医療費を抑えたい! 知らないと損する「20」の節約法

週刊朝日 2018年7月20日号

井艸恵美

医療費の制度は、使い方を知らないと思わぬ落とし穴がある。「もらえるはずのものがもらえない」という事態にならないために、攻略法を押さえておくのも大切だ。大きな病気やけがで医療費が高額になってしまったときに使える「高額療養費制度」。1カ月の医療費が一定の金額(限度額)を超えた場合、その超過分が払い戻される。限度額は年齢や所得によって異なる。

「注意したいのは限度額割れです」と医療費に詳しいファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは指摘する。高額療養費制度は1カ月単位。最終的に支払った治療費が同額でも、月をまたいでいると限度額を超えず、制度が使えないことがあるのだ。

 例えば、入院が月をまたいだ場合、支払額が分散されて限度額に達しない。入院だけでなく、同じ薬を飲み続ける場合も、同じ月にまとめてもらったほうが制度の適用になる可能性が高い。一つの月に支払いをまとめることが肝なのだ。

●支払いは家族合算が鍵
 もう一つまとめたいのが、通院する病院だ。この制度は、本人が別の病院や薬局でかかった医療費や、家族の分も合算して申請できる。ただし、70歳未満では、合算できる自己負担額は2万1千円以上という決まりがあるのだ。

「例えば、乳房再建を予定している乳がん患者が、乳腺外科と形成外科を別々の病院でかかれば、2万1千円を超えず合算できないかもしれません。でも、同じ病院で同じ日に診療を済ませれば、会計は同じですので、制度の適用を受けやすくなります」(黒田さん)

 病気で働けなくなったとき、収入をカバーできるのが「傷病手当金」だ。会社員や公務員ならば、1日につき給与(標準報酬日額)の3分の2の金額を受け取れる。支給期間は最長1年6カ月間だ。

 支給されるか否かは、休み方によるので覚えておきたい。連続で3日間休むと、4日目から支給が始まる。土日も含められるため、例えば土日月の3日間休めば支給対象になる。ただし、同じ日数を休んでいても、まばらに休んでいる場合は制度の対象にならない。

 意外と知られていないのが、在職中だけでなく退職後も支給の条件がそろっていれば受給可能だということ。このときに注意したいのが、退職日だ。

「退職日は絶対に働かないでください」と、黒田さんは忠告する。退職日に出勤扱いになると、就労不能とみなされず、退職後に受給できなくなってしまうのだ。

「片付けや業務の引き継ぎなどは退職日の前に済ませておき、退職日はあいさつ程度にしておきましょう」

 会社員の場合、月々の健康保険料は給与から天引きされていることが多いだろう。この保険料の金額は一定ではない。4~6月の月収の平均額(標準報酬月額)で決まるのだ。この期間に集中して働きすぎると当然、保険料は上がることになる。

 また会社を辞めるときに覚えておきたいのが、「任意継続」という制度。退職すると、国民健康保険(国保)に加入するか家族の扶養に入るという選択肢があるが、任意継続ならば一律の保険料で会社の健康保険を2年間継続できる。その保険料は標準報酬月額で決まるが、上限額が28万円と決まっているため、それ以上の収入ならば一定額になる。

 一方、国保は都道府県が定める収入などの条件によって保険料が決まる。減免申請も可能だが、退職後1年目なら任意継続のほうが安い可能性が高い。退職時に必ず保険料を比較しよう。

●市販薬も節税の対象に
 1年間の医療費分を節税できる医療費控除は知っている人も多いだろう。控除の対象になるのは、1年間に10万円以上の医療費を使った場合だ。そんなに使っていないという人も、1年前に始まった「セルフメディケーション税制」なら使えるかもしれない。この制度は、市販の医薬品の購入費が年間1万2千円を超えたとき、その超えた分が所得から控除されるというもの。対象となるのは、病院で処方される薬から転用された「スイッチOTC薬」。風邪薬や胃腸薬、湿布薬など、現在対象となる医薬品は1680点。生計が一緒の家族ならば合算できる。

 この制度は医療費控除と併用できない。国税局のホームページで金額を入れると、どちらの減税額が高いか試算できる。対象商品を購入すると領収書に明記されるため、薬局の領収書は必ず保管しておこう。

 用意されたごちそうも、自分で皿とお箸を準備しなければ食べ損なう。“おまかせ”コースを卒業し、自ら料理を選べる患者になろう。(本誌・井艸恵美)

【知らないと損をする20の節約法】
(1)差額ベッド代は、支払わなくてもよい条件がある
(2)“待ち時間が短い”予約診療は自費がかかる可能性がある
(3)入院時の日用品(オムツやパジャマなど)は自分で用意する
(4)診療時間“内”でもかかる、割増料金に注意する
(5)初診料が発生する期間は、病院ごとに異なる
(6)初診&紹介状なしは特別料金が。かかりつけ医をもとう

(7)薬局の料金は、院内薬局が最も安い
(8)薬の重複を避けるために「かかりつけ薬局」を一つに決める
(9)指導料が高い「かかりつけ薬剤師」をもつのは慎重に
(10)おくすり手帳を持参すると、36円安くなる
(11)風邪や中耳炎での抗生物質はもらわない
(12)「念のため」や症状がないときのCTやMRI検査は受けない
(13)複数の病院にかかっている場合は、検査の重複を避ける
(14)高額療養費制度は、医療費の支払いをひと月にまとめて
(15)一つの病院での治療は高額療養費制度の対象になりやすい
(16)病院での支払いは、クレジットカードでポイントをためる
(17)傷病手当金を受給するためには、“退職日”には出勤しない
(18)4~6月の収入増に気をつけて健康保険料を抑える
(19)退職時は、国民健康保険と任意継続の保険料を比較する
(20)市販薬の購入費も所得控除の対象に。確定申告で節税を

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