訪問看護ST、「看護師6割以上」の人員要件設け、リハ専門職による頻回訪問抑制へ―社保審・介護給付費分科会(1)

Gemmed 2020.11.17.
 訪問看護に求められる「機能強化」方向と逆行する「事実上の訪問リハビリステーション」を是正するために、一定の経過措置を置いた上で訪問看護ステーションに「看護師割合6割以上」の人員配置要件などを設ける―。
 医療ニーズの高い重度者対応体制を構築する訪問看護ステーションを評価する【看護体制強化加算】について、要件を緩和して算定しやすくする。ただし、それに合わせて単位数の引き下げを行う—。
 11月16日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会で、こういった方向に向けた議論が行われました。

目次
 1 一定の経過措置を置いた上で、訪問看護ステーションに「看護師6割以上」の人員要件
 2 看護体制強化加算、算定要件を緩和し、単位数を引き下げ

一定の経過措置を置いた上で、訪問看護ステーションに「看護師6割以上」の人員要件
 来年度(2021年度)の介護報酬改定に向けた議論がまさに佳境を迎えつつあります。11月16日の介護給付費分科会では、これまでの議論を踏まえて「見直し方向」をさらに精緻化しています。
 11月16日の介護給付費分科会では、▼地域密着型サービス▼通所・短期入所系サービス▼訪問系サービス—について「精緻化した見直し案」が提示されました。本稿では「訪問看護」に焦点を合わせ、順次、他サービスについても別稿で見ていきます。
 まず注目される「事実上の訪問リハビリステーション」対策としては、▼一定の経過期間を設けた上で、人員配置基準に「看護職員6割以上」の要件を設ける▼リハビリ専門職による訪問看護費の単位や提供回数などを見直す―方向が厚労省老健局老人保健課の眞鍋馨課長から示されています。
 訪問看護については、医療ニーズの高い要介護高齢者等の在宅限界を高めるために「24時間対応」や「重度者への対応」などの機能を高めることが求められており、多くの訪問看護ステーションがこの方向に向けた努力を行っています。
 しかし、一部にある「スタッフの多くが理学療法士等のリハビリ専門職である訪問看護ステーション」は、重度者対応・医療的ケア・夜間や24時間の対応をほとんど行わず、「軽度者(主に要支援者)に対して日中にリハビリを提供している」ことが分かっています。制度上認められていない「訪問リハビリステーション」化している状況が伺えます。

「リハビリ専門職の多い訪問看護ステーション」では24時間365日対応や医療ニーズへの対応をほとんど行っていない(介護給付費分科会(1)3 201022)
「リハビリ専門職による訪問看護」では、医療的ケアは少ない(介護給付費分科会(1)4 201022)
要支援者への「リハビリ専門職による訪問看護」では、医療的ケアは非常に少ない(介護給付費分科会(1)5 201022)

 従前から、この「事実上の訪問リハビリステーション」の存在が問題視され、診療報酬・介護報酬改定での是正対応が行われていますが、現場で目立った「是正に向けた動き」は見られていません。そこで来年度(2021年度)の介護報酬改定でも同様の見直しを行う方向性が示されたものです(2020年度診療報酬改定における対応に関する記事はこちらとこちら)。
 将来的には「スタッフの6割以上が看護師」という要件を満たさない場合には、介護保険の訪問看護ステーションとしての指定を受けられなくなるため、計画的に「看護師の確保」等を行っていく必要があります。関連して安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は「本来は看護師割合8割程度とすべき」とコメントしています。
 この見直し方向に対し、「医師の処方に基づいて必要な訪問を行っているだけである」との反対意見もあります。
 この点、問題視されているのは「リハビリ専門職による訪問看護」ではありません。訪問看護ステーションの枠組みを使いながら、「軽度者(主に要支援者)を中心に、日中にのみリハビリを提供している」状況について「訪問看護の趣旨(24時間対応や重度者対応)に反している」と強く批判されているのです。リハビリ専門職が「訪問看護の一環」としてサービス提供を行うことには何らも問題のないことを眞鍋老人保健課長も確認しています。
 また「事実上の訪問リハビリステーション」を利用する者への配慮を指摘する声もあります。確かに利用者に不利益が及ぶことは極力避けなければなりません。ただし、指定訪問看護も、「保険」サービスの1つである点を忘れてはなりません。
 公的介護保険制度は、40歳以上の者が拠出した保険料と公費(税金)を財源として、要介護・要支援者に必要なサービスを提供する仕組みです。財源は限られているために「公平な配分」が必要であり、その配分ルールを関係者で話し合い「介護報酬」として定めているのです。訪問看護については、この話し合いの中で「24時間対応や医療ニーズの高い重度者への対応が重要であり、その機能を高めていく」方向が確認されています。「別の方向に進みたい」と考える事業所は、相応の手続(その考えを話し合いの中で認めてもらう。別の枠組みに移行するなど)を経る必要があるのです。制度の趣旨・ルールを誠実に遵守したサービス提供が行われることが期待されます。
 なお、訪問リハビリが必要な利用者に対しては、介護保険には「訪問リハビリ」サービス(医療機関、介護老人保健施設が提供する)がきちんと位置付けられており、また市町村の行う地域支援事業にも機能強化に向けたサービスが用意されていることも忘れてはなりません。

看護体制強化加算、算定要件を緩和し、単位数を引き下げ
 このほか訪問看護については、次のような見直し方向案が示されており、さらなる検討が進められます。
▽主治医が認めた場合には、退院当日にも「介護保険の訪問看護」提供を可能とする

退院日当日の訪問看護費・訪問看護療養費の算定ルール(介護給付費分科会(1)6 200819)

▽医療ニーズの高い要介護者への対応体制構築・対応実績を評価する【看護体制強化加算】について、▼「特別管理加算を算定した割合」要件を現在の「30%以上」から「20%以上」に緩和する▼単位数を引き下げる(要件緩和、予防給付ではターミナルケア要件が課されてないことを踏まえて)―

【看護体制強化加算」では、【特別管理加算】の算定割合30%を6か月継続しなければならないという要件がある(介護給付費分科会(1)1 201022)

▽人員基準は「従うべき基準」を維持したうえで、人員確保が難しい中山間地域については「特例居宅介護サービス費と特別地域加算を別個申請可能とする」などの対応を図る

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