NP課程修了者、在院日数短縮や退院割合増などに貢献 日看協、活動成果に関する試行事業の結果を公表
キャリアブレイン 2019年07月30日
日本看護協会(日看協)は30日、大学院の「NP教育課程」を修了した看護師の活動成果に関する試行事業の報告書を公表した。試行事業では、修了者が医療や介護の現場で活動することによって、病棟での平均在院日数の短縮や退院割合の増加、訪問看護での救急外来受診や予定外入院の減少などに貢献していることが示されたと指摘。一方で現在の仕組みの下では、「修了者が対応できない医療ニーズも明らかになった」としている。
米国などでは、医師からの指示がなくても一定レベルの診断や治療などを行える「ナース・プラクティショナー」(NP)という看護の資格があり、NP教育を参考にして日本では、2008年に一部の大学院にNP教育課程が設けられた。19年4月時点でそれを設置する大学院は10校、修了者は約400人に上るという。
日看協は、日本でのナース・プラクティショナー(仮称)の制度の創設を以前から求めており、その創設を検討する上で、NP教育課程の修了者の活動による効果や成果などを明らかにする必要があると判断。活動成果などのエビデンスを集めるため、病院などの協力を得て、18年6月から19年3月にかけて「パイロット事業」を実施した。
協力施設は、修了者が活動している病院や訪問看護ステーション、介護老人保健施設の計6カ所。これらの施設に、▽自施設での修了者の役割や活動内容▽修了者の活動による患者や利用者のアウトカムへの影響▽成果が修了者のどのような役割や活動に基づくものか―についてまとめた事例報告を提出してもらった。
■医師の指示がなければ、迅速な投薬につながらない課題も
その結果、例えば長崎医療センター(長崎県大村市)では、脳卒中で入院する患者107人の平均在院日数は医師群が43.6日だったのに対し、修了者群は30.1日。65歳以上の患者69人では医師群が44.3日、修了者群は31.5日だった。また、107人の退院割合は、医師群が23.3%、修了者群は50.6%。65歳以上の患者では医師群が10.5%、修了者群は44.0%で、修了者群の方が医師群よりも患者の平均在院日数が短く、退院の割合が高いことが分かった。
一方、同センターでは、修了者が脳卒中の合併症を疑い、抗菌薬での治療の必要性を検討したいと思っても、医師の指示がなければ必要な血液検査や画像検査を行えず、タイムリーに抗菌薬を投与することができないといった課題が明らかになった。
■薬剤による症状緩和、利用者が診察を受けるまで実施されず
試行事業に協力した訪問看護ステーション「はあと」(北海道恵庭市)では、薬物療法の管理が必要な65歳以上の利用者の救急外来の受診が、修了者による介入前は訪問看護100日当たり0.09回だったのに対し、介入後には0.05回に減ったほか、介入前に0.85回だった予定外入院が介入後は0.58回まで減少。介入前に0.28回だった定期外受診が介入後は0.30回に増えた。
しかし「はあと」では、状態が悪化した時などに利用者が医師の診察を受けなければ、修了者による薬剤を用いた症状の緩和が行われないという課題や、訪問看護事業所には医薬品の保管が認められていないため、利用者が脱水症状を起こした際に迅速に点滴治療を受けられないという問題が浮き彫りになった。
日看協では、現在の仕組みの下では対応できない患者や利用者の医療ニーズが明らかになったとし、それに対応するため、制度的な枠組みの検討を進める方針を示している。
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