検診・抗がん剤、何歳まで 年齢制限の議論も 「2025年 超寿社会」「がんと老い」

共同通信 2018年7月2日

 「はい、測るよ。2・8ミリ」。3年前の夏、病院で精密検査を受けた植木桜美(うえき・はるみ)(85)=東京都調布市=は、胃カメラを操る医師の声を冷静に受け止めていた。「ああ、やっぱり胃がんなんだ」。かかりつけ医の診断は当たっていた。
 自覚症状はなく、市から届いた受診票を見て軽い気持ちでかかりつけ医を訪れた。調布市は60歳以上に毎年1回胃がん検診を無料で実施し、75歳以上にはエックス線検査の受診票を送る。バリウムが苦手な植木は自費で内視鏡検査に変更した。
 「運がよかった。あの時見つからなかったら今ごろどうなっていたか」
 2015年7月、内視鏡による切除手術を受け10日足らずで退院。手術前、一人娘に宛てて書いた遺言は開かれることはなく、現在も趣味のコーラスやヨガ、マージャンに忙しい日々を過ごす。
 だが植木は今、定期的な検査を避けている。バリウムが詰まる腸閉塞(へいそく)や内視鏡検査による出血など、検診を巡る高齢者の事故を伝える記事を読んだからだ。検診の大切さを身をもって知るが「だからみんなも受けてと簡単には勧められない」。
 がん検診で生じる不利益が一般に知られていないのではないか。厚生労働省は今年、市町村が実施する検診の対象者見直しに動きだした。欧米では推奨年齢が決まっており、年齢に上限がないのは先進国で日本と韓国ぐらいだ。
 5月に開かれた検討会では「治療に耐えられない年齢なら検診を受ける意味はない」と、年齢制限を主張する意見も出た。厚労省は来年度にも検診に関する現行指針を改定する方針という。
 何歳の人に、どんな治療が向くのか。判断を支える科学的根拠づくりも課題だ。高齢者は複数の持病を抱えがちで抗がん剤の効果が見極めにくい。副作用も大きく出やすいとされる。新治療の効果を検証する臨床試験の参加者は比較的若い患者が中心で、その結果を高齢者に当てはめることには限界も指摘される。
 国立がん研究センターは昨年、抗がん剤治療の有無によって高齢患者の生存率に差が出るかを調べたが、分析できた症例数が少なく結論が出なかった。厚労省はより大規模な調査を実施して見極めたい考えだ。
 全国がん患者団体連合会理事長の天野慎介(あまの・しんすけ)(44)は「医療経済的な観点で考えてはいけない」と念を押しつつ「治療の見通しや身体への負担を考慮し、患者にとって何が幸せなのか議論すべきだ」と話す。

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