コロナワクチン接種のための「予診」、初診料や再診料・外来診療料の算定は「不可」―厚労省


Gemmed 2021.6.18.

 新型コロナウイルスワクチンの接種に当たり、医療機関で「予診」(問診・検温・診察)を行った場合でも、初診料や再診料・外来診療料の算定はできない―。
 コロナワクチン接種後の経過観察中に被接種者の体調が悪化し、処置等を行った場合には、初診料や再診料・外来診療料の算定はできないが、当該処置等に対応する診療報酬算定は可能である―。
 コロナワクチン接種と同日に、「別の傷病」に関する診察を当該医療機関で行った場合には、通常通り、初診料や検査料などを算定することができる―。
 在宅療養患者に対して訪問看護を提供する際、同日時に「コロナワクチン接種後の経過観察」を訪問看護師が実施する場合には、訪問看護基本療養費の算定が可能である―。
 厚生労働省は6月17日に事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その49)」を示し、こうした考えを明らかにしました(関連記事はこちら)。

コロナワクチン接種にかかる「予診」では、初診料等の算定不可
 新型コロナウイルス感染症が依然として猛威を振るっています。緊急事態宣言の効果か、東京圏や大阪圏では新規感染者の増加ペースが落ち着いてきており、緊急事態制限が解除される見込みです。しかし、「下げ止まり」の感もあることから、蔓延防止等重点措置が実施される予定で、また沖縄県などでは予断を許さない状況が続いています。こうした中では、やはり「感染防止策の徹底」と「医療提供体制の確保」が最重要施策となります。
 前者の「感染防止策」については、これまでの▼マスクの着用▼手洗いの徹底▼3密(密接、密集、密着)の回避―を継続することはもちろん、「ワクチン接種」に期待が集まっています。ワクチン接種は、まず医療従事者から始まり、次いで「高齢者」「基礎疾患保有者」「その他の国民」という具合に、順次、拡大されていきます。すでに「医療従事者」「高齢者」へのワクチン接種が始まり、「若人」への接種準備も着々と進められています。
 この点、自治体などの準備する接種会場等では「ワクチンの打ち手となる医療従事者の確保」を始めとする接種体制の充実が重要テーマとなっており、医療機関や介護施設・事業所等に従事する医療従事者による「協力」にも期待が集まっています。厚労省は、こうした「協力」を積極的に促すために、例えば▼医療法上の臨時特例措置(各種の手続き等の柔軟化、関連記事はこちらとこちらとこちらほか)▼介護保険制度上の特例措置(人員配置基準の柔軟化など、関連記事はこちらとこちらほか)▼緊急包括支援金による経済的支援(関連記事はこちらとこちら)▼診療報酬上の臨時特例の対象に追加(関連記事はこちら)―などを実施しています。
 さらに今般、ワクチン接種にあたり「予診」(予防接種実施規則第4条規定の「問診、検温、診察」 をいう。以下同)などを行った場合の診療報酬上の取り扱いが明確にされました。

具体的には、次のとおりです。

●コロナワクチン接種に当たり保険医療機関で「予診」を行った場合
→当該予診について、A000【初診料】、A001【再診料】、A002【外来診療料】(いわば200床以上病院における再診料)などは算定できない

●コロナワクチン接種を保険医療機関で実施し、接種後に当該医療機関で健康状態を観察している間に何らかの症状が発生し、それに対する診療を行った場合
→A000【初診料】、A001【再診料】、A002【外来診療料】の算定はできない
→ただし、その際に処置・検査・投薬などの診療を行った場合には、対応する診療報酬項目を算定できる(もちろん各点数の算定要件を満たすことが前提)

●コロナワクチン接種を保険医療機関で実施し、同日に、予診・健康状態観察を含むワクチン接種の前・後に、当該医療機関で「別の傷病」の診療を行った場合
→A000【初診料】、A001【再診料】、A002【外来診療料】を算定できる
→その際に処置・検査・投薬などの診療を行った場合には、対応する診療報酬項目を算定できる(もちろん各点数の算定要件を満たすことが可能)

●在宅療養患者等に対して、訪問看護ステーションの看護師等が主治医からの訪問看護指示書・精神科訪問看護指示書に基づいて訪問看護サービス提供を行うとともに、あわせて「コロナワクチン接種後の経過観察」を行う場合(在宅療養患者等へのワクチン接種後には、▼接種医が継続して当該患者宅で経過観察を行う▼家族や訪問看護・介護サービス提供者が一定時間、当該患者の状態を観察し、体調に異変のあった際には接種を行った医療機関等に連絡し、適切な対応をとる―ことが必要である)
→通常どおり、【訪問看護基本療養費】または【精神科訪問看護基本療養費】を算定できる
→この場合、ワクチン接種の日時に合うように「訪問看護計画のサービス日時を変更する」ことが可能。その際には、日時等の変更を行う旨を訪問看護計画書に記載し、事前に利用者・家族に説明を行うことが求められる

 一部医療機関では「コロナワクチン接種のための予診について、初診料や再診料を算定している」ようで、当然、患者負担も発生します。この場合、当該患者は「コロナワクチンは無料と聞いているが、なぜ医療機関にお金を払うのか」という疑問を持つことでしょう。
 また、ワクチン接種と同一日に、例えば「持病の高血圧症の軽観察を行う」など、「別の傷病の診療」を行うこともあるでしょう。その場合、上述のとおり診療報酬の算定が可能となりますが、医療保険制度・診療報酬算定ルールに詳しくない一般の患者は、やはり「テレビニュースでは『コロナワクチンは無料』と聞いたが、患者負担が発生した」と疑問を持ってしまうことがあり得ます。
 上記の取り扱いを遵守するとともに、患者から疑問が出た場合には丁寧に説明する(例えば「ワクチン接種とは別の傷病治療に対する一部負担である」旨など)ことが重要でしょう。

「ポチッ」して頂けると励みになります♡

仲間募集中

業務拡大につき、看護師、理学療法士、作業療法士、事務職+保育士・歯科衛生士・栄養士・管理栄養士さんを募集中。
週1回1時間から働ける柔軟で明るい職場で、子育てママや社会人学生も在籍。
すぐに考えていないけれど、少しでも御関心があれば、とりあえず雑談させて下さいませ。