ができる石田佳奈子さんをインドネシアに派遣。2週間程度の講義で、受講者6人のうち2人が准看護師試験に合格した。
 こうした実績を踏まえ、小倉医師会は13年度に企業からの協力も得て事業を拡大し、日本語教師の資格を取った石田さんを事業専任の職員として採用。16年度からは県医師会が実務を担い、県が補助する枠組みをつくり、翌年度からはフィリピンも対象に加えた。事業費は、年間約2100万~2200万円。このうち1900万円を県が補助する。受け入れ態勢に限界があるため、現地での学習支援の対象者は、2カ国で計約10人規模にしている。
 EPA全体の看護師試験の合格率は17年度は18%。支援事業の対象者は、39%(18人中7人合格)と高い合格率を記録し、准看護師試験も80%(5人中4人)だった。原田さんは支援事業について「アジアへの国際協力になるし、将来的には医療従事者の深刻な人手不足にもプラスに働くだろう」と話した。(渕沢貴子)

長崎大医学部の平野裕子教授(保健医療社会学)の話 
 医療法人が主体の名古屋市の公益財団法人やフィリピン在住の個人による再チャレンジ支援の例があるが、医師会など地域ぐるみの取り組みはあまりない。それだけ地方都市で看護師を得るのが難しくなってきたことの証しではないか。民間の努力は素晴らしいが、日本政府がやるべきことを尻ぬぐいしている形になっている。出国前の研修が長く、事前の日本語試験の合格ラインも厳しいベトナムは、合格率も高い。本来は、送り出し国の態勢整備を働きかけるなど、政府が事業を改善するべきだ。

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