「看護師の特定行為」実施の拡大に向けて、日看協に全面協力―日慢協・武久会長

MedWatch 2018年9月18日

 高齢化が進展する中では、「特定行為研修を修了した看護師」(以下、特定看護師)の活躍の場が広がっていきます。ただし、日本慢性期医療協会(日慢協)で特定看護師にアンケートをとったところ▼特定行為の対象となる症例がいない▼医師の理解が進んでいない―などの課題も明らかになってきています。
 日慢協の武久洋三会長は、9月13日に定例記者会見を開き、日本看護協会(日看協)に全面協力して、制度の拡充に努めるとともに、10月27・28日に特定行為研修の修了者に対する大規模なフォローアップ研修を実施する方針を明らかにしました(関連記事はこちら)。
9月13日に定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の武久洋三会長

特定看護師を対象に、日慢協で10月にフォローアップ研修を実施
一定の研修(特定行為研修)を修了した特定看護師は、医師・歯科医師の包括的指示の下で、病院が独自に定めた手順書(プロトコル)に基づいて21区分・38行為の診療行為補助(特定行為)を実施することが可能になります(関連記事はこちらとこちら)。「医師の働き方改革」が強く求められる中では、医師等から看護師へのタスク・シフティング(業務移管)が必要とされ、極めて重要な取り組みとなります。厚生労働省の調べでは今年(2018年)3月末時点で1006名の看護師が特定行為研修を修了し、日慢協でも119名(さらに今年(2018年)9月には、さらに29名)の特定看護師を養成しています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。  
 今般、日慢協は119名の特定看護師にアンケート調査を実施(105名が回答)。今年(2018年)7月の1か月間に実施した特定行為としては、▼気管カニューレの交換(64.4%)▼中⼼静脈カテーテルの抜去(41.7%)▼褥瘡または慢性創傷の治療における⾎流のない壊死組織の除去(37.9%)▼脱⽔症状に対する輸液による補正(24.8%)▼感染徴候がある者に対する薬剤の臨時投与(19.2%)▼創傷に対する陰圧閉鎖療法(18.1%)—など、幅広い分野に及んでいることが分かりました。さらに、研修で身に着けた特定行為以外にも、「患者の異常を早期に発⾒し、主治医へ報告する」「連携施設入所者の⾎液データのチェック」「主治医・家族・スタッフ間の中⼼的役割として相談・説明等を⾏う」「看護師特定⾏為の実習受け入れやサポート」「院内指導、院外講師活動」などの取り組みも行っています。日慢協の特定行為研修では、21区分・38行為のうち9区分・16行為をカバーしており、慢性期医療や在宅医療においてオールラウンドに活躍する特定看護師が多い状況が伺えます。
 ただし、アンケート結果からは、例えば次のような課題も浮かび上がってきました。

▽特定看護師業務について医師の理解が得られない(常勤医師の理解は得られてきたが、非常勤・当直医師の理解が得られない。訪問看護の場合、外部医療機関の主治医などに理解してもらえない)
▽患者や家族に特定⾏為自体を拒否される
▽通常業務中に特定⾏為ができない(決められた業務以外には時間がなく、実施できない)
▽特定⾏為を⾏うことに不安がある(実施できていない⾏為に対する知識・技術不⾜などもあり、医師から任せてもらいにくい)

 また研修で特定行為を身に着けたとしても、対象症例が少ない病院では、「知識・技術が薄れていってしまう」という不安もあるようです。
 日慢協は、こうした状況を踏まえ、10月27・28日に東京都内で「フォローアップ研修」を実施することを決定しました。武久会長は、「主に日慢協で特定行為研修を修了した特定看護師を対象にしたいと考えているが、もちろん、他機関で研修を修了した特定看護師の参加も歓迎する」考えです。フォローアップ研修では、▼実施できている⾏為の再確認▼実施出来ていない⾏為のシミュレーション▽新たに追加となった区分(PICC挿入、中⼼静脈カテーテル抜去)の研修▼特定看護師同士の情報交換▼事例検討—などが予定されています。また、矢野諭副会長は「実施した特定行為の評価」も重要テーマの1つになると指摘しました。上述したように、特定看護師は「医師の包括的指示」の下で、手順書(プロトコル)にそって医療行為の一部を実施しています。特定看護師の知識・技術水準が上がっていけば、当然、「看護師に任せられる範囲」も広がり、手順書も見直していく必要があるためです。
9月13日に定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の矢野諭副会長
 
 さらに武久会長は、「日看協に全面協力し、より良い制度にしていく」考えも強調しています。日看協も、当然ではありますが特定行為研修を実施し、これまでに226名の特定看護師を輩出する、最大の養成機関です。両協会が手を取り合い、厚労省と歩調を合わせて特定行為・特定看護師制度を改善することで、より多くの、かつレベルの高い特定看護師が生まれ、それは患者・国民の利益にもつながると期待できます。 
 特定看護師が活躍する分野は、ICUなどの高度急性期医療から、慢性期・在宅医療まで多岐にわたっていますが、とくに力を発揮するのは「慢性期・在宅医療分野ではないか」と武久会長は指摘。逆に、その分野で活躍するためには、多くの知識・技術が必要となり、可能な限り多くの区分・行為の特定行為研修を受けることが求められます。両協会が合同で特定研修を実施することなどにも期待が寄せられそうです。この点に関連して武久会長は「1つの特定行為しか実施できない看護師も、多くの特定行為を実施できる看護師も、同じ特定看護師である。これをどう整理していくかも今後の検討課題になろう」と見通します。
 また、「医師の理解不足」について矢野副会長は、「特定看護師について病院医師の理解は相当進んできているが、診療所医師にはまだまだ理解不足の先生もおられる。地域の医師会も巻き込み、『特定看護師?それは何か?』という医師がいなくなるよう、努力していく必要がある」とコメントしました。せっかく看護師が優れた知識・技術を身に着けても、医師が「包括的指示」をしなければ、それを発揮することはできず、「宝の持ち腐れ」になってしまいかねません。厚労省・医師会が中心となった「周知」にも期待が集まります。

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