破綻老人ホーム、入居金いくら戻る? 再生決まっても…

朝日新聞 2019年10月23日

写真・図版未来設計が運営していた有料老人ホーム「未来倶楽部江戸川」。現在は「グッドタイムナーシングホーム・江戸川」として運営している=2018年12月撮影、東京都江戸川区

 首都圏で有料老人ホームなど三十数施設を運営し、今年1月に民事再生法の適用を申請して経営破綻(はたん)した未来設計(東京)の債権者集会が23日午前、東京地方裁判所で開かれ、再生計画案が可決された。ただ、焦げ付いた借金のうちいくらを債権者に弁済するかは決まらず、入居一時金の弁済額も確定していない。再生の道筋が決まったのに、戻ってくるお金がはっきりしないのはなぜなのか。
 介護施設では過去最大規模の破綻から約9カ月。ホームの名称は「未来倶楽部」「未来邸」から「グッドタイム(ナーシング)ホーム」に変わったものの、運営は続いていて、多くのお年寄りがいまも暮らす。「グッドタイムホーム」は、未来設計グループを破綻前に買収し、再生を手がける創生事業団(福岡市)系列の施設につく名前だ。

「運が悪かった」
 だが、戻ってくるはずの入居一時金が戻らず、苦しむ入居者の遺族がいる。
 90代の母親が数年前から未来設計のホームに入っていた首都圏在住の女性は「本当に運が悪かった」と話す。
 女性は、昨年暮れまでホーム側からの経営悪化に至る経緯を断片的にしか知らされず、今年に入って破綻を告げられた。女性の母親はその後、亡くなった。
 母親が施設に入る際に入居一時金を支払っていた。ただ、入居期間が規定より短かったため、本来なら二百数十万円が戻ってくるはずだった。
 ところが未来設計は昨年夏には債務超過に陥っていた。創業者の伊藤英子氏に毎年3億円前後の役員報酬が支払われるなどして、資金繰りがつかなくなったのだ。
 民事再生手続きが始まると、預かった入居一時金や銀行からの借り入れなどの債務(借金)はいったん凍結される。その後、債権者への弁済率などを盛り込んだ再生計画案が、裁判所が選んだ監督委員の意見などをもとに債権者の賛否にはかられる。
 未来設計の場合、7月末に再生計画案が東京地裁に提出され、8月中に入居者遺族ら債権者に具体的な弁済案が示された。

0・6%
 女性の親族のもとには8月下旬、未来設計側から弁済案を盛り込んだ「精算書」が送られてきた。それによると、本来戻される入居一時金のうち、3カ月以内に弁済される予定の額はわずか1万数千円。弁済率にして「0・6%」だった。
 しかし、「これですべて」というわけではない。
 再生計画案や代理人の弁護士によると、これはあくまで「第1回弁済」。その原資5千万円は、未来設計の運営権を買い取った創生事業団から出たもの。弁済額はさらに上積みされる可能性があるという。なぜか。
 未来設計は昨年末、伊藤氏らによる不正な会計操作で経営が悪化したとして、伊藤氏らを相手取って約22億円の損害賠償を求める訴訟を起こしている。原告側がその裁判に勝てば、新たに弁済に回せる原資が得られるという構図だ。
 未来設計に対する債権額は約49億円。このため、仮に裁判で約22億円の全額が賠償されれば、単純計算で約4割を弁済に回すことができる。

民事訴訟の行方は
 ただ、裁判の行方は見通せない。伊藤氏側は全面的に争う姿勢で、どんな判決が出てもいずれかが控訴する可能性があり、最終決着までには数年かかるかもしれない。
 さらに、仮に原告の勝訴が確定したとしても、伊藤氏側に支払える能力があるかどうかはわからない。
 過去の老人ホーム破綻では、ホームの運営を引き継いだ企業が入居一時金の返還も引き受けることが多く、「一時金が戻ってこない」という事態に至ったケースは珍しい。
 ただ今回、ホーム運営を引き継いだ創生事業団は、「資金的余裕がない」(幹部)として返還を引き受けなかった。

制度による救済も発動せず
 さらに入居者家族らが不満を募らせているのが、いざというときに一時金が戻ってくる制度が発動されていないことだ。
 未来設計も加盟していた全国有料老人ホーム協会には「入居者生活保証制度」がある。施設側が一定の拠出金を払い、いざという時には1人当たり最大500万円の保証金が出るしくみだ。
 しかし、「ホームの入居者全てが退去せざるを得なくなった場合」という条件があるため、未来設計には適用されていない。入居者のある家族はため息をつく。
 「保証制度にも再生計画にも『望み』を感じられない」

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