【長野】訪問看護3割強、訪問入浴1割強しか使わず 家族に重い負担 長野の医療的ケア児

毎日新聞 2020年1月28日

「支援が広がってきてはいるものの、家族の負担は非常に大きい」と語る信州大医学部の亀井智泉特任助教(左)=県庁で2019年12月17日午後2時5分、坂根真理撮影
 医学の進歩に伴い、新生児集中治療室(NICU)を退院した後も人工呼吸器や栄養剤注入など医療的ケアが必要な子ども「医療的ケア児」が増加している。厚生労働省によると全国に約2万人。そのうち、長野県内には少なくとも508人(2019年4月現在)いることが、このほど開かれた「県医療的ケア児等支援連携推進会議」で初めて明らかになった。必要な支援は届いているのか、台風19号の豪雨災害で浮かんだ課題とは――。支援者や専門家らが今後の支援策について議論を重ねた。

信州大調査「日中・緊急の預かり先」が不足
 調査は信州大医学部新生児学・療育学講座が実施。県内の市町村に調査票を郵送し、20歳未満の医療的ケア児・者の情報を収集。市町村の回答と関係機関が把握するデータを精査して、判明した。
 利用する支援サービスについて尋ねたところ、訪問看護は34・4%(115人)にとどまり、成長に伴って家族だけでは難しくなるためニーズが高いと予想された訪問入浴は15・6%(52人)と低調だった。支援が行き届かず、ケアの負担が家族に重くのしかかっている実態が浮かんだ。
 市町村が把握している、不足する支援は「日中の預かりや居場所先」(28市町村)と「緊急時の預かり先の確保」(同)が多かった。加えて、通学や通院などの「移動支援」の充実も求められている。現行の障害福祉の制度では、レジャー目的以外で移動支援サービスを受けることが難しい。そのため、医療行為ができる看護師が車に同乗した移動支援を求める声は根強い。
 母親が一人で、運転と子どもへの医療的ケアを並行しながら移動している状況について、信州大医学部新生児学・療育学講座の亀井智泉特任助教は「高速道路を運転中でも路肩に停車して、たんの吸引をせざるを得ない。スマートフォンの『ながら運転』が厳罰化されているにもかかわらず、お母さんは子どもの様子や(人工呼吸器の)モニターを見ながらのながら運転を強いられている。全国的に考えないといけない課題だ」と指摘した。

災害時の「要支援者名簿」に医療的ケア児・者の登録進まず
 台風19号の豪雨災害で負傷した医療的ケア児・者はいなかったものの、新たな課題が明らかになった。市町村が策定する「避難行動要支援者名簿」に医療的ケア児・者の登録が進んでおらず、避難の支援が及ばなかったケースがあったという。人工呼吸器などの電源がないと命を保つことができない子どもも多いが、予備電源がない自治体もあった。
 千曲川沿いにある県立稲荷山養護学校(千曲市)の片桐義章校長は、医療的ケアが必要な在校生27人のうち、「避難所へ行ったのは2人だが、1人は冠水していたので引き返した」と明かした。避難所に行っても安全には過ごせない▽荷物が多く移動を諦めた▽感染症が心配――などの声が上がったという。
 県は会議で出た意見を踏まえ、支援策拡充に向けて本腰を入れる方針。県障がい者支援課の担当者は「今後の施策に反映させたい。安心して地域で暮らしていけるように関係機関と連携していきたい」と話している。

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