特定看護師の在宅領域での活躍に向け、厚労省が好事例を紹介


Medifax digest 2021年4月23日

 「団塊の世代」全員が後期高齢者になる2025年を見据え、5年半前に始まった、いわゆる特定看護師の制度。医師の判断を頻繁に仰がずとも、医師や歯科医師が作成した手順書に沿って、一定の診療の補助を行える看護師を養成することで、地域包括ケアシステムの支え手を厚くすることが目的の一つだった。
 しかし、期待された在宅医療で特定看護師が十分に活躍しているとはまだ言い難い。節目となる25年が4年後に迫る中、厚生労働省は在宅領域における制度の周知を一層進めていきたい構えだ。

●在宅領域への就業は7%
 看護師の特定行為研修制度は15年10月に始まった。現在、診療の補助である特定行為として、21区分38行為が指定されている。研修の修了生は、医師・歯科医師が作成した手順書の「病状の範囲内」で、特定行為を行うことができる。患者の状態を見極めながら、よりタイムリーに対応することが期待されている。
 厚労省によると、19年10月時点の修了者の就業場所は、在宅領域は全修了者の約7%にとどまる。厚労省医政局看護課の習田由美子看護サービス推進室長は、看護師全体の在宅領域の就業者が4~5%程度だと指摘した上で、研修修了者の在宅領域への就業割合について「必ずしも低くはないかもしれないが、もちろん十分ではない」と話す。
 小規模施設が多い在宅領域では、そもそも特定行為研修制度の情報が十分に伝わっていないケースも少なくないようだ。習田室長によると、在宅医療を手掛ける医師の中でも、「急性期の制度だから関係ない」と考える医師もいれば、自ら修了生の看護師を探す医師もいて、認識にギャップがあるという。
 また在宅では、それぞれの患者ごとに、異なる医療機関の医師が主治医となる傾向が強い。各医師が手順書を作成する必要があるため、特定行為の実践を難しくする要因になっていると習田室長は指摘する。

●在宅向け手順書例集、4行為に絞って紹介
 こうした状況を受け、厚労省は20年3月、在宅向けの特定行為に関する手順書例集を公表した。21区分38行為全てを説明するのではなく、在宅の主治医が手順書を作成する際などに参考となるよう、領域別パッケージ研修の「在宅・慢性期領域」で扱う4行為に絞った。習田室長は、とっつきやすさや現場のニーズも考慮したと説明する。
 4行為は▽気管カニューレの交換▽胃瘻カテーテルまたは胃瘻ボタンの交換▽褥瘡または慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去▽脱水症状に対する輸液による補正―。特定行為の対象となる患者や、診療補助の内容、医師への報告方法などを、それぞれフローチャートで示している。
 また、手順書例集の説明用動画では、修了生の好事例も紹介。定期的に胃瘻カテーテルと気管カニューレを交換している患者の例では、カテーテルが抜けた時など緊急交換の場合に、かかりつけ医が必ずしも毎回すぐ対応できるわけではなく、患者と医師の両者に負担がかかっていた。そのため、患者の自宅で修了生が特定行為をすることにしたところ、「緊急時に早く処置してもらえて助かるし、安心できる」という患者の声も載せている。
 今後の高齢化を見据えれば、在宅領域での特定看護師の重要性はますます高まると思われる。在宅領域の就業者数を増やしていくには、手順書例集や好事例などを広げていくことが重要ではないか。具体的な活躍のイメージが、看護師をはじめ、医師、患者の間で今後共有されていくことを期待したい。

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