独自マップ!全731「災害拠点病院」はここだ 来るべき災害に備える「医療体制」の最新事情

東洋経済 2018/09/07

 厚生労働省「災害拠点病院一覧」(2018年4月1日現在)を基に、災害時に拠点となる病院をマッピングした。詳細データやダウンロードはこちら(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/disasterbases/)
 大阪北部地震、西日本豪雨、関西国際空港を襲った台風21号、そして最大震度7を観測した北海道胆振東部地震と、日本各地で大きな災害が頻発している。日本列島で暮らす以上、いつどこで災害に巻き込まれるかわからない。いざというとき、どのように医療が展開されるのだろうか。上記マップで身近な場所にある「災害拠点病院」を確認しながら、医療ジャーナリスト梶葉子氏の解説を読み進めてほしい。
6月の大阪北部地震で5人が命を落とし、西日本豪雨では200人以上が亡くなった。9月には北海道胆振東部地震もあり、いまだに多くの人が行方不明になっており、安否が気掛かりだ。こうした「万が一」の災害でケガをしたり、避難所で病気になったり、持病が悪化したりしたら、私たちはどのような医療を受けられるのだろうか。
 災害時の医療体制は、1995年の阪神・淡路大震災を発端とし、2011年の東日本大震災などの経験を積み重ねつつ、整備が進められてきた。その中でも柱となる組織が、災害派遣医療チーム(DMAT:Disaster Medical Assistance Team)だ。その活躍ぶりは、東日本大震災や熊本地震などでも大きく報道された。しかし、具体的にどのようなチームなのかは意外に知られていない。

DMATの役割は医療行為だけではない
 DMATは、災害の発生からおおむね48時間以内(急性期)に救命治療を目的とする活動を行う、専門的な研修・訓練を受けた医療チームだ。医師1人、看護師2人、業務調整員1人(事務系職員)の4人で構成される。
 チームは、基本的に災害拠点病院など病院単位で結成され、複数のチームを持つ病院もある。厚生労働省が実施する研修を修了した医療関係者が「DMAT隊員」として登録され、技能の維持を目的に日頃から研修や訓練を受けて出動に備えている。DMATは各都道府県に設置され、必要時に相互応援する。
 緊急性の高い出動となると、映画化もされたテレビドラマ『コード・ブルー』でおなじみのドクターヘリで、瀕死の傷病者を搬送するイメージが強いのではないか。だが、DMATの役割はそれだけではない。
 DMATの西日本拠点である兵庫県災害医療センターの中山伸一センター長によると、重症傷病者の救命だけにとどまらず、現地の病院支援をはじめとしたロジスティクスや、医療活動を円滑に進めるための情報収集も欠かせないという。中山センター長はこう話す。
 「DMATは災害が起きて最初に動き、現場に入る医療チームです。超急性期の現場で、医療ニーズの確認や必要な医療資機材などの判断を素早く行い、現場に医療体制を確立し、急性期以降の医療を赤十字や地元の医師会などのチームに引き継ぐ。それをモットーとします。つまり、被災地域の医療体制をオーガナイズする、という役割が非常に重要になります」
 災害時に活動する医療チームは、DMAT以外にも数多く存在する。
 日本医師会による災害医療チーム(JMAT:Japan Medical Association Team)や、精神的なサポートを専門的に行う災害派遣精神医療チーム(DPAT:Disaster Psychiatric Assistance Team)がその代表格だ。DMATが急性期に活動するのに対し、JMATやDPATは急性期後、現地の医療体制がほぼ復旧するまで長期的に医療支援を行う。
 このほか、大学病院や日本病院会、全日本病院協会、日本赤十字、日本看護協会など、さまざまな団体が医療チームを有する。

災害医療のカギは情報共有
 災害時、重症患者の広域搬送をスムーズに行うため、被災地をはじめ各地の状況を俯瞰的に把握し、DMATなどの医療チームを適正かつ効率よく派遣する必要がある。そこで活躍するのが、広域災害救急医療情報システム(EMIS:Emergency Medical Information System)だ。
 EMISは、各地の病院から発信された情報を、行政や自治体、消防、自衛隊などの各関係機関、全国の医療機関と共有するシステムである。阪神・淡路大震災の際、情報共有がされなかったため、医師も医療資機材も豊富な大学病院に患者が少なく、小さな病院に多くの患者が押しかけるといったアンバランスが生まれたことを教訓に構築された。
 災害時に医療活動の拠点となるのが災害拠点病院だ。派遣医療チームの受け入れや、被災地の病院支援を担うことを目的とし、各都道府県知事によって指定されている。
 災害拠点病院は次のような機能を持つことが条件とされている。
1. 24時間の緊急対応ができ、被災地内の傷病者の受け入れ、他病院への搬出が可能
2. ヘリなどを利用した重症傷病者の受け入れや搬送ができる
3. DMATチームを持ち、派遣体制が整っている
4. ヘリでの患者搬送に同乗派遣できる医師がいる
 大ざっぱに言えば、病院の設備や医療スタッフが十分にそろっていて、DMATチームがあり、重症の救急患者の受け入れが可能で、病院の屋上か病院に隣接した場所にヘリポートがある病院、ということだ。2018年4月時点で全国731病院が指定されている(本文冒頭の独自マップを参照)。

