東邦HD・伊藤室長 在宅中心の多職種プラットフォーム構築に着手 認知症カフェなど活用
ミクスオンライン 2019/10/25
東邦ホールディングス地域戦略室の伊藤大史室長は10月24日、医薬品卸の次世代型ビジネススキームとして、在宅医療を核とした多職種プラットフォーム構築に着手していることを明らかにした。同社は、医療材料の分割販売や訪問看護支援システムなどのソリューションを通じ、地域軸で顧客支援を展開してきた。伊藤氏は、地域包括ケアシステムが進展するなかで、医療・介護の各プレーヤーがそれぞれの機能を最大限発揮するための多職種連携が重要になると指摘。医薬品卸としては、「顧客に機能を提案していくことが重要になる」と強調した。そのうえで、“街づくり”の視点で、健康寿命の延伸や認知症対策に取り組んでいると説明。地域サロンや認知症カフェを通じて地域住民の声を聴くことにも自ら取り組んでいることも紹介し、「“未来の町内会づくり”でのアプローチを考えている」と意欲を語った。
伊藤氏は、全ての団塊世代が後期高齢者となる2025年の医療需要を見据え、「圧倒的に在宅医療の需要が高まっている。事業の変化を考えないといけない」と強調した。特に都市部は、在宅医療の増加傾向が顕著だとし、「何も関心がないとチャンスを取り逃す。在宅に取り組むプレーヤーとどうコンタクトを取るかだ」と述べ、地域医療を担う医薬品卸のビジネス環境の変化に危機感を露わにした。
◎プライマリの概念は拡大する―目の行き届かない課題にどう対応するか
医療システムが、医療機関完結型から地域完結型へとシフトするなかで、地域の実状も変革の時を迎えている。伊藤氏は、在宅や介護施設などで寝たきりの患者など、医療依存度の高い患者が病院から地域に移動することに着目。開業医や薬剤師などのいわゆる、プライマリ市場も広がると見通した。医薬品や医療機器を供給する観点からは、医療従事者の目の届く院内とは異なり、患者のアドヒアランスなどに課題があることも指摘した。
一方で情報提供の観点からは、製薬企業のMR数が減少に転じており、病院市場に軸を置くことが想定される。伊藤氏は、「医薬品卸として、効率的にプライマリにアプローチしないといけない」との考えを表明した。
◎4つのフェーズで取り組み 地域包括ケア時代の薬局をサポート
東邦HDとして、①地域包括ケアシステムへの「医療材料流通改革」、②多職種の連携作り、③在宅医療従事者へのICTによる働き方改革支援、④みらいの町内会を描く「まちの機能作り」-の4つのフェーズにわけて取り組みを進めてきたことを紹介した。
医療材料の分割販売サービス「ENIFme(エニフ ミー)」には、全国1万3000施設が登録する。伊藤氏は、このプラットフォームを通じ、「在宅医療を担うプレーヤーを見える可できる」と述べた。さらに、地域包括ケアシステムの進展を見据え、プレーヤーのなかで、唯一販売業である薬局が医療材料やOTC、健康食品、介護食などを提供し、かかりつけ機能を発揮する姿を描いた。医療機器の勉強会や薬局向けの健康食品提供サービス「e健康ショップ」などで、医薬品卸として薬局・薬剤師の機能発揮を強力にサポートする考えを強調した。展開するサービスは、病院や診療所、薬局などの施設や職種によらず同一であるのも特徴。「地域包括ケアで、共通のソリューションがあることでアプローチしやすい」との考えを示した。
◎エニフナースで訪問看護の生産性向上 残業軽減や訪問件数増加
働き方改革の視点から訪問看護向けに「エニフナース」の展開も進める。タブレット端末から看護記録の閲覧・作成できる。訪問看護向けの音声辞書を開発することで、発話から正確に記録できるのが特徴だ。記録作成にかかる時間を短縮だけでなく、リアルタイムでの情報共有もでき、業務フロー改善も期待できる。担当する、地域医療連携室の飯田彩優花氏は、実例を引き合いに、「残業の軽減や訪問件数の増加に貢献できる」と述べ、生産性向上ツールであることを強調した。
地域包括ケアシステムに対して様々なソリューションを提供してきた同社が、今後見据えるのが地域自治体・住民へのアプローチだ。勉強会などで培った医療・介護職との多職種連携を踏まえ、介護施設と協働で薬剤師による健康フェスタを開催するほか、住民向け食育教室、認知症の見守りなどにも取り組む。伊藤氏は、「介護・住民向けのサービスを通じ、“みらいの町内会づくり”のアプローチを考えている」と述べ、挑戦を続ける姿勢を鮮明にした。同氏は、幕張メッセで開催中の第2回医療と介護の総合展 地域包括ケアEXPOで講演した。
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