2018年10月からの福祉用具貸与の上限価格を公表、上限超過製品は介護保険の対象外に―厚労省

MedWatch 2018年7月17日 厚生労働省は7月13日に、介護保険における今年(2018年)10月からの福祉用具貸与の「全国平均貸与価格」および「上限価格」を公表しました(厚労省のサイトはこちら)(関連記事はこちら)。
福祉用具専門相談員は、製品の特徴・価格だけでなく、今年(2018年)10月以降は利用者の適切な選択に資するために「全国平均貸与価格」を利用者に説明しなければいけません。
また福祉用具貸与事業者は、「上限価格」を超える価格で貸与を行った場合、介護報酬の「福祉用具貸与費」は算定できなくなります。

利用者の適切な選択を担保するため、福祉用具相談員は平均価格情報などの説明を
介護保険サービスの1つとして福祉用具貸与があります。▼車いす(付属品含む)▼特殊寝台(ベッド、付属品含む)▼床ずれ防止用具▼体位変換器▼手すり▼スロープ▼歩行器▼歩行補助つえ▼認知症老人徘徊感知機器▼移動用リフト(つり具の部分を除く)▼自動排泄処理装置—の貸与に係る費用の一部を保険給付することで、いわゆる「在宅限界」を高めることが狙いです。
しかし、現在は福祉用具貸与価格について、事業所の裁量による価格(つまり言い値)となっているため、まったく同じ製品であるにもかかわらず、一部事業者が極めて高額な貸与価格を設定している事例があることが問題視されています。
福祉用具貸与の上限価格(2018年10月から) 180710の図表の追加
そこで2018年度の介護報酬改定では、(1)全国の平均的な貸与価格を公表し、福祉用具専門員が、利用者にこれを説明することを義務付ける(2)貸与価格に上限を設定する―という2点の見直しが行われました。
前者(1)は、利用者への情報提供を徹底することで、適切に製品・事業者を選択できる機会を確保するための見直しです。福祉用具専門員は、利用者に▼当該製品の貸与価格▼同一製品の全国平均貸与価格▼当該製品の特徴▼同一の機能を持つ他の製品の情報―を適切に説明することが義務付けられます(2018年10月から義務付け、他製品情報の説明は2018年4月から既に義務付け)。
後者(2)は、保険請求の上限価格を「全国平均価格+1SD(標準偏差)」に定めるものです(2018年10月から適用)。同一製品であっても、仕入価格や搬出入の経費、保守点検等の費用が事業者によって異なるため、平均から1SDというバッファを置き、これを「上限」としたものです。
また上限を超える貸与価格を設定した場合(例えばA製品について上限が1万円であったとして、1万3000円の貸与価格を設定)、「上限までは保険給付を行い、超過部分(例で言えば3000円)を自己負担等とする」とするのではなく、「保険請求を認めない(1万3000円全額が自己負担等となる)」仕組みとなっています。この点について、厚労省老健局高齢者支援課の武井佐代里課長は、「上限を超過した場合でも給付対象とすれば、制度として上限超過を肯定したことになってしまい、利用者負担も増えてしまう。上限設定であるので、超過した場合には保険から排除する」旨を説明しています(2017年10月27日の社会保障審議会・介護給付費分科会)。上限価格を超過して保険対象外となる製品は、高額なほうから16%(正規分布する場合)に相当し、徐々に価格が平均価格近くに収斂していくことが期待されます。
厚労省が公表した一覧には3000弱の福祉用具製品について「全国平均貸与価格」「上限価格」が示されています(全貸与件数の98.3%をカバー)。ただし、1か月当たりの貸与件数が100件に満たない製品については、価格の振れ幅が大きくなるため平均価格設定・上限価格設定の対象から除外されています(除外製品は全体の1.7%程度)。

◆福祉用具貸与に係る平均価格・上限価格の一覧は、こちら(厚労省のサイトから「福祉用具の全国平均貸与価格及び貸与価格の上限一覧(平成30年10月)」をクリックするとエクセルファイルをダウンロードできます)

なお、厚労省は2019年度以降、「3か月に1度」程度の頻度で、新規製品についても「全国平均価格情報」や「貸与価格上限」を設定するとともに、「1年に1度」程度の頻度で「全国平均価格情報」や「貸与価格上限」を見直します。

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