【静岡】ALS患者避難「発災時支援を」 台風契機、静岡県内高まる意識 訓練参加、ケア態勢検討

静岡新聞 2019/12/16
防災訓練でケアマネジャーや地域包括支援センター職員らに見守られながら避難する男性(中央)=11月中旬、浜松市中区
 昨年秋の台風24号をきっかけに、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者など自力で歩行が困難な人の避難の在り方が問われている。市町村は災害時、一般の避難所では滞在が困難な人のための福祉避難所の設置を検討するが、災害発生直後は利用できない難点がある。ALS患者は「急に災害が起きても動けない」と不安を抱え、支援の必要性を訴える。
 福祉避難所は市町村が必要と判断した場合、介護・福祉施設に開設する2次的避難所という位置付け。このため発災直後は、ALS患者らも一般の避難所を利用するよう求められる可能性がある。
 長泉町のALS患者男性(76)は今年10月に台風19号が接近した際、町施設に避難した。妻(71)は「台風は家がガタガタ揺れて怖い。頑丈な建物の方が安心できた」と振り返る。
 男性宅の居室は2階。妻と女性ヘルパーが男性を電動リフトに乗せて1階に下ろし、隣家の住民にも荷物の運び出しを手伝ってもらった。
 避難所はベッドがなく、男性は車いすで約6時間過ごした。妻は「私一人ではとても夫を避難させられない」と周囲の人々の支援に感謝する。
 浜松市中区の男性(62)は11月中旬、地元自主防災隊の防災訓練に初めて参加した。電動車いすを自ら操作し、1人暮らしのアパートから会場の公園まで避難した。
 男性が参加を望み、ヘルパーやケアマネジャー、地域包括支援センター職員が防災隊と協議を重ねて実現した。気管を切開した男性は会話できないが、指でスマートフォンの文字を打てる。「この地域に僕がいることを知ってほしい」と参加の理由と支援の必要性を伝えた。
 県は人工呼吸器などを使う在宅患者が災害や停電に備えて医療機関に一時入院する「避難入院」の態勢づくりを検討する必要があるとして、年度内にも患者や病院にアンケート調査を行う方針だ。
 日本ALS協会県支部(浜松市)の内山悦子支部長は「医療的ケアが必要な患者はどこに避難すればいいのか、行政は明確に示してほしい」と訴える。

 <メモ>筋萎縮性側索硬化症(ALS) 手足や呼吸に必要な筋肉が徐々に痩せ、力が弱くなっていく難病。進行すると人工呼吸器が必要になる患者が多く、会話や食べ物の飲み込み、歩行も困難になるが、進行の早さは患者により異なる。7月の参院選では患者の舩後靖彦氏(れいわ新選組)が当選し、発症後に国会議員になった全国初のケースと注目された。

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