看多機など介護保険の地域密着型サービス、事業者参入が進み競争条件が整ってきた―厚労省

MedWatch 2019.9.24.
 介護保険の地域密着型サービスについて、報酬を独自に設定している保険者は14あり、区分支給限度基準額に独自の上乗せを行っている保険者が19ある―。
 また看護小規模多機能型居宅介護をはじめとする地域密着型サービスについて、事業者の参入が徐々に進み、競争環境が整備されてきたと見え、事業所指定を公募している保険者は、前年から大幅に減少している―。
 厚生労働省が9月17日に公表した2017年度の「介護保険事務調査の集計結果」から、こういった状況が明らかになりました。なお前年調査結果に一部訂正があり、前年調査結果との比較は訂正後の数値に対して行っています。

目次
 1 低所得者の介護保険料を減免する488市町村、「3原則」を遵守割合が低下
 2 新規の要介護認定調査、直接実施保険者は1551、委託保険者が233
 3 市町村の判断で実施できる「任意事業」、実施市町村が軒並み減少
 4 指定基準を完全には満たさない「基準該当サービス」、実施は208保険者に減少
 5 区分支給限度基準額の上乗せは14保険者に減少
 6 看多機を含めた地域密着型サービス、事業所が増加し競争環境が整いつつある

低所得者の介護保険料を減免する488市町村、「3原則」を遵守割合が低下
 介護保険事務調査は、毎年4月1日現在の(1)介護保険料(2)要介護認定(3)地域支援事業(4)給付―などを、市町村(1741)あるいは保険者(1571)別に集計したものです。介護給付費実態調査や介護保険事業情報報告などとともに、介護保険制度の実態把握、今後の制度改革(関連記事はこちらとこちら)のために重要な調査です。
 まず(1)の保険料について見てみると、65歳以上の第1号被保険者では▼年金から保険料を天引きする「特別徴収対象者」(こちらが原則)は約3166万人(前年調査結果に比べて約174万人増)▼例外的に振り込みなどで保険料を納める「普通徴収対象者」は約339万人(同38万人減)―となり、第1号被保険者の90.3%(同1.2ポイント増)が特別徴収の対象となっています。特別徴収割合が順調に増加していることが分かります。
 また低所得者の保険料を減免している保険者は488(同7減)で、全体の31.1%(同0.3ポイント減)を占めています。
 介護保険制度においては、保険料を減免する場合、▼収入のみに着目して一律に減免するのではなく、負担能力を個別に判断して減免する▼全額免除はできるだけ行わず、減額にとどめる▼保険料を減免しても、市町村の一般会計からの財源の繰り入れは行わない―という「3原則」があります。保険料の減免を行っている488保険者のうち、この3原則を遵守しているのは434保険者(88.9%)でした。3原則遵守保険者の割合は、前年度(2017年度)には92.8%でしたので、遵守率が大きく減少(マイナス2.9ポイント)している状況です。今後、なぜ3原則を守れていないのかを詳しく見ていく必要があるでしょう。

新規の要介護認定調査、直接実施保険者は1551、委託保険者が233
 (2)の要介護認定については、新規の認定調査を▼「直接」実施している保険者が1551(保険者全体の98.7%)▼事務受託法人へ「委託」している保険者が233(同14.8%)―、更新・区分変更の認定調査を▼「直接」実施している保険者が1498(保険者全体の95.4%)▼事務受託法人へ「委託」している保険者が215(同13.7%)▼指定居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)などへ「委託」している保険者が1115(71.0%)―となっています。「直接実施」と「委託」を組み合わせている保険者もあり(重複)、合計は100%にはなりません。

市町村の判断で実施できる「任意事業」、実施市町村が軒並み減少
 次に(3)の地域支援事業(任意事業)の実施状況を見てみましょう。

市町村の実施する地域支援事業は現在、次の事業で構成されています(2014年に改正)。
(i)介護予防・日常生活支援総合事業(単に「総合事業」と呼ぶことも多い)(▼介護予防・生活支援サービス事業(要支援者に対する訪問・通所サービス、配食などの生活支援サービス、介護予防支援事業)▼一般介護予防事業―)
(ii)包括的支援事業(▼地域包括支援センターの運営▼在宅医療・介護連携推進事業▼認知症総合支援事業▼生活支援体制整備事業―)
(iii)任意事業(▼介護給付費適正化事業▼家族介護支援事業―など)
 
