糞便移植で感染症による死亡例、米FDAが警告

毎日新聞 2019年7月2日

 健康な人の便に含まれる腸内細菌を患者に移植する「糞便移植」は、さまざまな疾患に対する新たな治療法として広がりつつある。こうした中、米食品医薬品局(FDA)は6月13日、糞便移植を受けた患者で死亡例が発生したことを発表。糞便移植には、重篤な感染症のリスクを伴う可能性があると警告を発出した。
 FDA生物学的製剤評価研究センターのPeter Marks氏は、「FDAは糞便移植を科学的に検証していくことを支持しているが、その一方で、全くリスクを伴わないわけではないことにも留意する必要がある」と強調する。同氏によれば、FDAは今回、糞便移植後に重篤な薬剤耐性菌に感染した症例が報告されたことを受け、患者への情報提供につなげるために、糞便移植に関わる全ての医療従事者に対して注意を呼び掛けたとしている。
 糞便移植は、現時点ではFDAに承認されていない実験的な治療法で、主に抗菌薬に耐性を示すクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)と呼ばれる細菌の重篤な感染例に対する治療に用いられてきた。
 糞便移植の方法は、健康なドナーの便を採取して患者の腸内に注入するというもの。その目的は、バランスが崩れた患者の腸内細菌叢を、健康な人のより安定した、病気に強い微生物叢に置き換えることにある。
 例えば、C. difficile感染症では、糞便移植によって身体に取り込んだ健康的な微生物が患者の腸内に生着し、C. difficileが異常に増えた患者の腸内環境を正常へと回復させるのに役立つという仕組みだ。現在では、潰瘍性大腸炎や過敏性腸症候群といった慢性の消化器疾患の治療法としても検討が進められている。
 ただし、どのような治療法にもリスクはある。FDAによれば、臨床試験で糞便移植を受けた患者のうち2人が、便の移植を介して多剤耐性菌に感染。生命にかかわる重篤な感染症を発症し、このうち1人は死亡した。なお、いずれの患者も免疫力が低下しており、多剤耐性菌に感染しやすい状態だったという。
 こうしたことからFDAは、糞便移植で用いる便中に薬剤耐性菌が含まれることがないよう、スクリーニングや検査の実施を義務付けるとともに、医師には、患者からインフォームド・コンセントを得るよう求めている。また、患者には糞便移植に伴うリスクについて伝えるべきであり、この治療法がFDAの承認を受けていない実験段階のものであることを知った上で、受けるか否かを判断すべきだとしている。
 ただし、Marks氏は、FDAは引き続き糞便移植に関する研究を支持していると強調。また、「患者の安全を確保しながら、満たされない医療ニーズに応えるため、患者が未承認の治療を受けられるようにすることとのバランスを見極めたい」とした上で、「安全性の問題が生じたときに患者を保護するためにも、引き続き臨床試験を厳しく監視していく」と説明している。

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