リハ職による訪問看護、【看護体制強化加算】要件で抑制するとともに、単位数等を適正化―社保審・介護給付費分科会(1)

Gemmed 2020.12.10.
 来年度(2021年度)の介護報酬改定に向けた議論が、まさに佳境を迎えています。12月9日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会では「運営基準改正案」を固めたほか、改定内容に関する「審議報告」の取りまとめに向けた議論を行いました。
 年内に審議報告をまとめ、その後の改定率決定(政府が予算案編成過程で決める)を受けて、年明けから具体的な単位数設定・基準等設定論議に入ります。
 本稿では、注目される「訪問看護」に焦点を合わせ、その他の事項については別稿で報じます。

目次
 1 【看護体制強化加算】の要件に「看護職員割合6割以上」を導入
 2 介護保険制度は「皆のお金」で成り立っている、独自サービスを保険給付で創設することは許されない
 3 【看護体制強化加算】の「特別管理加算」算定割合要件を20%以上に緩和

【看護体制強化加算】の要件に「看護職員割合6割以上」を導入
  訪問看護は、医療保険と介護保険の双方から給付が行われるサービスで、地域包括ケアシステムの「要」となることが期待されています。このため、かねてより「医療ニーズの高い要介護高齢者等の在宅限界を高めるための、『24時間対応』や『重度者への対応』などの機能強化」が求められ、多くの事業所がこの期待に応えるべく取り組みを進めています。
 しかし、一部に「スタッフのほとんどが理学療法士等のリハビリ専門職である訪問看護ステーション」が存在し、重度者対応・医療的ケア・夜間や24時間の対応をほとんど行わず、「軽度者(主に要支援者)に対して日中にリハビリを提供している」実態が分かっています。制度上認められていない、事実の「訪問リハビリステーション」となっており、中には堂々と「訪問リハビリステーション」を名乗る事業者まで存在します。
「リハビリ専門職の多い訪問看護ステーション」では24時間365日対応や医療ニーズへの対応をほとんど行っていない(介護給付費分科会(1)3 201022)

 ここで留意すべきは、「リハビリ専門職種による訪問看護」すべてが否定されているわけではない、という点です。訪問看護の一環として「リハビリ専門職が訪問を行う」ことそのものは制度上も認められており、問題となっているのは、上述の「スタッフのほとんどをリハビリ専門職が占め、重度者・24時間対応を行わずに、日中の軽度者対応しか行わない」事業所です。
 介護給付費分科会、さらに診療報酬の議論を行う中央社会保険医療協議会でも、かねてからこの点が問題視され、報酬上の対応が図られてきました。来年度(2021年度)の介護報酬改定でも、訪問看護ステーションの運営基準に「訪問看護に従事するスタッフの6割以上が看護師である」という規定を盛り込む方向で議論が進められてきました。
 しかし、運営基準化した場合、この要件を満たせない事業所は「介護保険の指定」を受けることができなくなり、結果として利用者に不便が生じてしまう可能性があります。そこで、厚労省老健局老人保健課の眞鍋馨課長は「訪問看護ステーションに本来求められる機能を発揮してもらう」という戦略は変えず、「人員配置基準以外での対応を行う」という戦術変更を決断。12月9日の介護給付費分科会に、次のような新提案を行いました。

