すべての生活ショートに外部医療機関・訪問看護STとの連携を求め、老健施設の医療ショートの報酬適正化―社保審・介護給付費分科会(3)
Gemmed 2020.11.18.
短期入所生活介護(生活ショート)について、一部の事業所に求められていた「看護職員配置」義務を廃止するとともに、すべての生活ショートで「外部の医療機関や訪問看護ステーションと連携して看護体制を確保する」ことを要件化してはどうか―。
また生活ショートにおける個別機能訓練を充実するために、外部リハビリスタッフが「ICを利活用」して助言・指導を行うことを【生活機能向上連携加算】の中で評価してはどうか―。
短期入所療養介護(医療ショート)については、老健施設における単位数を引き下げるとともに、医学的管理や指導を十分に行う事業所を【総合医学管理加算】として評価することにしてはどうか―。
11月16日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会では、こういった議論も行われました(同日に開催された訪問看護に関する議論の記事はこちら、通所リハビリ・訪問リハビリに関する記事はこちら)。
目次
1 生活ショート全般について、外部の医療機関や訪問看護との連携を要件化してはどうか
2 生活ショートでも、ICT活用した【生活機能向上連携加算】を算定可能に
3 老健施設の医療ショート、医学的管理等の濃淡で報酬にメリハリをつけてはどうか
生活ショート全般について、外部の医療機関や訪問看護との連携を要件化してはどうか
短期入所系サービス(生活ショート、医療ショート)は、在宅生活を送る要介護者・要支援者の状態悪化や、家族介護者のレスパイトの際に一時的な入所を可能とするサービスです。「要介護度が高くなっても住み慣れた居宅での生活を継続可能とする」(いわゆる在宅限界を高める)ために極めて重要なサービスと言えます。
まず短期入所生活介護(生活ショート)についての精緻な見直し方向を見てみましょう。厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課の笹子宗一郎課長は、次の2つの方向を指し示しました。
(1)看護職員配置について、生活ショート事業所の類型・定員の別によらず「外部事業所との密接かつ適切な連携」による確保することを要件化する
(2)【生活機能向上連携加算】について、▼外部リハビリ事業所等のスタッフが訪問せず「ICT利活用による状態確認・助言」を行うことも評価対象とする▼外部リハビリ事業所等の連携策を見つけやすくするために、「都道府県・保険者が事業所間の調整を支援する」仕組みを設ける
まず(1)は、すでにGem Medでお伝えしたとおり、「一部の生活ショートでのみ義務付けられている看護職員配置義務を廃し、すべての生活ショートにおいて、他事業所と連携して必要な看護体制を確保する」ことで、生活ショート全体としての「医療ニーズ対応能力」向上を図るものです。
現在、「併設型かつ定員20名以上の事業所」では看護職員配置が義務付けられています。しかし現場からは「看護職員の確保が非常に難しい」という声が出ていること、あわせて「他形態の生活ショート」とで医療的ケアの実施状況に全体として大きな差はないという調査結果があることを踏まえ、「併設型かつ定員20名以上の事業所」での看護職員配置義務を廃止する方向を笹子認知症施策・地域介護推進課長は示しています。
ただし、生活ショート全体での看護力強化を目指すために、すべての生活ショートで「外部事業所との密接かつ適切な連携によって看護職員を確保する」ことが要件化されます。具体的には、通所介護の規定を参考に、▼病院、診療所、訪問看護ステーションとの連携により、看護職員がサービス提供⽇ごとに「利⽤者の健康状態の確認」を⾏う▼病院、診療所、訪問看護ステーションとの間で、「当該事業所へ駆けつけることができる体制や適切な指⽰ができる連絡体制などを構築」する―ことを求めるものです。
生活ショートすべてにおいて「外部医療機関・訪問看護ステーションとの連携による看護職員確保」を義務付ける(介護給付費分科会(3)1 201116)
この点、小泉立志委員(全国老人福祉施設協議会理事)らは見直し方向に賛意を示しましたが、岡島さおり委員(日本看護協会常任理事)は「人員確保が難しいとの理由で看護職員配置義務を廃したのでは、スタッフの負担が増加するとともに、ケアの質も下がることが懸念される。外部医療機関等との連携が必要か否かの判断は配置看護師が行うべきである」と述べ、改めて反対意見を表明しています。さらなる調整が待たれます。