情報共有が災害医療の展開を円滑にする
 医療機関は災害時、施設の状態、空きベッドの有無、患者受け入れの可否など、あらゆる情報をEMISに速やかに入力する必要がある。医療機能が停止した被災病院から患者が搬送される可能性があるからだ。
 だが、それがなかなか徹底されないという。前出の兵庫県災害医療センターの中山伸一センター長はこう話す。
 「実際に災害に遭わないと、情報を発信しないのです。せっかくシステムが整備されていても、情報がきちんと発信されなければ役には立たない」
 中山センター長は6月、災害医療チームの1人として大阪北部地震に対峙した。大阪北部地震では、阪神・淡路大震災から培ってきた災害医療体制が機能したという。緊急時、EMISによる情報共有がより適切に行われれば、さらに強固な体制が築けるはずだ。中山センター長はこう続ける。
 「緊急時に入力なんて、という意見もありますが、それは間違いです。緊急時だからこそ、被災した病院はもちろん被害がなくても、うちは大丈夫ですよ、患者を受け入れられますよ、という情報を発信することで、人的・物的な医療資源の融通や、迅速・的確な患者の搬送などが可能になるのです」
 大阪北部地震が起きた時、災害時の医療体制は実際、どう機能したのか。ここからは、厚生労働省「大阪府北部を震源とする地震について」、関西広域連合広域防災局「大阪府北部を震源とする地震の被害と対応状況」に依拠しながら、6月に起きた大阪北部地震を例に見ていこう。
 6月18日午前7時58分、大阪府北部を震源とする最大震度6弱の地震が発生した。前出のEMISは、発災直後の午前8時00分から同8時26分までの間に、大阪府では「災害モード」、京都府、兵庫県、和歌山県では「警戒モード」に切り替わった。
 各医療機関は速やかに状況を入力し、被災地域での活動および広域での患者搬送などに備えた。医療機関の被害としては、発災直後から複数の病院でエレベーターの停止、天井の部分落下、水漏れ、水槽の破損、職員の不足による外来への影響などの被害が報告されている。
 大阪府は厚生労働省を通じ、大阪府、京都府、滋賀県、奈良県へDMATの出動要請を出した。さらに、大阪、京都・滋賀、兵庫、徳島、奈良にある計5機のドクターヘリに対し、出動待機要請が出された。ドクターヘリは災害時、DMATの活動支援に使用することができる。
 DMATは滋賀県、京都府、兵庫県から最大時で41隊が出動し、6月18~19日にかけて活動した。拠点本部が設置された大阪大学医学部附属病院、大阪府三島救命救急センターの2カ所を中心に、各避難所などで、傷病者の診療や搬送、調整業務などに従事した。
 国立高度専門医療研究センターの1つ、大阪府吹田市にある国立循環器病研究センターでは、病棟の水漏れや非常電源の一時的なダウンが発生した。そのため、重症患者を他の病院に転院させるための移送(転院搬送)が必要となった。
 転院搬送では、EMISを介したDMATやドクターヘリでの搬送のほか、日常的に病院間、医師間で構築されている個々のネットワークを利用した搬送も行われた。
 同研究センターの医師が、普段から連携している他病院の医師に直接、患者の受け入れを要請した際、その搬送にDMATのドクターヘリが使用された。普段から築いてきたネットワークが非常時に生かされた好例だろう。

医療機関と他組織の連携が患者を救う
 出動したDMATは6月末までにすべて撤収し、EMISも6月26~28日に全府県で通常モードに戻っている。前出の中山センター長は、災害医療体制がきちんと機能したことに胸をなで下ろしている。
 「常日頃から訓練している基本形で活動することができ、日本赤十字、医師会なども含め、災害時の医療支援体制のスイッチがきっちりと入ったのは、非常に良かったと思います」
 こうした医師たちの奮闘があってこそ、災害時でも私たち市民の命が守られる。
 災害時の医療体制は、各地で起きる災害に対応しつつ、実際の活動から教訓を得ながら、現在も日々進化し、さまざまな訓練が継続的に行われている。ただ、せっかく整備されたシステムも機能しなければ、絵に描いた餅でしかない。医療機関が警察や消防など各機関と連携し、「縦割り」の弊害を打破してスムーズに機能すれば、多くの患者が救われることだろう。

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