▽【看護体制強化加算】に、「指定(介護予防)訪問看護の提供に当たる従業員に占める看護職員の割合を6割以上」とする要件を新たに設ける

【看護体制強化加算】は、医療ニーズの高い要介護者への対応体制構築し、かつ対応実績のある訪問看護ステーションを評価する加算です。しかし算定率を見ると、加算Iで2.6%、加算IIで4.7%にとどまっています。後述するように加算の実績要件緩和が行われ、算定率は上昇することが期待されますが、当初案に比べて「かなり小ぶりの厳格化」になることは否めません。しかし、これは「入り口」に過ぎないと考えられます。
 この新要件には経過措置が設けられています。「看護職員割合6割以上」をクリアするために、新たに看護職員を確保しなければならないステーションもあると考えられるためです。
 経過措置は「2年間」に設定されました。つまり次の介護報酬改定(2024年度改定)の前に経過措置が消滅することを意味します。仮に、この経過措置が「3年」であった場合には、次期介護報酬改定論議の中で「経過措置を延長すべきではないか」との指摘がなされる可能性があります。経過措置を2年と設定した点から、厚労省の「訪問看護ステーションには本来求められる機能を発揮してほしい」という強い意向を伺うことができます。
 なお、【看護体制強化加算】の趣旨に照らせば、「看護職員6割以上」をクリアできていないステーションはごく一部にとどまると思われます。つまり、この見直し案だけでは、問題視される「重度者対応・24時間対応を行わない、事実上の訪問リハビリステーション」には大きな影響は出ず、事実上の訪問リハビリステーションが「訪問看護ステーションに本来求められている機能」に逆行する状態が続く可能性があります。その場合には、次期改定において、今回の見直しを「入り口」としてより厳格な対応が図られることでしょう。そうならないためにも、「訪問看護ステーションに本来求められている機能」を果たすための対応を各事業所で検討・実施していくことが期待されます。
 眞鍋老人保健課長は、あわせて「理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)が行う訪問看護・介護予防訪問看護について、評価や提供回数等の見直しを行う」考えも示しています。具体的な実施手法はこれから検討されますが、例えば「リハビリ専門職種が実施する訪問看護について一定の上限を設け、それを超過するケースについては単位数を引き下げる」ことなどが考えられそうです。
 この考え方も「入り口」であり、上述の問題点について是正が見られない場合には、次期改定(2024年度改定)でより厳格な対応が検討されることになるでしょう。
 介護保険制度は「皆のお金」で成り立っている、独自サービスを保険給付で創設することは許されない
 なお、次期改定に向けて、「訪問看護事業所からリハビリ専門職種が訪問して行う訪問看護」と「訪問リハビリテーション事業所が行うリハビリ」について、実態調査等を行い、それぞれの役割に応じたサービス提供の在り方や看護職員の確保の強化策を検討していく方向も明示されています。在宅要介護者の重度化防止・自立支援のために「軽度者への訪問リハビリを専門的に行う事業所」が必要なのであれば、こうした検討の中で「医療機関や介護老人保健施設から独立した、訪問リハビリステーションの存在を認めるべき」との主張を展開していくのが本筋です。
 わざわざ述べるまでもありませんが、介護保険は「公的保険制度」であり、40歳以上の人全員の負担、公費も考慮すれば国民全体の負担で制度が運用されています。つまり「皆のお金」を使って、サービスを提供し、利用していることから、「利用者が欲しているから」という理由だけで独自にサービスを行うことは認められません。利用者のニーズ等は千差万別であり、また財源も限られています。このためにサービス提供者・利用者・費用負担者(保険者等)が集い、全体の利益を考えて、「どういったサービスが必要か」「そのサービスにはどういう機能・役割が求められるか」「そのサービスを提供するためにどの程度の費用を支払うべきか」を議論し、決定しているのです。これが介護保険の制度に関する諸規定であり、単位数や各種の人員・設備の基準となります。
 このように、介護保険を使う場合には「利用者と事業者との関係」だけでなく、「国民全員の負担でサービス提供・利用が行えている」という観点を忘れてはなりません。この点を忘れ、さらに上述の議論を経ずに、「皆のお金」(つまり保険)を使って「独自のサービス」を展開することは許されないと言わざるを得ません。
 なお、同じく公的保険が整備されている医療の世界では「先進的な取り組みを自腹で行い、成果(治療効果など)を上げている病院」を診療報酬が後から追いかけて評価する」ケースが多々あります(新点数、新加算はほとんどこのように創設される)。介護事業所・施設でもこうした視点でのサービス提供が期待されます。

【看護体制強化加算】の「特別管理加算」算定割合要件を20%以上に緩和
【看護体制強化加算】については、前述のとおり算定率が非常に低いという課題があります。この背景には「実績等の要件が厳しすぎる」ことがあるようです。
 実績要件としては、現在(1)算定前6か月間、利用者の占める【緊急時訪問看護加算】算定者割合が50%以上(2)算定前6か月間、利用者に占める【特別管理加算】算定者割合が30%以上(3)算定前12か月間、【ターミナルケア加算】算定者数が5人(加算IIでは1人)以上―と設定されています。

【看護体制強化加算」では、【特別管理加算】の算定割合30%を6か月継続しなければならないという要件がある(介護給付費分科会(1)1 201022)

 とりわけ(2)の【特別管理加算】実績要件が厳しいとの指摘が多くなっています。【特別管理加算】は、在宅のがん患者や気管切開患者、重度の褥瘡患者などへの対応を行うステーションを評価する加算ですが、重度者ゆえに「死亡」や「施設入所」となるケースも少なくなく、また優れたケアによって改善するケースもあります。このため、厚労省の調査では「2018年9月時点に【特定管理加算】算定者割合が30%以上であった事業所」のうち、「6か月分継続して30%以上をクリアできた」ところは46.5%にとどまりました。加算の継続算定の難しさが伝わってきます。

【特別管理加算】の算定割合30%以上を継続して維持することは難しい(介護給付費分科会(1)2 201022)

 このため、眞鍋老人保健課長は(2)の実績要件について、「30%以上」から「20%以上」に緩和する考えを明示しています。上述のように算定率が上がってくることが期待されます。
 ただし、このように要件緩和となる点、介護予防訪問看護では(3)のターミナルケア加算要件が盛り込まれていない点を踏まえて、「単位数の引き上げ」が同時に行われます。
 さらに眞鍋老人保健課長は、▼退院・退所当日の訪問看護について、現行の特別管理加算の対象に該当する者に加え「主治医が必要と認める場合」にも算定を可能とする▼認知症に係る取組の情報公表の推進(研修受講状況などを介護サービス情報公表制度で公表する)▼特例居宅介護サービス費による地域の実情に応じたサービス提供の確保(特例居宅介護サービス費等の対象地域と特別地域加算の対象地域について、自治体からの申請を踏まえて、それぞれについて分けて指定を行うなど)▼サービス提供体制強化加算の見直し(より長い金属年数の区分を設ける)▼テクノロジーの活用によるサービスの質の向上や業務効率化の推進(別稿で詳述)▼サービス付き高齢者向け住宅等における適正なサービス提供の確保(事業所と同一の建物に居住する利用者に対してサービスを提供する場合には、当該建物に居住する利用者以外に対してもサービス提供を行うよう努めることを求めるなど)―といった見直し案を提示しています。

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