看護師の特定行為研修、「在宅」や「周術期管理」等のパッケージ化を進め、より分かりやすく―看護師特定行為・研修部会

MedWatch 2018年10月1日

 「特定行為に係る看護師の研修制度」について、在宅や介護分野などの看護師の参加を促すべく、例えば「在宅領域の研修パッケージ」「介護領域の研修パッケージ」「周術期管理領域のパッケージ」など領域別の研修プログラム設定を行い、重複するカリキュラムの整理などを行ってはどうか。あわせて、質の向上を目指し「行為別の目標設定」などを行ってはどうか―。
 9月28日に開催された医道審議会・保健師助産師看護師分科会の「看護師特定行為・研修部会」(以下、部会)で、こういった議論が行われました。
 今年(2018年)12月に具体的な制度見直し案を詰め、年明け(2019年)2月に省令改正案を審議。4月以降に省令改正、関係通知の発出などが行われる予定です。

ここがポイント!
 1 領域別のパッケージ化をし、併せて研修項目の重複等を整理
 2 質向上を目指し、「38行為別の到達目標」を設定

領域別のパッケージ化をし、併せて研修項目の重複等を整理
 一定の研修(特定行為に係る研修、以下、特定行為研修)を受けた看護師は、医師・歯科医師の包括的指示の下で、手順書(プロトコル)に基づいて38行為(21分野)の診療の補助(特定行為)を実施することが可能になります。
看護師特定行為、特定行為研修の概要
 これまでの制度運用状況を眺めると、▼研修修了者は2018年3月時点で1006名▼指定研修機関は87施設(大学10、大学院9、大学病院6、一般病院52、医療関係団体等10)—となっていますが、「2025年度までに研修修了者を10万人とする」との目標には、まだまだ道のりは厳しく、さらなる「推進方策」が待たれています。
 また、この制度の根拠となる地域医療介護総合確保法(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律、2014年)では「法公布後5年を目途として、特定行為研修制度の施行状況などを勘案し、必要があれば所要の見直しを行う」と規定されており、来年度(2019年)に見直しを行うことが必要です。
 こうした状況を踏まえて厚生労働省は、次の3点の見直しを行うことを9月28日の部会に提案しました。
(1)領域別のパッケージ化を行うとともに、重複する研修項目を整理する
(2)研修および看護師の質向上を目指し、「行為別の目標設定」などを行う
(3)制度の周知等を拡充するとともに、事務負担の軽減等を図る
  
 このうち(1)は、21分野ごとに行われている研修について、例えば▼在宅医療(訪問看護)▼慢性期入院医療▼外科▼周術期管理―などの領域別にパッケージ化をした「一連の研修プログラム」を設定してはどうかという提案です。たとえば訪問看護の領域で求められる行為をまとめ、それに向けた研修を1施設で完遂できれば、看護師を研修に送り出す病院側にも分かりやすく(理解が進むことで協力体制が強化される)、看護師の能力向上も期待されます。
 その際、研修の内容について重複があれば、それを整理していくことで総研修時間を圧縮でき、看護師・病院双方にとって負担軽減も図られます。
 特定行為を実施可能な看護師は、さまざまな分野での活躍が期待されていますが、とくに在宅や介護の現場での活躍に注目が集まっています。一方で、特定行為研修を修了した看護師の就業場所を見ると、病院がほとんどで(84%)、訪問看護ステーションでの就業は5%、介護施設での就業は1%にとどまっています。より分かりやすい研修制度とし、かつ負担軽減を図ることで、訪問看護ステーションや介護施設に勤務する看護師の研修参加を促せないか、と厚労省は考えています。
 こうした見直し方向に部会の委員も賛同。例えば神野正博委員(全日本病院協会副会長)は、「『医師の働き方改革に関する検討会』では、日本麻酔科学会から特定行為研修を修了した看護師へのタスクシフトが提案されている。これを期に制度の定着を一気に進めるべき」旨をコメント。また、萱間真美部会長代理(聖路加国際大学教授)も「各研修を修了した看護師の性格が明確になる」と賛成しています。今後、厚労省で▼パッケージの具体化▼重複項目の整理―などが進められ、12月の部会に見直し案が提示される見込みです。
 この点に関連して、厚労省医政局看護課看護サービス推進室の習田由美子室長は「現時点では、1施設内(協力施設を含む)で研修を完遂できる仕組みを考えており、(協力施設は別にして)複数施設で一連の研修を行うことは想定していない」とコメントしています。例えば、「A病院で●●行為を研修し、B病院で◆◆行為を研修する」という在宅パッケージなどは認められない模様です。すると、病院単位での研修には限界も出てくるため、萱間部会長代理は「国が研修センターのようなものを設置することも検討課題に入れてはどうか」と提案しています。  
 なお現在、「胃ろうカテーテルもしくは腸ろうカテーテルまたは胃ろうボタンの交換」と「膀胱ろうカテーテルの交換」とは、「ろう孔管理関連」分野としてまとめられていますが、現場の意見を踏まえて別分野に整理される見通しです(見直し後は22分野・38行為となる予定)。特定行為の分野・行為の見直しについて、厚労省は「ろう孔管理関連」のみとする考えですが、委員からは「さらなる見直し」を求める声も出ています。

