搬送7時間、70病院に断られ 「ご自宅で…」 感染恐れる病院、板挟みの救急隊

毎日新聞 2020年4月16日

新型コロナウイルスへの感染が疑われる119番があった際の搬送のイメージ
 新型コロナウイルスの感染者の急増で医療機関が逼迫(ひっぱく)するなか、感染疑いがあるとして救急搬送された患者が、病院に受け入れを断られるケースが相次いでいる。ベッドや人手が足りないという事情もあるが、病院側が院内感染を恐れていることも背景にあるとみられる。受け入れ先探しに何時間もかかった揚げ句、患者が自宅に帰される例もあり、現場から悲鳴が上がる。
 「受け入れは可能ですか」「専用の病室がないので無理です」。13日夜、2次救急医療機関である東京都内の病院では、感染疑いの男性(88)を受け入れる病院を探そうと救急隊員が電話をかけ続けていた。
 男性は同日夕、発熱の症状があってこの病院に搬送された。肺炎と判明し、新型コロナの感染疑いが極めて高いと診断された。しかし、同病院には感染者の受け入れ設備がなく別の医療機関を探す必要があった。
 都内の病院にはすべて断られ、神奈川県や千葉県にも手を伸ばした。院長が個人的に親しくしている病院にもお願いした。7時間以上かけ、約70の病院に要請したが、受け入れ先は見つからなかった。その間、男性は車椅子で病院1階の廊下で待ち続けた。
 「亡くなるリスクもあるが、ご自宅で様子をみてもらえますか」。午前0時過ぎ、院長は付き添いの息子にそう伝え、搬送先を探す姿を見ていた息子は受け入れた。
 ただ、帰宅も簡単ではなかった。東京消防庁の救急車は使えず、民間の救急車は10万円以上かかる。感染疑いが濃厚でタクシーも利用できず、息子がレンタカーを手配した。帰宅したのは午前2時を過ぎていたという。
 男性の帰宅後、院長は院内の消毒作業に追われた。「感染者を受け入れる準備ができている病院は少なく、どこも院内感染を最も恐れている」と打ち明ける。
 14日、男性は再び119番で救急車を要請。今度は病院が見つかり、墨田区内の医療機関に搬送された。検査の結果、新型コロナの感染が確認されたという。
 東京消防庁などによると、都内で3月に救急搬送の受け入れを5カ所以上断られたり、搬送先の決定までに20分以上かかったりしたのは931件(前年同月比1・3倍)だった。4月は1~11日で830件にのぼる。
 首都圏の救急隊員の30代男性によると、軽症者の場合、受け入れ先を見つけるのは難しいという。「あまりに時間がかかり搬送辞退を申し出る人もいる」とこの男性は語る。感染者を搬送した場合、救急車はその後、約1時間かけて消毒しなければならない。男性は「緊急の患者に救急車が回らなくなっている。感染疑いの人はまずは保健所や相談ダイヤルに連絡したり、近くの病院に問い合わせたりしてほしい」と訴える。

搬送困難症例、大阪では前年比15倍
 新型コロナウイルスの感染が疑われ、病院に受け入れを断られるケースは大阪市でも急増している。4月上旬に同市消防局が救急搬送した発熱患者について、「5カ所以上の病院から受け入れ拒否」または「搬送先が20分以上決まらず」に該当する救急搬送困難症例の件数は、前年同時期に比べて15倍に増えた。
 同消防局が2019年と20年の4月1~10日のデータを比較。困難症例について、19年は発熱患者の救急搬送363件中わずか4件(構成比1・1%)だったが、20年は428件中60件(14・0%)に上った。また、発熱を含む急病患者全体では困難症例が19年の106件(2・9%)から20年は180件(5・5%)に、救急搬送全体では19年の195件(2・9%)から20年は233件(4・3%)に、それぞれ増えた。
 同消防局の担当者は「発熱患者の受け入れ拒否はこれまでほとんどなかった。設備が整っていない医療機関では、新型コロナウイルスの感染が疑われる患者の受け入れは難しいのではないか」と話している。

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