現場の職員を守る…訪問介護でセクハラ被害 ドアにチェーン「危険感じる」

読売新聞 2018年6月12日

訪問介護では、女性ヘルパーが1人で高齢者宅を訪れることも多い(神戸市で)
 介護現場で働く人たちが、利用者やその家族からハラスメントを受ける事例が相次いでいる。多くは女性で、けがを負いそうになった深刻なケースもある。(板垣茂良)
 「監禁されるかもしれない」。神戸市で訪問介護の仕事をしている介護福祉士の女性(53)は、約2年前の出来事を振り返る。
 寝たきりの80歳代の女性宅。おむつ交換のため、玄関で靴を脱いだ際、「ガチャッ」という音がした。同居する50歳代の息子が、ドアの鍵を閉め、チェーンも掛けようとしていた。女性が警戒し、「すぐに帰るんで閉めんといてください」と言うと、息子は解錠した。
 しかし、その後も訪れる度に同じことが繰り返された。母親のおむつを替えている時、背後に気配を感じて振り返ると、息子が顔を近づけてきたこともあった。息子から「結婚しとん?」「きれいやな」などと言われた同僚もいた。
 職員たちは対策を考えた。利用者宅はマンションの1階。玄関をふさがれても逃げられるよう、空気の入れ替えを口実に、部屋の出窓の鍵を外してから仕事を始めるようにした。服を上下とも5枚重ね着した。「何かあっても簡単にめくられないようにするため」だ。対策を講じた2か月後、母親が入院し、訪問サービスは終了した。
 女性は「介護に携わる者としての使命感もあり、最初は『怖い』と思うこと自体が失礼と思い込んでいた。でも、あまりにひどいハラスメントに対しては、サービスの提供を断るという選択肢を職員も事業所も持つべきではないか」と話す。
 事業所を運営する社会福祉法人「駒どり」の竹崎智博専務理事は、「職員の安全を確保しながら、介護を必要とする人の生活を支えていく方法を考えなくてはならない」と語った。
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 ハラスメントでは済まされない被害もある。
 「ベッドに突然押し倒され、頭が真っ白になりました」。都内の訪問介護事業所で働く介護福祉士の女性(34)は、3年前の体験を打ち明ける。
 女性はその日、70歳代の男性宅を訪ね、男性とベッドに横並びで腰掛けていた。掃除や食事の準備など、提供するサービスについて説明し、署名をもらう必要があったからだ。ワンルームの男性宅にテーブルはなく、床も汚れていた。書類を広げられるのはベッドの上しかなかった。
 男性は前触れもなく、覆いかぶさってきた。押しのけようとしたが、予想外に腕力が強かった。「ちょっと。落ち着いてください」。背中をさすって、なだめるように話しかけた。事なきを得たが、この家を1人で訪問できなくなった。

第三者の目 届きにくい
 労働組合「日本介護クラフトユニオン」(東京)が4月に公表した調査結果(速報値)によると、介護職の73・5%が、高齢者やその家族からハラスメントを受けた経験があった。職種別では、自宅を訪問するヘルパーの被害が目立つ。
 28・8%はセクハラで、被害者のほとんどは女性。「不必要に体に触れる」が最も多く、「性的な冗談を繰り返す」「胸や腰をじっと見る」が続いた。
 自宅を訪ねて介護をする仕事では、夜間に女性職員が1人で家を訪れることも多い。兵庫県では対策として、問題のある利用者宅に職員が2人1組で訪問できるよう、人件費の一部を補助する事業を今年1月に始めた。ただ、人手に余裕のある事業所が少ないこともあり、3月末までの利用実績はゼロだった。
 この問題に詳しい城西国際大の篠崎良勝准教授は、「自宅は介護施設と違い、第三者の目が届きにくい。しかも、利用者や家族にとっては日常空間なので、介護職員に対し上から目線にもなりがちだ。事業所同士で悪質な利用者のブラックリストを共有する、業界全体で相談窓口を設けるなどの対策が必要ではないか」と提案している。

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