質向上を目指し、「38行為別の到達目標」を設定
 現在、特定行為研修の内容は、各分野・行為に共通する【共通科目】と、▼栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連▼呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連▼ろう孔管理関連▼創傷管理関連―の【区部別科目】に分かれており、それぞれに研修時間と到達目標が定められています。必要な時間の研修を受講し、目標に到達したと指定研修機関で評価されてはじめて、研修修了となります。
 しかし、指定研修機関側では、「目標到達」の水準がやや曖昧であるとの指摘もあり、厚労省は、新たに(2)のように「行為別(38行為)の到達目標」を定める考えを示しています。前述のとおり、領域別のパッケージ化が行われ、研修時間が圧縮されるとなれば、併せて「質の維持・担保、向上」が求められることになり、今般の「行為別の到達目標」設定は、まさに質の向上を目指す方向に沿ったものと言えるでしょう。
 また、医療現場において、特定行為研修制度を発展させていくための重要テーマとして「効果」や「安全性」などを掲げる意見が多数でていることが、自治医科大学看護学部の村上礼子教授の研究から明らかになっています(研修を修了した看護師の75%弱、施設管理者(病院長など)の5割弱が、特定行為研修制度の効果や安全性の重要性を指摘)。「行為別の到達目標」設定は、こうした医療現場の考えにもマッチするものです。
 さらに厚労省は、「質向上」の一環として、▼指定研修施設におけるフォローアップ研修の実施▼修了者同士の情報交換の場の設定▼調査・研究—などを継続的に行っていくことの重要性も指摘しています。一度研修を修了しても、症例が少なければ技術は錆びてしまいますし、また医療・看護の技術水準等は日々進歩しています。フォローアップ研修などが積極的に開催されることが期待されます。
 こうした方向に部会委員は異議を唱えておらず、厚労省で詳細を詰めていくことになります。ただし、特定行為研修制度への考え方には、委員間で若干の温度差があるようです。例えば、神野委員は、「特定行為研修を修了した看護師の団体などを作るような段階にはない。個別指定研修機関のフォローアップなどを充実するにとどめるべき」と主張。また、太田秀樹委員(全国在宅療養支援診療所連絡会事務局長)は「情報の一元的な『提供』『吸い上げ』を行うために、【連絡会】程度の組織を設けてはどうか」と提案しています。
 また、関連して「特定行為研修を修了した看護師」の名称についても、「統一した名称・呼称を考えてはどうか」と提案する委員もいます。高木誠委員(日本病院会常任理事)は「統一名称を定めることで認知度も上がるのではないか」と、また桐野高明部会長(東京大学名誉教授)も、「領域別のパッケージ化を行い、例えば【在宅領域特定看護師】などの名称を付けると、一気に研修制度が広まる」と見通しています。
 ただし、こうしたテーマについては議論がまだまだ煮詰まっていません。例えば、21分野・38行為の研修をすべて修了した看護師も、一部のみの研修を修了した看護師も、現在は同じ「特定行為研修を修了した看護師」となりますが、名称を統一する場合、両者は区別しなければならなくなるでしょう。順を追って慎重に検討していく必要がありそうです。
 さらに見直し内容の(3)として、普及啓発の推進(ポータルサイトの拡充など)・事務負担の軽減(研修申請や指定研修機関の事務作業軽減)も提案され、委員はこれを歓迎しています。なお、滋賀県では、地域医療介護総合確保基金を特定行為研修制度にも活用しているなど、都道府県独自の優れた取り組みも少なくありません。神野委員らは、こうした取り組みの周知・横展開も重要であると強調しています。
 厚労省では委員の意見も踏まえて、具体的な見直し案を詰め、12月の部会に提示する予定としています。

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