 ここでは(iii)の「任意事業」のうちの「その他の事業」を2017年4月から18年3月の間にどの程度の市町村が実施したのかを調べています。
 それによると▼成年後見制度利用支援事業:1375市町村(市町村全体の79.0%)(前年調査に比べて54市町村・3.1ポイント減)▼福祉用具・住宅改修支援事業:832市町村(同47.8%)(同142市町村・8.1ポイント減)▼認知症サポーター等養成事業:1307保険者(同75.1%)(同24保険者・1.4ポイント減)―などとなっています。各事業とも「減少」が目立っており、その背景を詳しく分析し、必要に応じた支援を検討する必要もあるでしょう。

指定基準を完全には満たさない「基準該当サービス」、実施は208保険者に減少
 また(4)の給付に関しては、基準該当サービスの実施状況に注目してみましょう。
 地域によっては指定介護サービス(基準を完全に満たされなければ指定を受けられない)が不足するところもあることから、「介護保険法や条例の厳格な基準こそ完全には満たしていないものの、設備や人員体制を一定程度整備しており、介護サービス提供を適切に行える」と市町村が自ら認めた事業所を介護保険の適用対象とすることができ、これを「基準該当サービス」と呼びます。
 基準該当サービスを実施している保険者は208(前年調査に比べて43減)あり、全体の13.7%(同2.3ポイント減)となりました。各事業所の「指定要件を満たすための努力」によって「基準該当サービス」の出番が減っているのか、それとも別の事情があるのか、詳細な検証が待たれます。
 サービスごとに基準該当の件数を見ると、▼居宅介護支援(ケアマネジメント):38(前年調査に比べて23減)▼訪問介護:78(同19減)▼通所介護:33(同19減)▼福祉用具貸与:9(同16減)▼短期入所:107(同18減)▼介護予防訪問介護:15(同43減)▼介護予防福祉用具貸与:6(同14減)▼介護予防短期入所:54(同15減)―などとなっています。
 また、被保険者に対して介護サービスの利用券(バウチャー)を事前に交付し、これに基づいてサービスを受ける(現物給付)という仕組みを採用している保険者は9(前年調査比べて4減)あります。介護保険制度創設時には、「不正受給を避けるためにバウチャー制度を全国的に導入すべきではないか」との意見も少なからずありましたが、採用はごくわずか(2018年度時点で0.6%、前年調査に比べて0.2ポイント減)です。バウチャー制度を採用している保険者から「そのメリット」、バウチャーを廃止した保険者から「廃止の理由」を聴取することも重要でしょう。

区分支給限度基準額の上乗せは14保険者に減少
 さらに介護保険では、医療保険と異なり、市町村独自のサービスなどを追加で行うことも認められています。
 この独自サービスの実施状況を見ると、▼地域密着型サービスに市町村独自の報酬を設定している:19保険者(前年調査に比べて1増)▼区分支給限度基準額(要介護度別の、毎月の保険サービス利用上限、上限超過は自費となる)を上乗せしている:14保険者(同4減)―などとなっています。
 市町村独自の報酬設定を行っている地域密着型サービスの種類を見ると、▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護:3▼夜間対応型訪問介護:2▼小規模多機能型居宅介護:18▼看護小規模多機能型居宅介護:3―となっています(重複あり)。独自報酬とサービス整備状況や利用状況などとの関係を詳しく調べることも必要でしょう。

看多機を含めた地域密着型サービス、事業所が増加し競争環境が整いつつある
 ところで介護保険サービスのうち、定期巡回随時対応サービスなどの地域密着型サービスについては、初期の事業所乱立による「共倒れ」(サービス創設初期で認知度が低い中で、事業所数が過剰になれば利用者の安定確保が難しくなる)を防ぐために、「サービス提供事業所の指定」が行われるケースがあります。
 この事業所の指定を公募制で実施している保険者は234(前年調査に比べて178減)あり、その内訳は▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護:115(同130減)▼小規模多機能型居宅介護:143(同206減)▼看護小規模多機能型居宅介護:100(同79減)―という状況です。看多機を含めた地域密着型サービスで「供給体制が徐々に整ってきており、競争を促している」状況と考えられそうです。

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