生活ショートでも、ICT活用した【生活機能向上連携加算】を算定可能に
また(2)の【生活機能向上連携加算】は、生活ショートの事業所を、外部のリハビリ事業者や医療機関のリハビリ専門職が訪問し、生活ショートスタッフと共同して利用者の状態評価(アセスメント)を行い、個別機能訓練計画を作成することを加算として経済的に評価するものです。専門的な視点での個別訓練が行われることで、利用者のさらなる機能向上が期待されます。
この点、訪問介護や小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護では「外部のリハビリ専門職が、事業所を訪問せず、ICTを利活用して(例えばビデオ画像を分析するなどして)、利用者の状態を把握し、機能訓練計画への助言・指導を行う」ことでも加算の算定が可能です(ICTを活用した場合には月に100単位、実際に訪問する場合には200単位)。
このICT利活用による低めの加算を生活ショートにも導入することを笹子認知症施策・地域介護推進課長は示しているのです(ほか、通所介護でも同様の見直しを提案)。
これらの方向に異論・反論は出ておらず、厚労省で詳細を詰めていくことになるでしょう。
生活機能向上連携加算の取得に向けて「外部リハビリ事業所」を見つけやすくするための工夫を行う(介護給付費分科会(3)2 201116)
老健施設の医療ショート、医学的管理等の濃淡で報酬にメリハリをつけてはどうか
短期入所療養介護(医療ショート)は、医療機関(病院・診療所)または介護老人保健施設が実施する「医療ニーズが高い在宅要介護者」へのショートステイサービスです。
利用者の医療ニーズが高いことを踏まえて、生活ショートに比べて高い報酬設定が行われていますが、介護老人保健施設では「利用目的が生活ショートと変わらない、医療的ケアの実施状況も生活ショートと変わらない」ことが分かり、厚労省老健局老人保健課の眞鍋馨課長は、次のような見直しを行うことを提案しています。
▽老健施設の医療ショートについては、基本報酬を引き下げる
▽ただし、▼医師が入所に際して必要な診療、検査等を行い、診療方針を定めて文書で説明を行う▼医師を中心とした多職種共同により診療計画を策定する▼診療計画について、入所から3日以内に、入所者に文書で説明する▼退所時に、当該入所者の主治医に対して診療状況の情報提供を行う—場合には、新設する【総合医学管理加算】(仮称)で評価する
老健施設の医療ショートと、特養ホームの生活ショートとで、利用目的に大きな違いはない(介護給付費分科会(3)4 201116)
老健施設の医療ショートと、特養ホームの生活ショートとで、医療的ケア「なし」の割合は8割程度で同程度である(介護給付費分科会(3)5 201116)
医学的管理・医療的ケアの実施状況を踏まえたメリハリのある報酬設定とするものですが、東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)や江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「基本報酬は配置スタッフの人件費などを勘案するものである。医療ショートを行う介護老健施設の人員配置は、生活ショートを行う介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)とまったく異なり、基本報酬の引き下げは容認できない」と強く反対しています。今後の議論の行方を見守る必要があります。
また医療ショートに関しては、【緊急短期入所受入加算】の算定可能日数に関して、現行の「原則7日以内」を維持したうえで、利用者家族が急病になるなどやむを得ない場合には「14日以内まで認める」との見直しが行われます。すでに生活ショートではこうした算定可能日数となっており、医療ショートもこれに合わせるものです。
医療ショートにおける緊急ショートの算定可能日数を生活ショートにあわせる(介護給付費分科会(3)3 201116)
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すぐに考えていないけれど、少しでも御関心があれば、とりあえず雑談させて下さいませ。