医師の業務移管、四病協は5分野に言及 日看協は「ナースプラクティショナー(仮称)」創設を要望

M3.com レポート 2019年7月26日

 四病院団体協議会は7月26日、厚生労働省が開いた「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフティングに関するヒアリング」の場で、▽医師等との協働による薬剤師業務の拡大▽医師の包括的指示による看護師業務の拡大▽臨床工学技士の業務範囲の見直しと拡大▽医療現場における救急救命士の業務確立▽麻酔業務における(麻酔専門医以外への)タスク・シフティング――の5つを提案した。

厚労省ホームページより
 薬剤師業務の拡大については、「現行制度下でも実施できるにもかかわらず活用されていない」業務があると指摘し、「医師の包括的指示と同意がある場合は、医師の最終確認や再確認なしに薬剤師が主体的に業務を行えるよう明確化」すべきとの考え。具体的な業務の例として下記の4つを挙げた。

・医師との協働によるプロトコルに基づいた投薬の実施
・薬剤選択、多剤併用薬に対する処方提案
・副作用の状況把握、服薬指導
・抗菌薬の治療コントロール処方の提案

 看護師業務の拡大では、研修修了者を対象に医師の包括的指示で医行為の実施を認めている「特定行為研修制度」とは別に、病棟、在宅、介護施設などで侵襲性の低い医行為を実施できるモデルを作り、看護師が患者の状態に応じて柔軟に対応できる環境整備が必要と主張した。全日本病院協会会長の猪口雄二氏は、「法的に医師が変化を予測して出す包括的指示に基づいて実施することは大丈夫だと思うが、実際の医療現場では細かいところまで医師の指示を仰ぐような状況。分かりやすくモデルを示しておけば看護師の判断でできるため、指示出し・指示受けのやり取りも減って効率化できる」と述べた。
 臨床工学士に関しては、現行制度下でも実施可能な業務として▽心・血管カテーテル業務における清潔野で使用する生命維持管理装置及びカテーテル関連機器の操作・接続▽人工呼吸装置の使用時の吸引による喀痰等の除去▽血液浄化装置の先端部(穿刺針)のバスキュラーアクセスへの穿刺及び抜去▽医師の具体的指示を受けて行わなければならない法令上の特定の行為の4項目を提示。医師の具体的指示が必要な法令上の特定行為については、「動脈留置カテーテルからの採血」「血液浄化業務」「人工心肺業務における血液、補液及び薬剤の投与量の設定・変更」「生命維持管理装置及び手術関連機器の操作条件及び監視条件の設定・変更」を挙げた。

医療機関到着後も救命士活動を可能にすべき
 救急救命士については、医療機関内における救急救命士活動も認めるよう制度改革が必要と訴えた。現行法で規定している業務・活動範囲が「傷病者の発生場所から救急用自動車内、医療機関に到着するまで」となっている点を指摘し、法改正の必要性も踏まえた検討を求めた。
 麻酔業務については、軽度の前身麻酔であれば標榜医や麻酔に関する経験を積んだ医師による「自科麻酔」は可能である旨を推奨すべきとの考えを示した。「いつからか、麻酔の専門医でないと全身麻酔はかけられないというようなことになってきている。自科麻酔が行われると、緊急手術なども今よりも可能になるのではないかということで提案した」と述べた。

第3回ヒアリングには計6団体が参加
 同日は同ヒアリングの第3回。四病協の他、日本産科婦人科学会、日本小児科学会、日本歯科医師会、日本看護協会、日本助産師会の6団体が参加した(ヒアリング第1回、第2回なども参照)。
 日本産科婦人科学会は、「地域における公的病院の分娩室機能の集約化」と「助産師との協働およびタスクシフト」を提案。分娩室機能の集約化については、地域で夜間勤務を担当する産婦人科医を最小にする狙い。混合病棟ではない産科単独の病棟を整備して助産師が産科患者のケアに専念できれば助産師業務を効率化でき、タスクシフトに必要な助産師の確保に寄与するとの見方も示した。

厚労省HPより
 助産師へのタスクシフトに関しては低リスク妊娠を担当する「助産師外来の推進」と低リスク分娩を担当する「院内助産の導入」で、年間250時間程度は労働時間を軽減できるとの試算を示した。助産師外来では、産婦人科医の妊婦健診負担を週3.75時間、年間で180時間程度削減できると提示。具体的には、ほとんどの自治体で妊婦健康診査受診票の上限になっている妊婦健診14回中、8回の健診を助産師に移管した場合で計算した。院内助産では、50%の低リスク分娩を移管した場合に産婦人科医の時間外診療業務を年76時間程度削減できると説明した。
 日本助産師会は「低リスク妊産婦の健診業務」と「妊産婦の保健指導業務」を移管可能と説明。妊婦健診については、日産婦学会が14回中8回を移管する試算を示したのに対し、「14回中9回」は助産師が担えるとの考えを示した。
 小児科学会は、移管可能と考えられる業務として、計31項目を提示。内訳は、「全部門」4項目、「外来」6項目、「一般小児病棟」6項目、「専門病棟=NICU・PICU、血液腫瘍など」が15項目。外来では、▽診療録の作成補助、救急外来における病歴聴取の電子カルテ記載▽採血▽抗生剤等の静注▽静脈路確保▽ワクチン接種▽薬の説明や服薬指導を挙げた(詳しくは厚労省ホームページ)。
 日本歯科医師会は、病院への歯科医師配置や増員を進めることで「医療の総量を減じる貢献が可能」と訴えた。口腔ケアと全身管理の関連についてはエビデンスも蓄積されていると改めて指摘した上で、「医科疾患の重症化予防や入院日数、合併症の軽減という報告もある」と強調した。
 日看協は、医師から看護師へのタスク・シフティングとして下記3項目を提案した。

①タイムリーに必要な検査を判断
②薬剤を用いた療養上の世話をタイムリーに提供
③ナースプラクティショナー(仮称)制度の創設

 検査については、医師が外来、手術に従事している際など、医師がすぐに駆け付けられない場合は実施できないと説明。現行法で、患者を特定する医師の指示を求めているが、「患者の特定を検査実施後にする運用が可能かなどは示されていない」と指摘した。医師の到着時には検査結果が出ており、すぐに治療を始められるような流れを可能にすべきとの主張だ。
 薬剤を用いた療養上の世話に関しては、排便コントロールやスキンケア、疼痛緩和を例に挙げ、看護師の判断で薬剤を使用できれば、状態の変化に応じたタイムリーな療養上の世話が提供でき、結果として医師の負担軽減につながると解説した。
 ナースプラクティショナー(NP)については、医師の診断を待たずに、一定の範囲においては看護師が必要な医療の提供を判断できる制度として創設が必要と訴えた。NPが活躍することで病院でも医師の業務負担が減ると考えているものの、特に療養の場が在宅や介護施設と多様に広がっている点に着目。訪問看護師の需要が増えており、主治医を務める医師が報告・連絡・相談・指示出しになかなか対応できなければ、救急搬送せざるを得ない場合が増える。「結果として病院の業務量が増えてしまう」とNP制度創設の必要性を強調した。

厚労省HPより
 救急外来に看護師の配置基準を設けて医師の負担軽減を図るべきとの考えも示した。救急搬送が年々増え続ける中、兼務者が救急外来で長時間勤務し、病棟の業務負担増や入院基本料減算のリスクになっているとの見方も示した。

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