胃ろう選ぶ前に機能評価を 言語聴覚士が手引書作成 チーム医療で支える

共同通信 2020.5.13

 高齢者で口から食事を取れなくなると、おなかから胃にチューブを入れて食べ物を送り込む「胃ろう」が選択肢の一つとなる。ただ、食べられないから胃ろう、と短絡的に考えてはいけない。胃ろうを設けるかの判断をする前に、どうすれば食べられるのかを確かめるのが先決。のみ込む機能を評価し、食べられる物や状態を考え、リハビリテーションで機能を回復させようとするチーム医療の試みを取材した。

 ▽誤嚥(ごえん)の危険性
 北九州市の戸畑共立病院は、患者に多い高齢者の誤嚥を予防しようと2011年「摂食嚥下サポートチーム」を設けた。加藤達治副院長(呼吸器内科)は「高齢でも食べる楽しみを保ってもらいたい」と話す。
 加藤さんによると、高齢でなくとも脳卒中後や口腔がんの手術後などに食事を取ると、気管に食べ物が入る「誤嚥」を起こすことがある。高齢者では、食事中だけでなく寝ている間に唾液や食べかすによる「不顕性誤嚥」が起きるようになると肺炎を繰り返し、重症化しがちだという。
 同病院では誤嚥性肺炎の患者の平均年齢は85歳。加藤さんは「糖尿病や脳血管障害、呼吸器疾患などの合併症も抱えていると直ちに生命の危機につながる」とした。
 サポートチームには医師や歯科医師のほか看護師、言語聴覚士、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士などが参加。週に1回はそろって患者を回診し、治療やリハビリ、食事について意見交換する。

 ▽検査機器なくても
 古田功彦同病院歯科口腔外科部長は「胃ろうは最後の手段と思われており、実際にそうした例が多いが、リハビリによる機能回復によって、胃ろうを外すことができる患者もいる」と強調する。
 胃ろうを設けるかどうかを決めるにはのみ込む機能の評価が必要だ。バリウムを混ぜた食事が喉を通過するのをエックス線で撮影したり、鼻から内視鏡を入れて実際にのみ込むところを観察したりする。
 古田さんは「検査や機能評価の現場に家族も立ち会ってもらうようにしてから、結果的に胃ろうを選択する場合でも、納得を得やすい」という。
 同病院リハビリテーション科の大森政美さんは、検査機器がなくても患者の嚥下機能を評価できる手順をマニュアル(手引書)にまとめた。大森さんは摂食嚥下領域の専門研修を受け、認定された言語聴覚士だ。
 手引書では意識や発声、せき反射、舌の筋力、つばののみ込みなどを確認した上で、可能ならとろみの付いた水やゼリーをのんでもらい、丁寧に観察する。評価点数に応じて、普通の食事が食べられるのか、刻んだりとろみを付けたりする必要があるのかなどを判定する。全く食べられず胃ろうを設けても、少量を味わうことはできるという。
 ▽普及への課題
 大森さんはこの手引書を病院ウェブサイトで公開したほか、高齢者施設の職員や介護職への講習会で紹介し、普及を図る。「すべての人に、わずかでも食べられるようになってほしい」と話した。
 機器を使った機能評価やリハビリは必ずしもどこの医療機関でもできることではないようだ。
 日本言語聴覚士協会副会長の長谷川賢一東北文化学園大教授によると、全国の言語聴覚士は約3万3千人。そのうち、摂食嚥下の認定言語聴覚士は約400人だ。「高齢化で嚥下リハビリの需要は高まる一方だが、高齢者施設や介護現場での需要を考えればまだまだ足りない」という。医療保険制度の拡充や、所属の言語聴覚士を研修に派遣する医療機関の意識、理解も求められるとした。
 言語聴覚士が所属する医療機関は、同協会ウェブサイトで検索できる。

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