後期高齢化社会に向けて/管理栄養士の育成重要
山陰中央新報 2018/5/26
島根県立大出雲キャンパス副学長 山下一也
団塊世代が後期高齢化社会に突入する2025年に向け、人口構造の変化や地域の情勢変化を受け、医療や介護にかかる問題やその対策も大きな転換期を迎えている。地域包括ケアという考え方、すなわち各地域の住民が住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の終わりまで続けられるシステムが現在の地域医療においては根幹となっている。地域包括ケアシステムを実現するためには、在宅医療の充実が非常に重要となる。
その在宅医療を考えていく中で、「人生の最終段階をどこで過ごすか」ということは、どうしても避けては通れない。
多くのアンケート結果において、人生の最終段階を過ごしたい場所に「自宅」と回答する人が圧倒的に多い。しかし現実には「往診してくれる医師がいない」「訪問看護・訪問介護などのサービスが整っていない」「介護してくれる家族がいない」などの理由で、病院や施設で過ごす状況は以前とあまり変わっていない。特にその中で、自宅で最期まで療養することが困難な理由として「家族の負担」が多く挙がっている。
「家族の負担」の研究は多くなされている。身体機能などが低下した高齢者を介護する上で、主介護者の負担の増加は、長期に介護しているとどうしても介護疲れにつながり、在宅療養を継続する上でハードルになっている。
今までの研究では、在宅療養における介護負担を増大させる因子として認知症の有無、食事の問題、排尿介助などが特に挙げられている。中でも食事の問題は大きく、最近ではそういった在宅療養者に対し、在宅訪問栄養食事指導を提供するシステムが少しずつ整いつつある。
そこで本県でも、今後在宅医療と関わる多職種と連携を取ることができ、かつ在宅療養者の疾患・病状・栄養状態に適した栄養食事指導(支援)ができる管理栄養士、すなわち在宅訪問管理栄養士の育成が重要になると予想される。在宅訪問管理栄養士は、療養者や家族の立場や思いが分かり、最期まで口から食べられることを支援できる管理栄養士でもなければならない。
しかし、療養者や家族の立場や思いというのは、学生が普段見ているドラマのようにはいかないさまざまな人間模様の中にある。イソップ寓話(ぐうわ)の「田舎のネズミと町のネズミ」のように、都市部と中山間地域・離島などではまた価値観が異なることもあるだろう。
4月から島根県立大学出雲キャンパスに開設された健康栄養学科においては管理栄養士の養成を始めており、特に看護学科との合同での講義や島根県内でのフィールド実習の場を多くつくっている。多職種の連携を学びながら、療養者や家族の立場や思いが分かる教育という点で、他大学の同様の養成課程にはない大きなメリットがあると思っている。
在宅で療養者が静かに今まで通りに生活でき、家族(介護者)が悔いを残さないような療養生活の支援を継続するためにも、食・栄養の支援者の中心となり、家族(介護者)の支えになる管理栄養士を育成できたらと思っている。
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やました・かずや 医学博士、専門分野は神経内科、神経心理学。島根医科大医学部卒業後、1991年にカリフォルニア大デービス校神経科研究員として留学。94年から津和野共存病院院長、その後、島根医科大付属病院第3内科講師、島根県立看護短期大教授などを経て、2012年4月から島根県立大出雲キャンパス副学長。
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