【山形】看護職に心ない差別 県協会、関係機関に聞き取り

山形新聞 2020年5月26日

 新型コロナウイルスの治療を担う県内の感染症指定医療機関の看護職に対し、差別的な扱いや言動があったとの報告が県看護協会に寄せられていたことが25日、分かった。子どもの保育施設への登園や付き添いを拒否されたり、家族内で帰宅を拒まれたりするケースもみられた。同協会は「自信と誇りを持って仕事に向き合えるよう、県民にはエールをお願いしたい」と訴えている。
 「感染リスクがある。(子どもを)登園させないでほしい」「仕事を取るのか、家庭を取るのか」。保育施設や家族から看護職に浴びせられた言葉だ。同協会は本県で感染が拡大していた4月上旬、独自に県内五つの指定機関に聞き取りを行った。全国的に差別的な扱いなどが問題となっていたからだった。
 同協会によると、勤務する看護師が保育施設側から園児や職員への感染リスクを指摘され、子どもの登園や付き添いを拒否されたケースは3件あった。
 仕事と家庭のどちらを取るのかと迫られた事例以外にも、看護職は同居家族から心ない言葉を向けられていた。「感染するから家に帰ってこないでほしい」と言われ、その看護職は家族にうつしてしまうのではないかとの思いもあり、勤務後に宿泊施設を利用したという。家族から「食事は別に」と求められたケースも確認された。
 さらに、看護職の妻を持つ夫が職場で「うつさないでくれ」と同僚に言われた事例もあったという。
 こうした深刻な実態を受け、県内の指定機関の一部は、院内にメンタルケアチームを新たにつくり、精神科医や臨床心理士などが差別的扱いを受けた看護師の相談を受け、不安を取り除く試みを始めている。
 日本赤十字社は感染拡大を受け、患者らに対応する職員のサポートガイドを作成。ウイルスによってもたらされる「社会的感染症」として嫌悪や差別、偏見を生み出す危険性を指摘している。
 県看護協会の井上栄子会長は山形新聞の取材に対し「24時間365日、患者に寄り添ってケアするのが看護職。偏見や差別的扱いがあることは残念でならず、離職を引き起こしかねない」と危惧する。その上で、県民に看護職へのエールを求めた。今後も医療機関から聞き取りなどを行い、実態把握を続けていく考えだ。

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