訪問診療を依頼も2割程度が「回数の把握なし」中医協総会で厚労省が提示、見直しへの意見は相違

M3.com レポート 2019年11月6日 (水)配信大西裕康(m3.com編集部)

 厚生労働省は11月6日の中医協総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)で、在宅医療の現場で訪問診療を提供する医療機関同士の情報共有を促進するために必要な診療報酬の見直しについて意見を求めた。議論の材料として、「主治医」に当たる医療機関が他の医療機関に訪問診療を依頼している場合、2割強~3割弱の医療機関は依頼先が初月に訪問診療した「回数を把握していない」などの調査結果を示した。診療側の委員からは、「情報共有をさらに促進するため、依頼先からの情報提供の評価を検討すべき」との意見が出たが、保険者側の委員は「既存点数の算定要件に盛り込むべき」との考えを示した(資料は、厚労省のホームページ)。
 厚労省は訪問診療について、2018年度診療報酬改定の効果などを検証するために実施した調査結果を提示。他の医療機関から依頼を受けて訪問診療した場合に算定できる「在宅患者訪問診療料I」を2018年度改定で創設したことなどを念頭に、他の医療機関に訪問診療を依頼した患者に対して依頼先が初月に何回の訪問診療を行ったか聞いたところ、病院では最も多かった「月1回」(46.2%)に次ぐ回答が「回数を把握していない」(23.1%)、診療所では「回数を把握していない」(27.3)が最も多く、次いで「月1回」(24.7%)などとなった。訪問診療を依頼した場合に依頼先が継続する期間(見込み期間も含む)は、病院、診療所ともに「6カ月超」(46.2%、41.6%)が最も多かった。
 日本医師会常任理事の松本吉郎氏は、依頼先が訪問診療した回数を把握していない医療機関が存在する事実は認めつつも「(残りの7割弱~6割強という)多くの医療機関では把握している」と指摘。その上で、「訪問回数は把握していない場合も、通常は依頼元に診療内容などの情報を提供して適切に連携が図られていると思う。医療機関のこうした取組に対する評価、連携が少し弱いところへのインセンティブとしても、依頼先からの情報提供の評価を検討すべき」と求めた。
 「在宅患者訪問診療料I」に関しては、算定期間の「原則6カ月」と算定回数限度の「月1回」も見直すよう求めた。厚労省が示した調査結果で、訪問診療の依頼先が訪問診療を継続する期間(見込み期間も含む)は「6カ月超」(病院46.2%、診療所41.6%)が最も多く、訪問回数については、初月だけでも「2回」(同23.1%、22.1%)などの回答があった。「多様なニーズへの対応ということで必要な見直しを検討すべき」との考えだ。
 全国健康保険協会理事の吉森俊和氏は、「在宅患者訪問診療料I」の算定要件に「依頼元への情報提供」を盛り込むなどの見直しが必要との意見。「医療機関同士の専門的な情報共有は必要で、回数を把握していない状況は、どのような診療を行ったかという正確な情報把握できているのかという疑問が残る」などと述べた。健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏も依頼先との情報提供を要件化すべきと主張。「まずは依頼先との情報提供を要件化し、(算定)期間もきっちり縛るべき」との考え。「前回の改定で(点数新設に)反対だったが、医療現場における例外的な対応という説明があったので折れた」、「蓋を開けてみたら訪問回数を把握していないところがあり、『6カ月超』は4割もある。例外的な対応ではないので、きっちりと縛るべき」などとも述べた。
 在宅医療に関して厚労省はこのほか、「現状と課題」として下記3点も示し、必要な見直しについて意見を求めた。

・在宅療養支援病院について、24時間往診が可能な体制の整備が困難であるとの現場の声がある。
・医療資源の少ない地域において、在宅医療を行う医療機関の許可病床数に係る要件緩和等が行われてきているところであるが、常勤職員の確保が困難であるとの現場の声がある。
・在宅患者訪問褥瘡管理指導料について、初回のカンファレンスにおける評価がなされていない。

在支病の往診担当医は「オンコールで」
 在支病については、松本氏が、▽施設基準として求めている「往診を担当する医師」の緩和、▽「ターミナルケア加算」の見直し、▽医療資源が少ない地域でのさらなる要件緩和――の3点を要望。往診担当医については、現行の「当該病院の当直体制を担う医師と別であること」を「オンコールでの待機」などへ緩和するよう求めた。在支病が算定する「ターミナルケア加算」については、患者が「入院24時間以内」になくなった場合を対象にしている点について緩和を要請。在宅医療の現場が疲弊している状況を救うため「早めの入院」などにも対応できるようにすべきとの考えを示した。
 医療資源が乏しい地域における要件緩和の拡大では、機能強化型在支病の基準として求めているうち▽常勤医師、▽過去1年間の緊急往診の実績、▽過去1年間の看取りの実績――の3つについて緩和が必要と訴えた。特に看取りについて言及し、「変動が大きく、自助努力が及ばない範囲」と指摘し、2年単位にするなどの弾力化が必要と述べた。
 褥瘡管理に関する初回カンファについては、評価できるように見直すとの考えで診療側と保険者側の委員が概ね同意。また、「在宅患者訪問褥瘡管理料750点」が対象にする患者の要件を緩和する方向性でも一致していた。現行は、多職種が共同して在宅における褥瘡管理を実施している場合、初回カンファから起算して6月以内に限り患者1人当たり2回算定できる。ただ、厚労省が日本褥瘡学会の実態調査結果をまとめた結果、治癒に要した平均期間は24.8カ月と1カ月を切るため、計画的な対応を実施しても同点数を算定できない場合が生じる。吉森氏は、1カ月ごとに算定できるような見直しが必要との考えを示した。

 現行、同点数の対象患者は7パターン。
ショック状態のもの
重度の末梢循環不全のもの
麻薬等の鎮痛・鎮静剤の持続的な使用が必要であるもの
強度の下痢が続く状態であるもの
極度の皮膚脆弱であるもの
皮膚に密着させる医療関連機器の長期かつ持続的な使用が必要であるもの
褥瘡に関する危険因子があって既に褥瘡を有するもの

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