高額化するがんの医療費 支援制度を活用して負担軽減を

朝日新聞 2018/6/25

 がんの治療を始めると、医療費の支払いという経済的負担とも向き合わねばならない。近年、登場している有効な治療薬には、高額で長期間続けざるを得ないものが多い。支援制度を知って活用すると負担は減らせるが、この先も続々と高い薬の開発は進む。

高額な新薬、治療と出費長期化
 和歌山市の病院職員丸畑雄司さん(50)は2016年5月、胃がんが見つかった。翌月、入院し、胃の上部を切除する手術を受けた。リンパ節への転移があるステージ3だった。
 10日間入院し、手術料や検査料など医療費の総額は約140万円。公的医療保険で自己負担分は3割。さらに年齢や年収に応じて計算式が決まっていて上限を超す分は戻ってくる高額療養費制度を利用し、実際の負担は約18万円だった。
 再発を防ぐため、手術後に飲み薬と点滴の抗がん剤治療も始めた。体重が一時14キロ減った。職場の理解もあって休業せずにすんだが月額3万~9万円程度の負担が約1年続いた。家のローンを払い、貯蓄の一部を切り崩す生活。「治療費の出費がだらだら続く負担がつらく、将来への不安も大きかった」と話す。
 近年、がん細胞をピンポイントで攻撃する分子標的薬や、免疫チェックポイント阻害剤という新たなタイプの高額の治療薬が登場。治療が長期化している。北里大学病院集学的がん診療センター長の佐々木治一郎教授は、「がん細胞が薬剤耐性を獲得するため、分子標的薬は次々と種類を変えていかざるを得ない。免疫チェックポイント阻害剤はやめどきの判断が難しい」と話す。
 神奈川県の60代男性は昨年8月、肺がんの手術後に免疫チェックポイント阻害剤キイトルーダの治療を始めた。高額療養費制度を使っても毎月10万円程度の出費が続いた。経済的負担が重いからと途中で治療をやめた。主治医は「効果が出る可能性もある。できれば続けた方がいい」と説明したが、決断は変わらなかった。「再発の不安がないことはないが、家族の生活の方が大事」と男性は言う。

「申請主義」自ら確認・相談大切
 支援制度は「申請主義」だ。いつ、どこに申請するのか知らずにいると損をすることがある。
 支給までに3カ月ほどかかるが、加入する健康保険組合などに「限度額適用認定証」を申請し、病院窓口に提示すれば、窓口負担は限度額だけで済む。一つの世帯で複数の人が高額の医療費を払った場合に、合算して限度額を超す分を払い戻す「世帯合算」もある。
 直腸がんで人工肛門(こうもん)にしたり咽頭(いんとう)がんで摘出したりした人は、障害年金の対象になる可能性がある。だが国立がん研究センター中央病院相談支援センターの宮田佳代子さんは「障害年金の受給対象を知っている医師は多くない。このため情報が伝わらず、申請していない患者もいる」と言う。
 全国に400以上あるがん診療連携拠点病院には、がん相談支援センターがあり、社会福祉士や看護師らが生活面での相談にものる。その一つ、埼玉県立がんセンターのソーシャルワーカー山本美憂さんは、「様々な公的制度があると知るだけで安心する方は多い。どんなことでも相談してほしい」と話す。センターでは外部の社会保険労務士やファイナンシャルプランナーなどと連携して解決に当たることもある。
 がん患者を支援するNPO法人「がんと暮らしを考える会」によると近年、60~65歳の患者からの相談が増えているという。定年後に正社員から嘱託職員になった人が治療を始めると、収入が大幅に減る一方で支出が増える。
 傷病手当金を受給した後に障害年金を受け取る、余命が短いとみられる場合は老齢年金を繰り上げ受給するなどの選択肢がある。ただ「それぞれ長所短所がある。制度が複雑で、この世代の選択は特に難しい。よく理解して冷静に選ぶ必要がある」と賢見(けんみ)卓也理事長は言う。
 会が公開するウェブページ「がん制度ドック」(http://www.ganseido.com別ウインドウで開きます)に病状や加入している保険などを入力すると、活用できる制度が検索できる。

専門家「薬価のあり方、検討を」
 新たなタイプの薬剤開発が進み、がん治療薬の高額化は止まらない。
 特定の遺伝子やたんぱく質に働きかける分子標的薬は、一つの薬を使う対象患者が少ないため、価格は高い。2014年に承認された免疫チェックポイント阻害剤オプジーボは、人に備わる免疫の働きを促す新型の薬。現在の価格は約6割下がったが当初、年3500万円の薬剤費が話題になった。今後も次々と、高額薬の承認が控えている。
 国立がん研究センターは、欧米で承認されているが日本で未承認の抗がん剤65種を調査した。4月時点で、薬剤費が判明している58種中45種で、月の薬剤費が100万円以上(1ドル100円で計算)だった。
 65種のうち41種は、15年以降に承認された。抗体医薬など製造が難しい薬や、患者数の少ないがんの薬が多かったという。
 最も高かったのは、白血病の一部を対象とする、CAR―T細胞療法と呼ばれる薬。自身の免疫細胞に遺伝子操作をしてがんを攻撃する力を高めて体内に戻す新たな治療法で、治療は1回で終わるが約4700万円かかる。日本でも承認に向け審査が進んでいる。
 がん治療薬の高額化は米国でも問題になっている。同じ薬剤でも、がんの種類によって効き方が違う。適応によって価格を変えるなど、新しい価格設定の方法も議論されているという。
 同センターの藤原康弘・企画戦略局長は「薬の高額化は続く。薬価のあり方など、制度そのものについて考えなければならない時期にきている」と話す。

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